トレジャーイベント〜傘チャンバラは浪漫です。〜
展開が整理出来ず時間がかかった....
さて、この武器の詳細を確認したいのですが....
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『???????』
Durability:?
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全く分かりませんね。
となると、手探りで確認するしかないですね。
長さは...現実で使っている傘よりは長いですかね?
長剣ほどではないですから中間くらい?
重さは...現実で使っている傘と同じくらい?
持ち手の太さも同じくらいですかね?
布地(傘地って言うんでしたっけ?)の触り心地はなんか良い革? とにかく現実のよりは硬そう?
ハンドル部分はフック状じゃなく直線的で、なんか水晶っぽい飾りがついています。
カラーリングは黒で統一でされていて、僕の服と似合いそうですね....
よし、分かりました。
「何か、かっこいい傘ですね」
「「「「「それだけ?」」」」」
ん? それ以外何かありますかね?
“ブモオオオオオッ!!!"
あ、来た。
とりあえず、今は閉じた状態ですから剣のようにそのまま...
迫る斧を何とか躱し、傘を振るって僕はミノタウロスを斬ります。
多分中の骨組みとかがぶつかり合った音が耳に入ります。現実ならこんな使い方をすればすぐに壊れるのですが...
「うん、問題ないようですね」
折れても傷ついてもいません。
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『???????』
Durability:∞
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あ、耐久性の表示が出ました。
『∞』でしたか。
なら、遠慮なく!
ミノタウロスが迫ります。
『アースバンプ』でジャンプして跳び箱みたいに背後へ躱します。もちろん、傘で叩くことも忘れずに。
というか...
「今、宙返り出来ました!」
「いや、何言ってんのよ!」
「そこ今大事ですか?」
え、それは...
「大事です!」
「「絶対、違う!!!」」
ええ、手厳し過ぎませんかたまこちゃんさん、まるたちゃんさん。
“ブゥ、モォ、オオーッ!"
「危ない、ウォーカーちゃん!」
「え? え、うわ!」
僕は慌ててその場から逃げます。
石、いや岩? とにかく瓦礫が飛んで...いや違いますね。飛ばされてきました。
よく見ると、ミノタウロスが斧をゴルフクラブみたいに振って地面の石を砕き飛ばしたのですね。
“ブゥ、モォ、オオーッ!"
また?! 走り続けて避けます。
というか、その鳴き声って...『チャーシューメン』ですか?
なんかゴルフの掛け声で使うあの...
あ、やっぱり。
ブゥで斧を降ろして...
モォで後ろへ引いて...
オオーッ!で振って...っと、瓦礫が飛んで来ました。逃げます。
ここに来て新しい攻撃方法とは...この傘を手にしたことが原因ですかね?
それとも、躱しながら攻撃してきたからカウンターを警戒して?
躱せますけど、これじゃ反撃出来ないですね。
せめてある程度防げれば何とか...
でも盾はないし、あるのは傘...あ。
えっと、えと...あ、この飾りもしかして....
回った。
“バサッ"
開いた。この飾りを回すことで傘が開くのですね。
お、丁度瓦礫が来ました。
防げ...たけど衝撃は結構来ますね。
これじゃ反撃に移るのに時間がかかります。
えっと...
っと、また来た。
こうなったら....
腰を落として、地面を踏み締めて、そして、
「回す!」
僕は開いた傘をグルンと回しました。
多分、現実よりも早く勢いよく回っています。
飛んで来た瓦礫は回る傘によって逸らされます。
おかげで衝撃が幾分マシになりました。
なので、走り出します。
これで叩けば...あ、傘閉じてなかった。
しかも開いたせいで空気抵抗が意外とかかります。
閉じなければ。えっと、もう一回飾りを回せば..
“バサッ!"
“ブモッ!"
伸び...いや、布地の部分が裏返った?
すごいですね、骨組みが完全に裏返って槍みたいになりました。
おかげで先端が届いて当たりましたけど。
えっと、どうやったら戻るのかな?
この飾りって逆に回せ...た。
“バサッ"
あ、普通に開いた形に戻った。
じゃあ更に回すと“バサンッ!"
お、閉じた。
更に回すと“バサンッ!"
あ、裏返った。
なるほど、三つの形態に変わる代物ですか。
飾りはツマミの役割で、回す方向で意図した形態に変えれるのですね。
あ、表示が...
