見た目の変わらない変形って微妙ですね。
更新が大変遅くなり、申し訳ありませんでした。
2024/3/7
一部加筆修正。
さて、次は何なので...しょ..う。
あれ?
光るのが終わりましたが特に変わっていない、ですよね?
いえ、とにかく仕掛けてみましょう!
当たって砕けろと言いますし。
あ、いや、砕けたらまずいですけど。
武器をダガーに変えて、“スローイング"です。
僕の投げたダガーは壺の魔人に当た“ブォンッ!"
・・・・・
はい? いきなり勢いがなくなって落ちました。
「“ファイアボール"ッ!」
ダニエルさんの魔法は放たれます。
これは当た“ブォンッ!"
消えました。
「・・・・」
ダニエルさん、何とも言えない顔に。多分さっきの僕と同じですね。
「二人とも、回避!」
マーキュリーさんの声が耳に入ります。
壺の魔人の掌から雷...危ない!
“バチッ!"
その場から飛び跳ねて回避です。
「ぐっ!」
あ、ダニエルさんがくらってしまいました。
・・・・・
透けない。
「少し残念ですね」
「何が!?」
よかった。ダニエルさん、あまり効いていないようですね。
「何が残念なの?」
「いえ、電撃を喰らったら骨が透けて見えるかなって...」
マーキュリーさんが聞いてくれたので説明します。
「ああ、なるほど」
「オイッ! 納得するなマーキュリー!」
「ごめんなさいダニエルさん」
「切り替えるぞ!」
「ええ」
とは言っても、このまま攻撃してもダメージは通りそうにないですね。
何かあるはず。
あ!
「あのレリーフ...」
そうです。あのレリーフにあったのは、十中八九この壺の魔人。
けど、あのレリーフのような光景は今までなかった...
ならばそれは今なのでは?
そして、あの丸いレリーフが表すものがあるはず....
この部屋は天井が高く壁は円を描くように丸いですね。
海外映画とかで見る古い塔の中みたいな...
どこだ?
どこなのですか?
あ
「ありました」
「「?!」」
「二人とも、詳しい説明は後にしますので、魔人の気を引いてください。お願いします」
「「えっ!?」」
僕は走り出します。
アタッカーのお二人ですが、正直な所僕よりも魔人の攻撃を凌げるはず。
機動力に長けたマーキュリーさんならその攻撃を回避出来ますし、ダニエルさんは魔法への耐性が高く防御の魔法もありますからこの戦闘に限れば僕より固いはず。
ならば僕がやるべきなのは攻撃を凌ぐのではなく、活路を開くこと。
ですので僕は走ります。
ーーーーーーーーーーーーーーー
また私に囮役を任せる。
・・・・・
でも、分かってる。
私が今するべきなのはウォーカーを信じること。
だから私はアイツの攻撃を引きつけ躱していくこと。
「ダニエル、いくよ」
「ふん、言われるまでもない!」
『怪童のダニエル』
一匹狼なやつかと思ったけど、ウォーカーを信じてる。
ならばこれ以上何も言う必要はないね。
私は駆け出す。
ーーーーーーーーーーーーーーー
え? え? えええええっ!?
ボクが囮役!
いやでも、ボクはアタッカーじゃ...
色々言いたいことがあったけど、ウォーカーさんは走り出していく。
一体、何を.....
いや、違う。
会って間もないボクの頼みを聞き、前回では来れなかったボス戦まで連れて行ってくれたウォーカーさん。
ボクがするべきなのはあの人を信じること。
その信頼に応えること!
「ダニエル、いくよ」
「ふん、言われるまでもない!」
『殺し屋のマーキュリー』
誰とも群れない孤高のプレイヤーだったはずが...
彼女もウォーカーさんを信じてる。
ならばボクも負けてられない!
ボクは杖を構える。
ーーーーーーーーーーーーーーー
二人が注意を引いてくれているその隙に僕は見つけたそれの前に立ちます。
これは、なんというか...
「シャボン玉?」
中々に大きいですね。屈んでいけば中に入れ...ないですか。残念。いざ触ろうとすると弾かれます。
フワフワ浮いていますから中に入れば空も飛べるかなと思ったのですが。
さて、あのレリーフのようにいくならば、このシャボン玉もどきを壊せばなにかあるのでは?
改めてこの部屋のあちこちに色んな色のがありますからね。
試しに切ってみましょう。
「てい」
“ボヨンッ!"
