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真面目な僕は遊び人になりました  作者: 樫原 翔
宝探しはワクワクします。
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トレジャーイベント〜各プレイヤー達の様子〜

 さて、このトレジャーイベントに参加した他のプレイヤー達はと言うと....




 《悟空、ルナ、ダニエル》


「先パ〜イッ!」

「ウォ〜カァ〜ッ!」

 悟空とダニエルは叫んでいた。


 岩壁の合間である谷底にて二人は同じ人物を呼んでいた。

 二人の叫びは岩壁に反響していたが、返事がある訳もなく虚しく響くばかりだった。


「いや、聞こえないでしょ」

 そんな二人を呆れた様子で見るルナ。


 イベントが開始し、フィールドに到着した悟空とルナ。そして偶然にも近くにいたダニエル。


 宝探しもそこそこに人探しの方に熱を入れていた。




「うう、先パイと一緒にイベントしたかったのに...」

「くっ、盟友と共に高みを目指したかったのに...」

「息ぴったりねあんた達」

 同時に崩れ落ちて落ち込む二人に更に呆れるルナ。


「というか、フレンド登録してるんだからメールを送るなりチャットするなりしなさいよ」

「「それだっ!!!」」

「忘れてたんかい!」

 更に更に呆れてしまうルナ。


 結果は・・・・・


「ダメだ、チャットは通じない」

「だが、メールは送れたぞ!」

「よし、あとは気づいてくれれば...」

「うむ、合流する場所を決めるぞ!」

「いきなり息合わせないでよ」

 更に更に更に呆れてしまうルナ。


 余談だが、メールはピロンと簡単な着信音をするが戦闘中だったりするとまず気づかれることはない。チャットの方も戦闘中だったりすると気を散らさないためにと自動的に着信音が鳴り響かないようにという配慮がされている。

 ※通知設定を変えていればその限りではないが。


 そう、戦闘中だったりすると。

 この時、ウォーカーはとある三人組のプレイヤーと交戦の真っ最中である。






「「何故気づかない!!!」」

「もう行きましょうよ」

 数分経っても返事が無くて嘆く二人にもう疲れたルナであった。




「折角二人きりになれると思ったのに..」

 そしてそんな彼女の不満の呟きは誰の耳にも入らなかった。






 《ガイ》


「お、宝箱か?」

 ガイは今、石造りの町跡といった遺跡を巡っていた。


 遮蔽物が多く見通しが悪いこの辺りには罠があった。

 敵の奇襲ならば最初の一撃に耐え、後は迎撃といけばよかったのだが、罠となるとそうはいかない。


 そういう意味では相性が悪いので、かなり慎重になりながら進んでいた。

 そうして時間をかけながら遺跡を進むと、大きな宝箱があった。

 しかし、ここに来るまでに、落とし穴や、槍衾(やりぶすま)、仕掛け矢と遭遇していた。


「さて、どうするか....」

 となれば、この宝箱もただの宝箱とは考え難い。


 とは言え、ここまで来て放置とするのもこのトレジャーイベントの本分に反する。


 だからガイは開けることとした。


 上蓋に手をかけると、

「キイイイッ!!!」

「うおっ!」

 奇声と共に上蓋は開き、その中に存在する鋭い牙をぎらつかせ噛みつこうとした。

 咄嗟に手を引き退がるが、正体を表した宝箱はその大口を開き、飛び掛かる。


「おらぁっ!」

 咄嗟に出したハンマーでぶん殴るガイ。

 ハンマーと撃突した宝箱型モンスターは弾き飛ばされ、ガイもモンスターの攻撃の勢いと自身の攻撃の反動で後ろへ退る。


「っと、ミミックか? それにしちゃデカイな」

 ハンマーから大剣に持ち替えながらガイは敵を見据える。


 外見は宝箱などに擬態するモンスター、通称『ミミック』だが、そのサイズがおかしかった。

 本性を表し殴り飛ばされた今、そのサイズはガイを大きく超えている。


 よく見ると宝箱が頭部を成し、岩やら土やらで出来た身体が地面から出していた。


「ミミックとゴーレムのミックスか?」

 見た目からそのままの推測を立て、ガイは切り掛かる。


 敵の性質上動きはそれほどではなさそうだし、何より自身のスピードじゃ何かあっても回避は無理だと割り切ったが故の行動である。


「見た感じ、ボスモンスターっぽいしな、お宝をもらうぜ!」


 こうして遺跡エリアに住むボスモンスターとの1vs1(タイマン)が始まった。






 《ジャンヌ》


 彼女の周りには今、複数のプレイヤーがいた(・・)


