壺よりランプのがよかったです。
さて、動かしていきましょう。
「よいしょ」
ズズズと動く石。
サイズがサイズな分、重いですね。
「ウォーカー、もう少し前だ」
「了解です」
もう少し前と...
「マーキュリー、そこから一度左にずれろ」
「ん」
指示に従い、マーキュリーさんは押している石を左へと方向転換します。
そして、ダニエルさんはさっきの舞台みたいな高台の上から指示を出してくれています。
一応、この石はダニエルさんでも押すことは出来ていたのでステータスに左右されないのでしょう。
けど、魔法職のダニエルさんには少しきついようなので指示出しをお願いしました。
これはここでよし。
ではこちらを・・・・
「よし、これで最後です」
・・・・・
「何も起きませんね」
「ダニエルの嘘吐き」
「なっ!? 我のせいか?」
ふむ、改めて確認しましょうか。
「だって動いていない」
「じゃあ、他に何があるというのだ?!」
石の数は8個。
上の面にある線の向きはそれぞれ縦向きと横向きが半分ずつ。
そして床の線が途切れているのも8ヶ所。
向きもちょうど半分ずつと石の数と同じですね。
「・・・・」
「黙ってないで何か言え!」
それに合わせて石を並べてみましたが、反応はないということは何か見落としがあるのかも。もしくはこれがフェイクだったか。
いや、後者はまずありえませんよね。
フェイクにするならもう少し分かりやすい仕掛けにしているはず。その方が引っ掛かりやすいですし。
この仕掛けはダニエルさんが高台から見てようやく気づけたものでしたから。
さて、線の方はどうでしょうか?
高台の方から見て、4本の線はバラバラの方向に進み壁へ行き着いています。
端を逆に辿ると...
あ、高台の方で集まってますね。
ということは、この高台に何か?
映画とかだと軽く叩いたりして仕掛けを見つけますよね。
やってみましょう。
“コンコンッ"
何の反応もありませんね。
「大体、貴様は勝手についてきただけだろう!」
「君だけじゃ、どうせここまで来れなかった」
「うぐ、それは否定し切れないが...」
“コンコンッ"
“コンコンッ"
“コンコンッ"
■■■■■■■■■■
『魔法吸収の高台』
■■■■■■■■■■
おっ、反応がありました。
魔法吸収ですか...もしかして。
「“ファイア"」
“ボォっ!"
「おわっ!」
「っ!?」
あ、床の線が赤く光りました。1本だけ。
なら...
「“ウォーター"、“ウィンド"、“アース"、“ライト"」
「ちょ、ウォーカー!?」
「ん、どうしましたかダニエルさん?」
「いや何で魔法を床に撃ってるの?」
「ああ、これですよ」
「ん?」
「あ」
よし、床の線4本全て光りましたね。
石の方は...
あ、やっぱり光ってる。けど、線の色が違いますね。最初の赤、その後に青、緑、黄色。
だったら...
「石と床の線の色を合わせてもう一度やってみましょう」
「あ、ああ分かった」
「うん」
「ダニエルさん、そこを右です」
「任せろ!」
「マーキュリーさんはもう少し前で」
「こう?」
「そうです」
現在、僕が指示を出してダニエルさんとマーキュリーさんに石を動かしてもらっています。
僕が仕掛けに気づいたから指示を出してくれと言われましたが、指示を出すだけなのは気が進まないですね。
でも誰かがここで指示を出さないと作業時間がかかり過ぎますし...
諦めましょう。
「ダニエルさん、今度は左で」
「ふんぬぅ〜!」
「マーキュリーさん、少し下がってください。行きすぎです」
「あ、ごめん」
「これで、どうだ!」
「オッケーです」
最後の石をダニエルさんが動かしてくれました。
これで床と石の線の色が合致しました。
そしたら....
「おおっ」
「石が..」
ダニエルさんの言う通り、ズゴゴゴって音と共に石が床に沈み込んでいきます。正解ということでよさそうですね。
それに...
「あっ」
「線の光が強くなってる」
今度はマーキュリーさんの言う通り、線の光が強く輝いています。
光の線は行き着いた壁で終わりかと思ったら壁伝いにも光の線が伸びていき、そして一ヶ所に集まります。
集まった所で4色あった光の色は混ざり、綺麗な白い光の丸となりました。
そしてこれで終わりました。何も起きません。
「これは...」
「次のギミック?」
ですよね。
もしかして....
「“ファイア"、“ウォーター"、“ウィンド"、“アース"、“ライト"」
「またか!」
あ、反応しました。『ライト』の魔法が正解だったようですね。
“ゴゴゴゴゴッ!"