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『雨にも武具にも負けず モード:カサーベル』
[性能]
POW:+15
SPE:+10
Durability:∞
[解説]
ユニークシリーズ。
ロキの遊びの最中、その答えを見出した者が装備出来る。
見た目はお洒落な傘だが、その開き具合次第で多彩な使い方が出来る。
譲渡不可。売却不可。
[固有スキル]※装備中のみ効果を発揮。
『危うき相対傘』
柄尻の飾りを回す又、各形態の名前を口にすることで三種の形態に変化出来る。形態毎に性能も変化する。
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・・・・・
名前...どこの作家の遺作ですか?
そして、モードの名前...いいですね。
他の形態は何でしょうか?
「ウォーカー、敵に集中するんじゃ!」
おっと、なら広げて。
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『雨にも武具にも負けず モード:パラヴィース』
[性能]
VIT:+15
MIN:+10
Durability:∞
[解説]
ユニークシリーズ。
ロキの遊びの最中、その答えを見出した者が装備出来る。
見た目はお洒落な傘だが、その開き具合次第で多彩な使い方が出来る。
譲渡不可。売却不可。
[固有スキル]※装備中のみ効果を発揮。
『危うき相対傘』
柄尻の飾りを回す又、各形態の名前を口にすることで三種の形態に変化出来る。形態毎に性能も変化する。
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あ、性能が変わってますね。やはり広げた状態は盾代わりですか。
これで受け止められる....訳なかった〜。
勢いすっごく吹き飛びますね。
「“ウィンド"」
風を後ろから出して勢いを抑えましょう。
「う、ぐっ...」
おお、壺の魔人と戦った時の落下よりも勢いが凄いですね。
これ、壁にぶつかるんじゃ...そうだ。
「“ウィンド"」
逆向きに風を出します。
開いた傘で風を受ければ...
「うぉっ!」
勢いが凄い、傘、飛び、そう、です。
しっかり握らないと...よし、勢いが止ま....った!
壁ギリギリでした。危ない危ない。
“ブゥ、モォ、オオーッ!"
って、このタイミングで瓦礫飛ばしですか。
「“アースバンプ"」
僕の目の前の地面が盛り上がります。
盛り上がった地面と傘で瓦礫をある程度止めます。
もう一度、
「“アースバンプ"」
今度は僕の後ろの壁から盛り上げて...押し出し!
即席のカタパルトというやつです。
確か、バリケード用の兵器を横向きに出すってやり方がありましたが、やってみると凄いですね。
でも、勢いが足りない。
あと少し...なら、伸ばします。
“バサッ!"
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『雨にも武具にも負けず モード:アンブレランス』
[性能]
POW:+10
DEX:+15
Durability:∞
[解説]
ユニークシリーズ。
ロキの遊びの最中、その答えを見出した者が装備出来る。
見た目はお洒落な傘だが、その開き具合次第で多彩な使い方が出来る。
譲渡不可。売却不可。
[固有スキル]※装備中のみ効果を発揮。
『危うき相対傘』
柄尻の飾りを回す又、各形態の名前を口にすることで三種の形態に変化出来る。形態毎に性能も変化する。
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“ブモッ!"
よし、当たりました。
傘の三種の形態の名前はこれで全て分かりました。
どれも洒落たお名前じゃないですか。
さて、これで『ウェポン・チェンジ』や手持ちの武器が使えないハンデは補えますね。
となればもう....
「十分勝てそうですね」
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ウォーカーが手にしたのは一見するとただの傘じゃった。
あのピコピコハンマーもそうじゃが、何故あやつの武器は微妙にイロモノが混ざっておるんだ?
だが、そんな見た目に不安を感じさせられるもすぐに払拭されることとなった。
あの武器、変形機能つきか。
いや、変形というか子どもが開き過ぎてやるような傘弄りにしか見えんのじゃが...
バトルイベントでもそうだが、奴は武器の交換による変幻自在の戦術を得意としておった。その武器の交換を封じられ、代案として周囲の武器を使ってはおったが性能は心許ないものばかり。
しかし、あの傘を手にしてからはその状況は変わった。
傘による攻撃を主軸としつつ、時に周囲の武器を拾い上げて投げつけるなり切り掛かるなりし、地面を隆起させる魔法で機動力をカバーして自身のペースを確保し続けておる。
器用な奴だ。
このゲームはあくまで仮想空間故に、身体能力はゲームのステータスに基づいておるはずじゃ。
だが、反応までは流石にゲームのステータスにとはいかんのがこちらの推測じゃ。
多少の補正なりはあるはず(じゃなければ儂のような老人にはまともに動けんからのう)だが、それでもウォーカーの反応は中々のものと言っていいだろう。
何かコツがあるのかどうか...機会があればその点で話しておきたいのう。
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ウォーカーちゃんが傘を手にした時は正直やけっぱちになったかと思ったわ。
でも、嘘でしょ。
何で傘で、あんなに立ち回れているの?
