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真面目な僕は遊び人になりました  作者: 樫原 翔
宝探しはワクワクします。
62/62

トレジャーイベント〜変に考え込んでしまいました。〜

無駄に思案要素が多くなりました。

 報酬の分配の前にまずはアイテムの効力の確認となりました。


 で、分かったことですが...


 《ハイポーション系》

 従来のポーションはレベル毎に回復値が決まっていましたが、ハイポーションの場合は割合回復とのこと(例えばポーションだと100ポイント回復するのに対し、ハイポーションだとHP又はMPの1割回復という風に)。

 まだショップ販売はされていないので、薬士のまるたちゃんさんは是非とも研究して調合したいとのこと。


 《スキルオーブ:C》

 スキルショップで購入するスクロールと同じでスキル獲得の効果がありました。

 けど、スクロールの場合は獲得するスキルの内容が決まってましたが、このスキルオーブは違いました。

 なんと、複数のスキルがリストアップされ、そこから一つ選択出来るとのこと。

 名前の横の『C』はどうやらスキルのレア度を示すもので、リストアップされたスキルもざっと見てもらった範囲では条件を満たせば獲得出来るものらしいです。ただ、獲得条件を満たすための時間短縮も出来るし、入念に確認していけば珍しいスキルもあるかもしれないとのことです。


 で、配分については・・・


 ①僕

 傘×1

 スキルオーブ×1

 HPハイポーション×1

 MPハイポーション×2


 ②まるたちゃんさん

 HPハイポーション×2

 MPハイポーション×2


 ③たまこちゃんさん

 スキルオーブ×1


 ④ノレパンさん

 スキルオーブ×1

 HPハイポーション×1


 ⑤キャロライナさん

 スキルオーブ×1

 HPハイポーション×1


 ⑥グラブさん

 スキルオーブ×1

 MPハイポーション×1


 と、なりました。


「僕ばっか多く貰いすぎじゃありませんか?」

「いや攻略したのウォーカーちゃんなんだからちゃんと貰いなさい」

「たまちゃんごめんね、ハイポーション譲ってもらっちゃって」

「いいのよ、代わりにアタシはスキルオーブを貰えたし」

「じゃあ僕のスキルオーブはまるたちゃんさんに...」

「「それは駄目!」」

「ええ〜」

「ウォーカー、功労者として相応の報酬を得ることも相手への礼儀として大事なのじゃぞ」

 それを言われるとそうですが...


「そもそも、あたしとグラブちゃん、まるたちゃんとたまこちゃんは元々組んでいたからそれぞれ一組分の報酬でいいって言ったのにウォーカーちゃんが一人ずつでと譲らなかった結果でしょ」

「こちらも妥協したのだからお前も妥協はしろ。というか、普通自分の取り分を減らす功労者なんて聞いたことないぞ..」

 そういうものですかね?






 とりあえず、報酬分配の変更はなしとなりました。

 タイマーも無くなったので今は出口と思われる光る床模様(魔法陣というらしいです)の近くで食事といきました。


 メニューはキャロライナさんが作り置きしていたサンドイッチです。

 フルーツサンドなんてのもあったのでそちらもいただきました。


 ああ、パンに挟まれたクリームの甘さとフルーツの酸味が疲れた身体(いや脳?)に染み渡ります。

 そこに紅茶のほのかな苦味と合わさって幾つも食べてしまいそうでした。


 ・・・・お腹に溜まらないので結局一つずつでしたが。

 やはり、美味しくても満たされないのは...


