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真面目な僕は遊び人になりました  作者: 樫原 翔
始めてみました。
8/59

難易度が高すぎませんか? その後、仕掛け人と仲良くなりました。

 さて、このモンスターは今までとは随分と異質ですね。


 まあ、僕が戦ったのはウリ坊とイノシシ、それにゴブリンと大ゴブリンだけですけど。


 身長はざっと2m超。

 見た目は黒一色。というか『影法師』とでも言うべきですかね。


 平面でしかないはずの人型の影が地面から引き剥がされて無理矢理立っているようで、不気味の一言ですね。

 まるでホラー映画に出てくる『得体の知れない何か』と言った感じですね。


 手の部分は指に当たる部分が一本一本先が尖っていてフォークのようです。あれで刺したり切ってくることは考えられますね。


 とにかく、剣を構えますか。

 手に入れて早々、『ゴブリンのタルワール』には活躍してもらいます。




『&o¥*1^:〜|5\%』


 ん? 何を言ってるんでしょう?

 いや、影法師が喋ったのでしょうか?


 そんな疑問に意識を取られている間に、影法師の片腕が伸び手首から先はとっぷりと自分の影の中へと入っていきました。


 何を?


 その疑問は背後からの衝撃で理解しました。


 振り返ると僕の影からは影法師の手が生えており、その手が僕を攻撃してきました。


 もう一度影法師を見ると、やはり片手を自分の影の中に突っ込んでいます。


 つまり、背後から攻撃してきたのは十中八九影法師の手ですね。


 お、手を戻しました。同時に僕の影から手が引っ込んでいきました。

 推測は正解と考えてよさそうですね。




 離れた相手を攻撃する手段はあれだけでしょうか?

 とにかく、こちらからも攻撃を。


「“ウェポン・チェンジ"」

 剣をナイフに替えて『スローイング』です。


 このスキルのおかげで飛距離も威力も命中率も普通に投げるより上がります。


 狙うは影法師の下腹部。

 あれだけ長身なら低い攻撃の方が躱し難いかもしれません。




「え?」

 と、思ったのに、ナイフはスルリと影法師の身体をすり抜けていきました。

 刺さったとかじゃなく、何の抵抗もなく、そのまま影法師の背後へと飛んで行き、ナイフは木に当たると壊れてしまいました。


 攻撃が効かない?

 もしかして魔法しか効かない?


 いや、まだ確定は出来ません。


 ならば今度は接近しましょう!


 剣に持ち替え、前へと走ります。




『*5:〒〆=°€%〆9』

 また何か言って...るのでいいのでしょうか?


 今度は両腕を振り回してきました。

 しかも腕は関節や骨といった存在はないのか、鞭のようにしなっています。

 加えて伸びてもいます。


「ぐぅっ!」

 剣で咄嗟に受け止めましたが、勢いを抑えられず吹き飛んでしまいます。


 幸い、大ゴブリンの時と比べてパワーはないようで、何とか着地して姿勢を直せました。



『&o¥*1^:〜|5\%』

 また何か言って、距離が離れるとまた手を足下の影に入れます。

 そしてまた僕の影から手が出てきます。

 咄嗟に剣の上に手を滑らせるようにし、僕自身は転がるようにして今度は躱します。




 ・・・・・


 多分ですが、攻撃は全く効かないのではなく、条件を満たす必要があるのかと考えられます。

 さっきので二度、剣で手や腕に触れていましたから。


 もしかして、手や腕には攻撃出来るのではないのでしょうか?


 なのでまたナイフを出して投げてみますが、残念ながら仮説は違うようですり抜けてしまいました。




 そういえば、影法師はさっきから動こうとしませんね。


 どういうことでしょうか?

 ん、改めて見ますと足首から先の部分がありません。

 影の中にあるということでしょうか?

 それとも足がない?




 とは言っても、離れた所を僕の影から手を出して来ますから意味がないですね。


『&o¥*1^:〜|5\%』

 ほらやっぱり。


 あの奇妙な鳴き声とも言えない音。

 多分、あれが攻撃の合図ですね。

 さっきから同じ攻撃ですし。


 なので今度は的確に躱し、その腕に剣を振り下ろします。

 剣はすり抜けることなく当たりましたが、何ですかこの感触?

 ゴムみたいで弾かれてしまいます。


 しかも、表情がないので分かりませんが、特に痛がったりしていませんね。


 攻撃のタイミングを突くのも違う。




 じゃあどうすれば?


 もう一度仕掛けます。

 走っていきます。


『*5:〒〆=°€%〆9』

 腕を振るってきました。


 けど、分かっていたので身を低くし、剣を盾代わりにして強引に掻い潜るのみです。

 衝撃で剣を手放しそうです。


 なので、


「“ウェポン・チェンジ"ッ!」

 ナックルに替えて剣をしまいます。ここまで近づければ攻撃も当たりません。


 よし、零距離。あとは殴るの..