いやね、確かに傘ということを無視して剣のように振り回せばいいのは分かるわ。
けど、広げたら盾になって、更に広げて裏返したら槍代わりって....流石に想像出来ないわよ。
あんな乱暴な使い方したら壊れちゃうんじゃ...
いえ、待って。
もしかしてあの傘、ユニークシリーズ!?
ということは、このダンジョンのお宝って...
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あの傘、ユニークシリーズか?
確かユニークシリーズは手入れや修理が不要だという噂は聞いていたが...
自分もキャロルと探してはみたが見つけたことはなかった。
もしかして、さっきからちょくちょく出しているあの巨大ピコピコハンマーも...
それに、ここに来てから現れたロキというNPC...
このゲームには神の名を持つNPCがいる。
ユニークシリーズは彼等が作り出した物という噂を聞いたことがあるが...
もしかして、ユニークシリーズの入手条件に関わるのか?
この戦いが終わったら、是非ともウォーカーに詳しい話を聞いてみるとするか。
そして、ウォーカーの持つユニークシリーズのような物があるならきっとあるはずだ!
キャロルが喜ぶ調理器具が。
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現状の戦い方には慣れました。
攻撃のパターンもこれ以上の変化は無さそうですね。
となればもう...
「こいつの試し切り相手となってもらいましょう」
「「さっきから切ってる、ってか叩いています(る)!」」
ふむ、手厳しいですね、まるたちゃんさん、たまこちゃんさん。
とにかく、折角の傘チャンバラ...思う存分遊ばせてもらいます。
ならばまずは....あれでしょうか。
こう、傘を左の腰辺りに構えて刀を抜くように...
“ブモオオオオオッ!!!"
そして、相手の接近を見計らいこちらも前に出るように踏み出します。
普通なら右足だけですが、抜くのに合わせるように左足も続けて踏み込んでからの...スイングです。
“モ"ォッ!"
僕が振るった傘は見事にミノタウロスに当たります。幸い、傘は踏み出した左足に当たることなく命中しました。
そう、名付けるならこれは...
「雨降地固」
おっと、反撃が来るかもしれませんから距離を取って、次の技といきま...しょ..う。
「あれ?」
ミノタウロス、なんか消えてません?
え、まさか...
◆◆◆◆◆◆◆
ダンジョンボス『クノーソス・ミノタウロス』を倒しました。
レベルが上がりました。
スキル『剣術Ⅵ』は『剣術Ⅶ』に上がりました。
スキル『短剣術Ⅴ』は『短剣術Ⅵ』に上がりました。
スキル『長剣術Ⅲ』は『長剣術Ⅳ』に上がりました。
スキル『格闘術Ⅲ』は『格闘術Ⅳ』に上がりました。
スキル『槍術Ⅳ』は『槍術Ⅴ』に上がりました。
スキル『投擲術Ⅴ』は『投擲術Ⅵ』に上がりました。
◆◆◆◆◆◆◆
おお、情報量がすごい。
けど、
「もうちょっと粘ってほしかった...」
「「「「「そこ?!」」」」」
「折角手に入れた傘でチャンバラしたかったのに...」
◆◆◆◆◆◆◆
おめでとうございます!
報酬をお受け取りください!
◆◆◆◆◆◆◆
“ポンッ!"
おや、これは....
「宝箱ですか」
「そうですね...」
「ん、まるたちゃんさん、あ、皆さんも出られたのですね?」
「うん、今さっき鳥籠が消えて...」
「しかし、この宝箱...」
「三つあるわね」
「しかも、デザインがバラバラだな」
そう、皆さんが頷くように目の前には宝箱(ゲームとかで見るような板と金具で組み立てたような)があります。
それも三つ...