「その悩みは分かるわ〜」

「ですよね」

「あたしも作った物を食べてもらって、『美味しい』と『お腹一杯』って笑顔を見るのが好きなのよね〜」

「それ分かります。美味しい物を食べたが故に満たされる感覚、あれは大事です!」

「熱弁するのう、ウォーカー」

「アタシ的には太らないってのがプラスなんだけどな..」

「わたしも...」

「「何を言ってるんですか(のよ)!?」」

 僕とキャロライナさんはたまこちゃんさんとまるたちゃんさんの言葉に異議申し立てます。


「いいこと、食事は生きる上で不可欠なものよ!」

「そうです、そして食事は楽しみなのです」

「最近の若い子はすぐに体型とか気にして無理なダイエットするけど...」

「それを気にして食べられないなんてあんまりです」

「ひとが一生に摂る食事の回数は大体9万前後と言われるわ」

「そう、たった9万回程度(・・・・・・・・)なんです」

「その間にどれだけ美味しく幸せに食べられるか...」

「それは誰もが向き合うべき生きる上での課題になるのです」

「「分かりましたか(ったかしら)?」」


 ・・・・・

「「は、はい...」」

「よろしい。それに、体型を維持したいなら運動が大事よ!」

「ですね。食べた物は身体を作る訳ですから、食べて運動すれば健康的な身体になるのです」

「ウォーカーちゃん、その通りよ!」

「ありがとうございます、キャロライナさん」

「それが出来れば苦労しないよ〜」

「うう、手厳しいですよ〜」


 おや? お二人とも気落ちしていますが...


「ウォーカー、キャロライナ殿。それは正論じゃが、正論通りに出来ないからこそお嬢さん達も悩んでしまうのだよ」

「確かに、食事のカロリーを消費していくのは容易くはない。普段から運動習慣があるならいいが、そうじゃない者にとっては食事を減らす方法が有益な選択肢となってしまうのだろうしな」

 ノレパンさんとグラブさんはそれぞれたまこちゃんさんとまるたちゃんさんを慰めていますね。


 確かに、お二人の言う通りですね。

「そうですね。失礼しました。安易に正論だけで済ませるのはよくなかったです」

「あたしも...確かに忙しさから最近は日課の筋トレを怠っちゃってるし...おかげで腕とか細くなってるし..」

「「え?」」

「僕も、業務量が増えたから食事の時間すら惜しんで携帯食で済ませてしまう頻度が増えた気が....」

「『医者の不養生』みたいじゃの..」

 言われると胸が痛いです。

 というか、まるたちゃんとたまこちゃんさん何を驚いているのでしょうか?




「えっと、まるちゃん分かる? 今の『医者の〜』って」

「『医者の不養生』ね。確か、健康について色々教えたりするお医者さん自身が不健康な生活をしがちということで...」

「そこから転じて、人に正しいことを言いながらも言う側の人間がそれを実行していないじゃん、という皮肉みたいなものですね」

「なるほど...」

「確かに正論って他人には安易に使えるけど、自分に対して使うのって勇気いるもんね..」

 本当にそれですね。たまこちゃんさんの言うことには一理あります。


 なまじ社会人になって生きていると、残業改善だとか賃上げの進捗が上手くいかないのをどうにかしろなんてのはニュースなんかで度々見ますが、その実現が難しいんだって理解してしまいますよ。


 残業とかは、人手不足やニーズの増加とかで業務量が増えたことが要因だったりしますけど、人手が増やせなければ解消は無理なことですし、ニーズに応えなければ商売あがったりですからね。

 賃上げだって、元の資本金がある大手企業とかならまだ出来るかもですが、資本に余裕のない所じゃ不測の事態があった時の対応に使える元手がないのはリスクでしかないですし。


 なんて、僕なんかでも簡単な憶測を立てることは出来るんですからね。まあ、本当に真相を知っている訳ではない以上、これも憶測の域を超えませんけどね。

 けどまあ、正論の実践は本当に難しいですよ。そんな正論を安易に言うのが大抵は無関係で無責任な側にいる人ですからね。


 おっと、ゲーム中に何を考えているのでしょうか。

 今は遊ぶことが大事です。




 僕達は出口と思しき魔法陣に入り起動させます。

 起動した途端、視界が一転します。洞窟の中から今は開けた森林近くの草原に僕達は立っています。


 おお、凄いですね。あのタヌキ型ロボットの扉と違ってなんかワープって感じがはっきりするからいいですね。


 さて、次はどこを探索しましょうか....