 そう、いた(・・)


 だが、そのほとんどは倒れ伏し、そしてリタイアしていった。


 後はもう、目の前に立つ剣士のプレイヤーのみ。


「まったく、八つ当たりで私を狙うのはやめてもらいたいものだ」

「う、うるせぇ!」

 図星を刺されて声を荒げる剣士。

 その分かりやすい反応にジャンヌはふぅと溜め息をつくしかなかった。




「大体、私を倒したからと言って、あいつ(・・・)に何の痛手になるというのだ?」

「ぐっ、ちく、しょおぉぉっ!」

 その言葉がとどめとなり、剣士はジャンヌに切り掛かった。


 だが、単独では勝てないと分かったが故に同じ目的と理由を持つ他のプレイヤーと徒党を組んだのだ。

 つまりは勝ち目などなく、単なる捨て鉢だ。


 そしてジャンヌにはそんな剣士に対して情けをかける道理はない。


「“辰星斬(しんせいぎ)り"!」

 純粋に威力を重視した振り下ろしの一閃により剣士は倒れる。




「まったく、余計な時間を取られてしまった」

 武器を収め、ジャンヌは探索に出る。

 もちろん、プレイヤー達が落としたアイテムを回収して(しかし大した物はなかったが)。


 自分が今回のようにプレイヤーに狙われるのは初めてではない。

 しかし、まさか集団で仕掛けられるのは初めてだ。以前のバトルイベントの乱戦とは違う分、手間がかかってしまった。


 正直言って面倒としか思えなかった。


 けど、


「彼だったら、こんな状況も楽しめるのだろうか?」

 歩きながらふと、瓶底眼鏡の友人のことを思い浮かべ呟くも、誰もいないので返事もなかった。






 《マーキュリー》


 マーキュリーは姿を隠していた。

 彼女が持つスキルの一つ『隠形(おんぎょう)』は姿を目視出来なくすることが出来る。


 これにより、暗殺者としての腕に磨きをかけ、彼女の『殺し屋』という異名に拍車をかけた。


 尤も、スキルによる探知も何もなしで自分の居場所を勘で当ててみせたフレンドには心底驚かされたが。




 そして、何故彼女が姿を隠しているのかと言うと・・・


 今彼女はモンスターの群れの中にいた。


 犬系の頭部を持ち、二足歩行で動くモンスター『コボルト』の群れ。


 マーキュリーはあえてこの群れに単身挑んでいた。

 コボルトはイヌ科動物をモチーフとしたビジュアルとあって、嗅覚や聴覚に優れているため、感知能力にと優れている。


 そのため、『暗殺者』であるマーキュリーにとっては天敵である。


 だからこそ挑んでみた。

 彼女の持つ『隠形』の姉妹スキル『隠密』は姿は隠せないが代わりに感知されるのを阻害する効果がある。


 スキルのレベル上げも兼ねて、天敵の群れに挑むことにした。


(群れならきっと、リーダーがいるはず...)

 鼻と耳をひくつかせ、辺りを探るもまだマーキュリーを見つけられないでいるコボルト達。

 マーキュリーはコボルトを避けながらリーダーを探す。


 すると、一体だけ体格も大きく古傷もあっていかにも歴戦といわんばかりのコボルトがいた。


(あれだ....)

 そして近づこうとした。


 が、止めた。

 リーダーと思しきコボルトがこちらに反応する素振りを見せたからだ。

 これは既に発動した『黒猫の水曜日(カッテンストゥッツ)』の感知能力の強化のおかげでもある。

 もし、用心のためにと発動していなければ返り討ちに遭っていただろう。


(やっぱり感知能力が高い...)