『$25÷…%5+〆」〆]:°÷々:÷\〒2〆!!!!!』


「うわっ!」

 大きく吹き飛ばされました。背中から木に激突しました。

 僕が至近距離に入った瞬間、影法師の身体は一本の丸太みたいになったかと思ったら無数の枝を伸ばしてきました。

 枝の先は鋭く、運悪く、いえ運良くナックルがその内の一本に当たったことで押し退けられました。


 もし直撃していたら....


 あ、影からの手が......


 え?

 来ない?


 どういうことでしょうか?


 とにかく、回復をしましょう。HPがギリギリです。

 ポーションを取り出し使用します。


 レベルアップしたことでHPも増えたの1本では回復しきれず、勿体無い気もしますがもう1本使いましょう。




 まだ攻撃してきません。

 あ、僕の影が木影の中に....


 影.....まさかあの足下の影が急所?

 ナイフを出して『スローイング』します。

 ナイフが影に刺さります。


 けど何も起きません。


 益々分からないですね。


 でも、僕が至近距離に入った時のあの反応。

 おそらく嫌がっていましたよね?


 落ち着いて整理しましょう。


 影法師は影から手を出す時、出口は必ず僕の影(・・・)でないといけないようです。今になっても攻撃してきませんし、多分そうなのでしょう。

 現に僕の影は木の影の中で、何もしてきませんですし。


 では、ダメージを与える方法は一体...

 いや、それよりも影法師は何故僕の影(・・・)にだけ攻撃を飛ばせるのでしょうか?


 ここは森林エリア。

 木の影を介して攻撃してもいいのではないのでしょうか?

 もしかして、僕の影に何かあるのでしょうか?


 そして零距離に入った時の嫌がるような反応....


 待ってください。そもそも影法師が最初に出てきたのも僕の影(・・・).....




 ・・・・・・・・


「ふふ」

 この考え通りなら、なんとも意地の悪い倒し方ですね。

 でも、そうだとすると面白い(・・・)ですね。




「いきます!」

 僕は走ります。剣を手に盾の代わりにしていきます。


『*5:〒〆=°€%〆9』

 腕を振るっての迎撃が来ます。

 今度は受け止めずに剣に滑らせるようにしてその攻撃を受け流してやります。


 衝撃は大分減り、走る勢いを落とさずにすみます。


 更に前へ行きましょう。


「“ウェポン・チェンジ"ッ!」

 武器を替えて、

「“ウェポン・チェンジ"ッ!」

 更にもう一度。ナックルに替えます。


『$25÷…%5+〆」〆]:°÷々:÷\〒2〆!!!!!』

 直後にまた身体から枝状の影が突き出てきました。ここで吹き飛ぶ訳にはいかないので受け止めず(・・・・・)受けます(・・・・)


 おかげで肩とお腹に刺さりました。ゲーム仕様で痛みは基本なくともいい気分はしませんし衝撃から退がってしまいそうですがそうはいきません。


 HPが一割を切りました。まだ減っています。

 けど、尽きそうになるその前に刺さりました。


 一度目の『ウェポン・チェンジ』で放り上げておいたナイフが刺さりました。

 枝が出ていない影法師の後ろの影に刺さりました。

 僕の影が今重なっている影法師の影に刺さりました。


『×+8|%・$€¥・→4↓⇒:<7…:×2!!!!!!!』

 刺さると同時に影法師が人型になります。ただし、反撃のためではなく、悶え苦しんでのためのようです。

 おかげでHPが残りました。


「貴方の弱点は、僕と貴方の影が重なった上で影に攻撃すること」

 僕は影を殴ります。


『×+8|%・$€¥・→4↓⇒:<7…:×2!!!!!!!』

 するとまた悶え苦しみます。まだ倒れませんね。




「“ウェポン・チェンジ" これで...終わりです!」

 剣に持ち替え、影に突き刺します。




『 ○ 仝 ¢ ♧ ♠︎ 』

 影法師の動きが止まりました。

 するとその身体はサラサラと塵のように崩れていき、風に乗って消えていきました。




「はあ、はあ...今度こそ終わり、ですよね?」


 そんな僕の警戒を揶揄うように、突然拍手の音が聴こえます。


『すごいすごい! ロカセナを倒せるなんて、キミほんとすごーい!』

 すると目の前にはいつの間にか奇妙な人物が現れていました。


 背丈や口調は子ども、服装はタキシードのようなものですが縦半分に黒と白に分かれ、目元も黒と白に分かれた仮面(ドミノマスクでしたっけ)にはピエロのような涙目の装飾があしらわれています。

 そうですね、一言で言うなら『奇天烈』ですかね?