駄目ですか。
このシャボン玉もどきは赤色。ならば、
「“ウォーター"」
・・・・・・
反応なし。
魔法が違う? 空飛ぶ壺の倒し方と同じと思いましたのに。
いや、赤色なんですから単純に..
「“ファイア"」
おお、今度は中に吸い込まれていきます。
あれ、割れない?
ならばもう一度“ファイア"
お、赤色の輝きが増したような。
もう一回“ファイア"
“パリィンッ!"
あ、割れた。ガラスみたいな音ですね。
変化は・・・見た目じゃ分かりませんね。
でも、何かあるはず。
さて、次に近いのは...あちらの青色ですね。
いきましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーー
気のせいか?
さっきまで使っていた火球の攻撃が来なくなった。
いや、水とか竜巻とか岩の攻撃はあるから攻撃自体はあるはずなんだが...
いや、とにかく集中だ!
「“マジック・シールド"」
ボクはエレメント・ジンの魔法攻撃を防御する。
元々耐久力に欠ける魔法職はこういった防御系の魔法を駆使することでそのハンデを補うようになっている。
もっとも、それでも普通は攻撃に活かすのがボクの職業『ソーサラー』の本分なんだけどね。
正直な話、ボクが使える防御魔法はこれくらいだ。
だって身を守る前に敵を倒すのが『ソーサラー』だし。
仮にボクの職業が支援魔法に長けた『エンチャンター』や回復重視の『ヒーラー』だったら防御魔法のバリエーションも多いだろうけど、無いものねだりしてもしょうがない。
ん?
今度は水流の攻撃が来ていない?
これは....あっ!
「ウォーカー..」
これがあなたの策だったのですね。
ーーーーーーーーーーーーーーー
おや、青色のを壊したら水の攻撃をしなくなりましたね。
さっきは赤色を壊したら炎の攻撃がしなくなりましたよね。
つまり、このシャボン玉もどきの色はどの属性の攻撃かを示していると。
そしてそれを割ることでその属性の攻撃が出来なくなったと。そうなると、攻撃のためのエネルギー源か何かということですかね?
でも、このまま上手くはいかないですよね?
壺の魔人の表情が心なしか戸惑ってい...る?
あと一つくらい割ったら何か変化があるかもですね。
となると、割りやすそうなシャボン玉もどきは後回しにして、割りにくそうな方を優先していきましょうか。
えっと、割りやすそうなのは.....
・・・・・
「ない」
参りましたね。
目に見える範囲としては、地上からでは届かない高さにあるものしか。
そして僕がいるのは地上。
となると、『スローイング』か魔法攻撃のスキルくらいしかないですね。
でも、僕が使える魔法はまだ初級だけで射程距離が一番ある『ウィンド』でギリギリ届くかどうかですね。
しかし、あのシャボン玉もどきは特定の魔法しか効かないからそれでは意味がないですね。
一応、緑色のがありますからそれには効きそうですが...
けど、黄色のがありますし、ここに来る前の部屋にあった高台のラインと同じと考えるなら、僕の使える魔法だと『アース』ですかね?
でもあの魔法は地面を盛り上げるからあんな離れた所には届きませんし.....
・・・・・
ん?
地面を盛り上げる...
「“アース"」
地面が盛り上がります。
で、この盛り上がったのを狙って..
「“アース"」
おお、更に地面が盛り上がります。
乗れますよね?
よいしょ、と。
うん、大丈夫。
ならば、
「“アース"、“アース"、“アース"・・」
おおっと、ぐんぐん盛り上がっていきます。
幸い、ゲームだからか地面の下がスカスカになるとかはないようです....ねって、グラグラしてます。あ、まずいですね、落ちますねこれ。
なんとか、あと一回。
「“アース"ッ!」
あとはもう、ジャンプ!
“ザラァァァ"
幸いなことにシャボン玉もどきのすぐ近くは石壁の一部が飛び出ていたのでなんとか乗ります。
そして僕が蹴り上げた瞬間、頑張って盛り上げた土のタワーが崩れました。
ふぅ、危なかった。
流石に盛り上げ過ぎてバランスが崩れましたね。
えっと、このシャボン玉もどきは黄色ですね...
じゃあ、
「“アース"」
よし、正解ですね。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ん、今度は岩が来なくなった。
よし、この調子で...
って、ウォーカーさん、何やったんですか?