 とはいえ、マーキュリーもこのまま何もせずにはいられない。

『隠形』と『隠密』を発動し続けるにはMPを消費しなければならず、このままではMP切れでジリ貧は確実である。


(ならば...)

 だからマーキュリーが取る選択は一つ。


 彼女は走り出す。

「“俊足"」

 自身のスピードを上昇させるスキル。

 元々、暗殺者の職業はSPEのステータスも伸びやすいため、このスキルと組み合わせることでその強みは更に増している。


 そしてもう一つ、

「“黒猫の水曜日(カッテンストゥッツ)"」

 彼女に尾が生えると共にそのスピードは更に増した。


 これによりコボルトのリーダーが接近に気づいた時には既に首を切られた後だった。

 まだHPが残っていたコボルトのリーダーだったが、直後に毒状態のエフェクトが発生する。苦しそうに呻き、口から泡を吹いて倒れるのだった。


 マーキュリーの武器である鉤爪は蠍形モンスターの尾を素材にした特注品で、攻撃がヒットした際に一定確率で毒状態にする代物である。

 尤も、暗殺者のスキルで確実に毒状態にするものがあり、今回はそれと併用したのだが。


 コボルトのリーダーが倒れると他のコボルト達も消えていった。どうやらリーダーがいる限り、POP(出現)する設定のようだ。


 リーダーが倒れた所にはアイテムが落ちており、早速拾うマーキュリー。


「これは...私向きじゃない」

 アイテムの詳細を確認して落ち込むのだった。






 《たまこちゃん、まるたちゃん》


 生産職である二人は今、散策に精を出していた。


 何も、このイベントではモンスター退治やエリアに隠された報酬以外にもアイテムの収集は可能だった。


 例えば森林エリアなんかでは薬草とかのアイテムが採取出来る。

 そんな風に彼女達は素材アイテムの収集をメインとしていた。

 実際、このアイテム収集には利点があると考えていた。


 このイベントで脱落するとイベント中に手に入れたアイテムを一つドロップしてしまうペナルティがある。

 けど、そのアイテムにはこういった収集した素材アイテムも含まれる...はずなのだ(検証出来ないので絶対とは言えない)。


 だからこうやって事前にたくさんアイテムを集めておき、その上でお宝アイテムを手に入れることが出来れば他のプレイヤーに襲われたりしても奪われる可能性が減るのではと思ったのだ。


 それに、このイベント用フィールドで手に入る素材アイテムの品質は悪くなかった。


 手に入れたアイテム自体は普段から入手しているのと同じのがほとんどだが、品質が中品質がほとんどで、時折高品質のも手に入るのだ。


「ねぇまるちゃん、どれくらい集まった?」

「あ、えっとね...」

 そうしてしばらく集めていたが、たまこちゃんの言葉で確認作業に入った。




「結構薬草アイテムが集まったね。ありがとうたまちゃん」

「いいよ、この後は鉱石アイテム探しを手伝ってもらうんだからさ」

「うん、もちろんだよ」

 薬草アイテムが集まってきたのを確認した二人は鉱石アイテムを探すのに方向転換するのだった。






 《?????》


 そのプレイヤーは森の中を優雅に歩いていた。


 気軽に散歩するかのように歩いていた。


 服装は燕尾服と森の中を歩くには向かないが、関係ないといった風に姿勢良く歩いていた。




 そして見つける。

 興味深い獲物を。


 何故興味深いかと言うのか?


 それは単純にこの森林エリアには似つかわしくない格好だからだ。


 黒いタキシード系の服装にハンターハット。

 履いている靴は爬虫類の革を用いたブーツの類で不釣り合いなのが残念だ。


 そして、一番注意を集めているのは特徴的な瓶底眼鏡だった。




 “カサッ"

「ん?」

 思わず注意が逸れてしまい、草を掻き分ける音を立ててしまった。


 そしてこちらに気づく瓶底眼鏡の青年。


 おそらく警戒するだろうが問題はない。


「こんにちは、お散歩ですか?」


 警戒.....してる?

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