 なんて、思っていたこともありました。数秒前ですが。


 確か、『人の出会いは一期一会』なんて言います。

 毎日顔を合わせる相手であっても、その時に会うのはその時限り。だからその一度きりの出会いは大事にしましょうと言います。


 それは単純に良縁を指すものだけではありません。


 今こんな風に僕達を囲うプレイヤーさん達の雰囲気からして、これは悪縁と言っていいでしょうから。




「へへ、まさかダンジョン攻略後のパーティに会えるとは運がいいぜ」

 リーダーっぽいプレイヤーさん、如何にもなセリフですね。


「悪いけど、持っているアイテムを全部渡してもらうわよ」

「嫌だとは、言わないよな?」

「こっちの方が人数はいるんだからな〜」

 お仲間の方々も意気揚々ですね。




「ちょっと、集団で袋叩きなんて、卑怯よ!」

「せ、正々堂々と勝負してください!」

 ん? 何を言っているのですかね?


「ハッ、卑怯でけっこ「それは違いますよたまこちゃんさん、まるたちゃんさん」


「「「え?」」」

 おや、二人だけでなく、リーダー(仮)さんの言葉も重なりましたか。面白い偶然ですね。


「いいですか、複数人で少人数を相手にするのが卑怯と言うのでしたら、ボスモンスター単体にパーティで挑む僕達プレイヤーは常に卑怯者ですよ」

「ちょっと、ウォーカーちゃん...」

「ボスモンスターは強いのだから仕方ないだろう」

「グラブさん、その理屈なら弱い人は徒党を組んで強い人を倒してもいいと言うことですよね?」

「ん、まあ..そう、なるな...」

「つまり、個で弱いなら数で勝つのは間違っていないということです」


 “グサッ!"

『よ、弱い...』


「僕は人海戦術を卑怯とは言いません。ルールがある中でルールに反さず勝つために手段を選ぶことを間違っているとは思いませんから」


 そりゃあ、現実で闇討ちみたいなルールを破る行為なら許せませんけど、こうして複数人で挑んでくることに対して運営側から何もないというのはつまり、彼等のやり方は間違っていないということです。


「正々堂々はかっこいいです。けど、目的を見失ってしまう程にこだわってしまうのは些かいただけませんね」

 そういえば、僕がこんな風に考えるのって多分、随分昔に観たあの特番の内容がきっかけですよね?


 確か、高校野球の有名試合とかの特集番組をピックアップしたやつで....そうそう、あれです。


 かつて、後にプロとして活躍した強打者を抱えたチームに勝つため、対戦校は監督の指示もありその強打者に対して徹底的なまでの敬遠策を取り一度もバットを振らせなかったことで辛うじて勝てたんですよね。


 けど、高校野球を観に来た人達にとってはそんな勝ち方に不満を抱え、試合中はブーイングの嵐で、後日勝った高校に脅迫電話とかをしたとか...

 その結果、精神的に参ってしまった選手達は動きに精細さを欠いて次の試合はボロ負けとか...


 改めて思い出すといい気分はしませんね。

 正々堂々じゃないからと罵るのは正々堂々なんですかね?

 そもそも、反則はしてないのに勝負において勝てる手を模索するのってそんなにいけませんかね?

 参加している他の学校だって勝つことを目指しているのですから。


 搦め手で戦うのだって、正々堂々だと思いますがね。


 負けた側もいくら強打者を封じられたからといってチームスポーツである以上、それで負けたのならチームの弱さとして反省すべきとも言えますし。というか、一人抑えられただけで負けたというのは見方によって情けないと言われかねませんし。


 あ、いけないいけない。

 これ以上の考えも結局は個人的な好き嫌い故のものですね。これでは野次を飛ばしていた観客側と変わりませんね。


「まあ、とにかく勝ちたい気持ちを否定してはいけませんということで」

「は、はい...」

「分かりました」


「お話が終わるのを待っていただき、ありがとうございます。それでは始めます....か?」

 あれ、何か落ち込んでませんか?

 両手足着いて項垂れてますが。


『弱い....』

「どうしたんでしょうか?」

「おそらく、お主がさらりと奴等を弱いと言ってしまったからじゃな」

「え?」

 そんなこと言いましたっけ?


「えっと、あ、確かにそうとれるね」

「うん、集団で襲うのは弱いからって..」

 あ、ああ。そういう事ですか。


「でも、それが何故落ち込むことになるのでしょうか? それを理解して考えた末の勝てる手段を選んだのは自分なんですから」

「やめてあげてウォーカーちゃん...」

「更に落ち込んでいるぞ...」

 え? あ、なんかもう地面にめり込めそうな勢いで落ち込んでいる。


「えっと...どうしますか?」

 このタイミングで聞くのは申し訳ないですが...