なんか、半分くらいで折れた土の塔がありますけど一体...
あ、『アース』の魔法か!
あんな使い方があったなんて...
「っ! ウォーカー、逃げろ!」
「はい?」
ボクの呼びかけに彼が呆けている中、エレメント・ジンがウォーカーさんを狙って殴りかかった。
ええ、殴る!?
拳で攻撃するなんて...いや、使える魔法が減っての苦肉の策か?
ってか、ウォーカーさんは?
拳が撃突して粉塵が舞い上がってるからどうなってるんだ?
思わずキョロキョロと首を動かしていると、
「あ〜れ〜」
気の抜けた声と共にウォーカーさんが吹っ飛んできた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
シャボン玉もどきを壊した所で壺の魔人の目は僕を捉えていました。
そして僕目掛けて殴りかかってきました。
拳をまともに喰らったらまずいですよね。
けど、今僕がいる足場は狭く躱せる余裕はないし、そもそも間に合わないかも。
なんて思考が過ると共にギリギリ間に合う感じで
「“アース"」
と足元を盛り上がらせ、その勢いに合わせて足場を蹴ります。
結果、拳には当たりませんでした。
でも、思ったよりも勢いがついてしまいました。
「あ〜れ〜」
ダビッドソンまで言った方がいいでしょうか?
おっと、このままでは地面に撃突しますね。
多分、ダメージ入りますよね?
どうしましょう...あ!
「“ウィンド"」
僕の前方へと風が吹き、勢いが多少落ちます。
けど、
「だっふん!」
惜しい、“だ"が足りなかった。
地面にぶつかり転がります。
現実だったら痛いでしょうねこれ。
HPは、ギリギリセーフです。もし、勢いそのままだったらまずかったかもですね。
ポーション、ポーション...と。
「ウォーカー、無事か?」
「まだ生きてます」
ですが...
壺の魔人の手の平から竜巻が放たれました。
僕目掛けて。
急いで走り、なんとか躱します。
あ、また。今度はビームですね。
竜巻よりも速いですが、人差し指から放たれたそれ先程の竜巻よりは範囲が狭い(細い)ので何とかまた躱します。
うっ、舞い上がった塵が目に...
ん?
ない、眼鏡がない。
どこに?
あっ!
僕が見た視線の先に、眼鏡はありました。
レンズは割れて、フレームもグシャグシャの状態で地面に転がっていました。
「ウォ、ウォーカー...?」
「ひ..」
「え?」
「酷いじゃないですか、眼鏡を壊すなんて!」
よくも、僕の大事な眼鏡を...
「ウォーカー、一先ず落ち着け!」
「はっ!」
そうですね。取り乱してはいけません。
そう、これはゲーム。
あの眼鏡はあくまで飾り。
僕が現実に使ってる本物じゃありません。
ふう、危ない危ない。
「失礼しました、ダニエルさん。ありがとうございます」
「う、うむ....改めて見ると凄いな」
「はい?」
「いや、なんでもない」
って、また僕目掛けて攻撃が。
回避っ!
「なんか、怒ってませんか? 壺の魔人」
こめかみ辺りがピキピキしてますし。
「おそらくあの光の玉は弱点で、それを一定数壊したことでウォーカーへのヘイトが集まったんだ」
「多分、しばらくはウォーカーだけを集中して狙うはず」
あ、マーキュリーさん。
なるほど、注意を惹きつけていたはずのマーキュリーさんとダニエルさんが狙われていないのはそういうことですか。
「ならダニエルさん、あのシャボン玉もどきの破壊をお願いします。どうやら色に応じた属性の魔法を当てればいいみたいなので」
「うむ、任せろ」
「マーキュリーさん、僕は二人から離れるようにしますので、ダニエルさんをフォローしてください」
「任せて。こいつ一人じゃ頼りないから」
「何を!」
「それではお願いします」
ーーーーーーーーーーーーーーー
ウォーカーさんから光る玉の破壊を任されたボクは改めて光る玉を見る。
残っているのは空中に浮かぶもののみ。
色は白と緑。
色に応じて効果のある属性が決まっているとのことだが、おそらく光と風の魔法で効果があるのだろう。
しかし、地上からだと距離があるな。
射程距離のある魔法でも外れるとMPが勿体無いし...
いや、そうだ。ウォーカーさんがさっき使っていた...
「“アース"」
おっと、地面が盛り上がったけどバランスが...