「ロカセナ.....あの影法師の名前ですか?」

『そうそう、このボク、ロキの影だよ』

「というと、貴方のお名前はロキ、さん?』

『アハハ、そうそう、ボクの名前はロキ。よろしくね♪』

「あ、僕はウォーカーと言います」

 自己紹介していただいたので僕もご挨拶を。




『それでさ、どうだったボクとの遊びは?』

「えっと、ロカセナとの戦いのことですよね?」

『うん、そうだよ!』


 あのモンスターとの戦いは遊び(・・)ですか。


「申し訳ありませんが、その前にご質問いいですか?」

『いいよ♫』

「何故、僕が貴方の遊び相手に選ばれたのですか?」

『ボクが仕掛けたイタズラをクリアしたからだよ』


 イタズラとは、もしかして...

「ゴブリン達が出てきたことですか?」

『そうそう。尤も、キミが来たからもうやめるけどね。次は何にしようかな〜』


 このロキさん、中々の愉快犯ですね。



『それでさ、どうだったの? ボクとの遊びはさ?』

「そうですね....ダメージの与え方には大いに悩まされましたね」

『やっぱり! だよねだよね〜。アイツの本体はキミの考えた通り影そのものでさ、人型の方は単なるデコイなんだ!』

「デコイ...だから攻撃はすり抜ける訳ですか」


 これ、見破れるプレイヤーはいないのではないでしょうか?



『しかもしかも〜アイツがキミの影から出る時、ボクがキミの影の中に本体を分けて入れておいたんだ♬』

「つまり、本体を分けたために、僕とロカセナの影を重ねた時のみにしかダメージは通らなかったと?」

『ピンポーン、大正解!』

「ということは僕の影からしか手が出てこなかったのは、実際は僕の影に潜んだ本体の片割れを操ったという解釈で間違いないでしょうか?」

『ピンポンピンポーン、大大大、正解(せいかーい)っ!』


 これ、プレイヤーの多くはカラクリを見抜けずにやられてしまいそうですね。



『でもさ、初めてロカセナ使って遊んだけど負けちゃったのは悔しいな〜』

「あ、僕が初めての相手だったんですか?」

『うん、今までの人だと用意しておいたホブゴブリンと遭遇しないまま時間切れでイタズラが終わっちゃったからさ』


 あのゴブリン達の発生は時間制でしたか。




『けどま、さっきも言ったけどこのイタズラはもうお終い! 次のイタズラを考えるとするよ』

「そうですか、意外とスリリングで楽しかった(・・・・・)のですが、残念ですね」

『ヘヘヘ、ありがとう』


 こうやって笑っていると見た目通りの子どもといった感じですね。




『あ、そうだ。ねぇ、ウォーカー!』

「はい、何でしょうか?」

『あのさ、また遊ぼう! ボク、キミと遊ぶの楽しかったからさ、また遊びたいんだ!』

「分かりました。機会がありましたら、また遊びましょうねロキさん」

『うん!』


 折角の遊びのお誘い、断る理由はありませんね。




『それじゃ、お礼にプレゼントあげる』

「プレゼント?」

『そうだよ、ほら!』

 突然、ロキさんが指パッチンすると僕の全身がいきなりピンク色の煙で覆われました。

 僕自身、何が起きたのかさっぱりです。


 少しすると煙は消えました。

『見て見て!』

 おや、ロキさん、そんな大きな姿見をどこで....


「これは..」

『ボクからのプレゼント。かっこいいでしょ?』


 漆黒一色のカラーリング、デザインはロキさんのに近いタキシードのようなもの。ご丁寧に服装に合うハンターハットのような帽子。


 確かに、

「格好いいですね」

『ありがとう! それじゃウォーカー、僕帰るね。また遊ぼうね〜』

「お元気でロキさん」

 お別れの挨拶を交わすと、ロキさんはさっきの僕と同じようにピンク色の煙に包まれ、そして煙が消えた時にはロキさんもいなくなっていました。




 すると、ようやく終わったのです。

 ◆◆◆◆◆◆◆


 エクストラクエスト『ロキのイタズラ』をクリアしました。

 エクストラクエスト『ロキとの遊び』をクリアしました。

 エクストラボス『ロカセナ』を倒しました。

 クエストクリア報酬『コーバスコラックス』を入手しました。

 称号『ロキの遊び相手』を獲得しました。

 レベルが上がりました。

 スキル『パリィ』を獲得しました。


 ◆◆◆◆◆◆◆


 さっきまでの出来事は特殊なイベントでした。


 この服、『コーバスコラックス』と言いますか、やっぱり格好いいですね。




 ですが、疲れました。

 今日はこれで終わりです。ログアウトしましょう。






 かくして、濃厚過ぎる二日目はこれで終わるのでした。

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