「・・・やる」

「分かりました、それじゃ始めましょう」

 リーダーさん、立ち上がりましたね。

 お仲間の方々も武器を構えていますね。


 ・・・

 相手の人数は10人。

 装いから推察すると...戦士職系4人、魔法職系3人、軽装で直接攻撃系の武器持ちということからロール職と思しき3人。


 こちらは...

 ロール職の僕、戦士職のグラブさんとノレパンさん、生産職のまるたちゃんさん、たまこちゃんさん、キャロライナさん。


 ・・・・・

 人数差、職業の偏りに伴う戦闘力から考えると...不利ですね。


 相手の勝利条件は僕達が持つアイテムの獲得。

 こちらの勝利条件は生き残ること。理想的なのはアイテムが取られず全員無事であること。


 理想系は難しいですが....次善策ならいけますかね?


 えっと、確か[メニュー]にあるパーティーチャットが...あった。


 ■■■■■■■■■■


 僕が何とか隙を作るので逃げてください。

 この後の僕の言葉は無視してください。


 ■■■■■■■■■■


 送信と。


「「「「「っ!?」」」」」


「行きます!」

 独断ですいませんが、相談する時間は無いので..


 僕は敵側へ走ります。


 手元には自作の煙玉を持って。


 そして地面に投げつけます。


 ■■■■■■■■■■


『ブラインドスモッグ』


[効果]

 煙幕外への視界封鎖。


[解説]

 黒炭を基に開発した煙幕。煙幕内にいる者は煙幕外を視認出来なくなる。


[製作者]

 ウォーカー(P)


 ■■■■■■■■■■


「ウェッ、ホッ!」

「ゲホッ!」

「お得意の煙幕か!」

 よし、これで視界は封じました。


「皆さん、こっちです」

 煙幕の中を進むようにしながら僕は叫びます。

 わざと相手の近くを素通りした上でです。


 もちろん、皆さんには今の言葉を無視するように伝えましたから大丈夫です。

 尤も、相手がこの言葉を素直に聞くとは思っていませんが。


 少なくとも何人かは僕を追いかけてくれるはずです。


 僕は走ります。

「待てっ!」

 後ろから声がします。

 地面を踏むような音が多数聴こえるので予想通り、何人かが追いかけてくれたようです。




 僕は更に走ります。

「“早駆け"!」

 僕の横を誰かが通り過ぎます。

 そして前に立ち塞がってきました。


 僕も止まらざるを得ませんでした。


 おお、リーダーさんですか。今のは動きを速めるスキルですかね?


 もう少し距離を取っておきたかったのですが...


 さて、何人追いかけてくれましたかね?


 えっと、1、2、3、4.....10。


 おや、全員でしたか。


 意外ですね。分断してくれると思ったのに。




「ウォーカー! オレたちは弱くねーんだよ!」

「そうだ、馬鹿にしたことを後悔させてやる!」

「?」

「首を傾げるんじゃないよ!」


 ・・・・・

 馬鹿にしたつもりはないのですが...

「えっと、弱くないのを証明するために僕を追いかけたと」

「そうだ!」

「で、どうやって証明するのですか?」

「え?」

「いえ、全員で僕に挑むことで納得するのでしたらいいんですが...」

 けど、弱いと言われて怒って、それなのに集団で一人に挑むという状況って一体...


「うぐ...」

「えっと...」

「か、かかれー!」

 あ、勢いだけでしたか。

ウォーカーが思い返した高校野球の事例は実際にあったものです。


確かに、学生スポーツは正々堂々を望まれることが多いのでしょうが、それで『勝ち方を選べ』というのは試合に出ない側の意見でしかないのではと思うのは作者も同様です。


特に試合後に脅迫まがいの行為をしてきたのはそれこそ正々堂々ではないと思いますし。

勝てばいいという考えが間違いだと言ってしまったら、全てのチームが積み重ねてきた練習も含めた『勝つための努力』そのものを否定しそうな気もしますし。


※あくまで個人的価値観による意見なので、流してください。

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― 新着の感想 ―
あの件は酷かったですよね。 一生懸命な人に対して好き勝手なことを外野から口を出す。 当時は呆れました
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