一つは一番大きくて頑丈そうな宝箱。
一つはサイズは中くらいの宝石?で飾られてピカピカしている宝箱。
一つは一番小さくてシミだらけの古そうな宝箱。
「どれか一つに当たりがあるってこと?」
「お約束の定番ね」
「ヒントの類はなさそうじゃの」
「昔話だと大きいのはハズレだったな」
「でも、キラキラしているのもいかにもな気が...」
「じゃあ、ここはみすぼらしいやつが正解?」
「いや、それも罠な気が...」
「これまでがこれまでだし、厄介ね...」
「さて、どれを選ぶか」
おや、この宝箱は全部鍵がないのですね。
あったらこう、針金とかでガチャガチャしてみたかったのですが...
まあ、針金はありませんけど。
とりあえず大きいのから、
“ガチャ"
「「「「「えっ!?」」」」」
次にピカピカのと、
“ガチャン"
「「「「「ええっ!?」」」」」
最後に古い感じのを...おや歪んでるのか開けにくそうですね。
“ギ..ガチャ"
よし開いた。
「「「「「ちょっと待て(ってください)!」」」」」
ん?
「何で全部なの?」
「そうですよ、何か罠があったらどうするのですか」
「不用心にも程があるぞ!」
「ここはじっくり考えてもいいでしょう!」
「言いたくないが、こっちも巻き込まれるかもなんだぞ!」
「いやだって、タイマーが止まってませんでしたから」
「「「「「はい?」」」」」
あ、気づいてませんでしたか。
ミノタウロスを倒しても攻略の制限時間を示すタイマーが止まってなかったんですよね。
そんな時に三つの宝箱が出た訳ですから開けるのが条件かなと。
「でも、どれか一つじゃ..」
「ん? たまこちゃんさん、そんなことは書いてありませんよ」
「え?」
「だって...」
◆◆◆◆◆◆◆
おめでとうございます!
報酬をお受け取りください!
◆◆◆◆◆◆◆
ほら、
◆◆◆◆◆◆◆
おめでとうございます!
報酬を【お受け取り】ください!
◆◆◆◆◆◆◆
そう、
◆◆◆◆◆◆◆
おめでとうございます!
報酬をお受 け 取 りください!
◆◆◆◆◆◆◆
受け取ればいいんですよ。
「っ・・・」
あらら、納得したくなさそうなお顔。
でも、タイマーは三つとも開けたら止まりましたけど。
「〜〜〜っ!」
まあ、おちょくられたようでいい気分はしませんよね。
◆◆◆◆◆◆◆
エクストラダンジョン『リドルラビリンス』をクリアしました。
ダンジョンクリア報酬『雨にも武具にも負けず』
ダンジョンクリア報酬『スキルオーブ:C』×5
ダンジョンクリア報酬『HPハイポーションLv.1』×5
ダンジョンクリア報酬『MPハイポーションLv.1』×5
を入手しました。
◆◆◆◆◆◆◆
あれ?
宝箱の中身が全部僕の[リュック]に?
「おそらく、複数人で参加は出来るが挑戦自体はお主のみだから報酬はお主の総取りとなったのじゃろう」
「みんなに分配してくれればいいのに...」
「もしかすると、仲間割れを狙ってるのかもしれんな」
「ん、どういう事ですかグラブさん?」
「このイベントの性質上、イベント最中に他のプレイヤーと手を組むこともある。だが、今回のように報酬を総取りにすればどうなると思う?」
「十中八九仲間割れが起きるわね」
「おやおや...」
「しかもさ、ウォーカーが手に入れたその武器はウォーカーしか使えないからウォーカーのになるけど、他のアイテムの数が5個ずつって..」
「どれかしらは一人貰えないですね」
・・・・・
ロキさん、最後の最後までお騒がせなことをしてくれますね。
「まあ僕はこの傘があれば十分ですけど」
「「「「「え?」」」」」
「なので他のアイテムは皆さんで分配」
「「「「「それもダメ(よ・です)!」」」」」
ええ〜。
ウォーカーが現実にて子どもの傘チャンバラを見ていたのが、こちらへの伏線ということとなります。
傘チャンバラ...大人になると色んな意味で出来ませんからね(子どもの内でも危ないからアウトですけど)。
補足として、各形態の名前の由来は・・・
①カサーベル
カサ(傘)+サーベル(ヨーロッパ方面の刀)
②パラヴィース
パラソル(日傘)+パヴィース(真ん中辺りが出っ張った中世の盾)
③アンブレランス
アンブレラ(雨傘)+ランス(杭みたいな騎兵用の槍)
です。正直、パラヴィースの名前に至るのに苦労しました。