「なんの!」
もう一回!
揺れながら盛り上がる足場にボクはなんとか堪える。
けど...
怖い!
いくらゲームとはいえ、頭から打ったりしたと思うと...
でも、ウォーカーさんはもっとやっていたんだ。
ボクだって..
「“アース"ッ!」
よし、これで届く!
「“ウィンドカッター"!」
よし、風の刃が吸い込まれた。
もうい...っ、MPがもう...
「MPポーションは...」
[リュック]の中に...あと一本、Lv.5!
ウォーカーさんのおかげで買えた虎の子の一本。
ていうか、ウォーカーさんの素顔...凄いな。
よし!
「いけ、“ウィンドカッター"!」
ーーーーーーーーーーーーーーー
なんか...ムカつく。
私は暗殺者。
本来なら相手に気づかれない内に敵を討つのが役割だ。
だから私に視線に向かないのは助かること。
なんだけど、私を脅威に思わないから無視されるのは違う。
確かに、これならダニエルのサポートもしやすい。
あのエレメント・ジンは私を脅威でないと判断してウォーカーだけを狙っている。
自分にとっての急所を狙っていたウォーカーを脅威と判断するのは分かる。
けど、私を無視するのは違う。
私は暗殺者だ。
私を警戒した上で認識されないのが正しいんだ。
だから、私を無視するな。
でも、どうしよう?
どうすればいい?
「マーキュリーさん」
「っ!?」
エレメント・ジンの攻撃を捌きながらウォーカーが呼んでくれた。
「回復、薬って、持って、ますか?」
躱しながら聞いてくれた。
あ、そうかあれじゃアイテム使う暇が...
分かった。
私の手持ちの回復薬で今支援するから。
「“黒猫の水曜日"」
私に耳が生える。
うん、エレメント・ジンの動きがはっきり見える。
もう一度、
「“黒猫の水曜日"」
尻尾が生える。
これでスピードも増した。
HPポーションを出して...走る!
エレメント・ジンの攻撃の余波を躱し、私はポーションをウォーカーに投げつける。
瓶が砕ける演出の後、ウォーカーが回復する。
私は走る勢いそのまま通り過ぎる。
「助かりました」
ウォーカーの声がした。
後ろからポーション使ったから見えてないけど、回復に気づいてくれたのね。
とにかく、今の私に出来ることはウォーカーの生存維持。これでやれることができた。
そしてチャンスが来たら、エレメント・ジンを叩いてやる。
絶対!
だからダニエル、サポートしてやれないけど早くして。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ふぅ、助かりました。
壺の魔人の攻撃を躱して防いでと繰り返す内にどんどんHPが減っていってしまう僕でしたが、マーキュリーさんのおかげでまだ倒れずにすみそうです。
壺の魔人の攻撃の間隔が短い現状、回復アイテムを出す暇がありません。
最悪複数一気に使えばなんとかなるかと考え、マーキュリーさんにポーションとかを分けてもらおうと思ったのですが、まさか僕の所へデリバリーしてくれるなんて。
大変ありがたいです。
ですから、そのご厚意に応えないとですね。
しかし、当初の狙い通りにダニエルさんのフォローに入ってもらうのは難しいですね...
とにかく、もうしばらく凌いでいって、チャンスを待ちましょう。
竜巻の攻撃がなくなり、パンチとビームしか来ていないということはダニエルさん、シャボン玉もどきを一個壊してくれましたね。
あと一個、お願いします!
ーーーーーーーーーーーーーーー
よし、何とか緑色のを壊した。
続けて、離れた所の白の光る玉目掛けて魔法攻撃をボクは放った。けど、ギリギリ届かない。
また近くまで行って、『アース』で足場を作ってからいけば...それだとMPが足りない。
けど、回復のためのMPポーションがもうない。
ウォーカーさんやマーキュリーならまだ持ってるかもだけど、ウォーカーさんはエレメント・ジンの惹きつけ役で一杯だし、マーキュリーはポーションでウォーカーさんを回復させるので一杯だし...
仕方ない。
「ウォーカー、マーキュリー! すまないがもう少しだけ耐えてくれ!」
ボクは声を張り上げる。
「了解」
「お願い、します、ダニエル、さん!」
二人が返事をしてくれた。
よし、いくぞ!
「発動、“乳香の贈与"!」
ボクはユニークシリーズのスキルを発動した。