「「おおっ!」」
「おお」
動きました。
壁の一部がそれぞれ左右にスライドしていって、その先に通路が現れました。
「よし、では行くか」
「うん」
ふむ...
「ん、ウォーカー?」
「どうしたの?」
おっと、二人はもう行こうとしてましたね。
「あ、いえ、こういうのって映画とかだと入った途端に扉が閉まって、全滅させようとする罠が起動とかってありましたよね?」
「「・・・・・」」
・・・
「怖い想像は止めてくれ!」
「うんうん」
顔を青くしながら叫ぶダニエルさんと激しく頷くマーキュリーさん。
失言でしたね。その通りなら二人が真っ先にやられてしまいますし。
結局、僕とマーキュリーさんの二人がかりで『罠感知』のスキルを駆使して念入りにチェックすることに。
もっとも、なにもありませんでしたけど。
通路の先は下りの階段でどんどん下へと進みます。
『ライト』を使いますがかなり暗いですね。
こう、暗闇の奥から凄い形相でミイラとかオバケとか出ませんかね?
ちょっとワクワクするのですが。
っと、こんなことは口にしてはいけませんね...
「もう呟いてるぞウォーカー..」
「オバケ...」
あら、思わず口にしてしまっていましたか。
降りることしばしば。
特に何も出てきませんでした。
目の前には仰々しい扉があります。
というか、でかいですね。
普通扉って大きくても2メートル越えくらいですよね、多分。
「これ、何メートルでしょうね?」
「結構あるね」
「目算で5メートルは余裕じゃないか?」
「大きいですね」
そして思います。
こんだけ大きいと開けるのって大変なのでは?
と。
石造りみたいですし。
「ウォーカー、あそこ」
ん、おや、妙なものが...
「あれは、操作盤?」
「ほうほう、操作盤ですか。で、何ですかそれは?」
ダニエルさんはご存知のようですが、キーボードの類でしょうか?
「あー、メニュー画面みたいなやつ」
「ああ」
そういうことですか。
■■■■■■■■■■
『開閉装置』
現在魔力切れ。
■■■■■■■■■■
魔力切れですか...よく見ると手の平型の線が彫られてますね。
ここに手を合わせるのかな?
■■■■■■■■■■
魔力の補充が可能です。
MPを消費しますがよろしいですか?
【YES】 【NO】
■■■■■■■■■■
もちろん、【YES】で。
すると僕のMPが一気に減っていきます。
そして空っぽになります。
・・・・・
「何も起きませんね」
「もしかして、MPが足りないのか?」
「それなら..」
僕は[リュック]からMPポーションを出しました。
ダニエルさんに魔法を使うならといつもより多く買っておいたのでよかったです。
そういえば今さらですが、ポーションは飲まなくていいんですよね。
頭の部分をパキンとへし折ることで使用したことになるから面白いですよね。
こうやって見るとポーションの瓶って、お医者さんが使うアンプルってやつに似てますね。
さて、もう一回魔力を補充しましょう。
これでいけますかね?
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魔力が補充されました。
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“ズゴゴゴッ!"
お、開きますね。
映画とかアニメとかですと、なんかこう眩い光が開いた扉の先から漏れてきますよね。
・・・・・
「光らなかった...」
「何を期待していたんだ?」
気持ちを切り替えましょう。
さて、この部屋の中は...
一面石造りの部屋。
壁のあちこちから出っ張った石の板がありますね。頑張れば乗れそうですね。
そして部屋の奥にあるのは....
「壺」
「壺だな」
「壺ですね」
すっごく大きい壺がどんとあります。
高さだけでも僕の身長よりは余裕でありますね。
OPラストの一家とネコみたいなことが出来そうですね。
ですが、それよりも..
「蛸壺じゃないですよね?」
「どんな願望だ!」
「どんだけ大きいタコなの?」
「タコ焼き、タコ刺し、イモタコ、タコ唐揚げ、タコ飯...」
「どれだけ食べるつもりだウォーカー!」
『侵入者ヲ感知。排除行動ニ入リマス』
「「「つ!?」」
今の声は?
“ガタガタッ!"
壺が揺れてますね。
あ、壺の口から何かが....
黒い、煙?
でも、煙がまとまって...
人型に....
「あ、あの壁画の」
「くるぞ!」
ダニエルさんの声に僕は剣と盾を構えます。
マーキュリーさんは既に構えていました。
煙は煙っぽさを無くし、ハッキリとした人型になりました。
大きいですね。
「やっぱりランプの...」
「だから壺だよ、ウォーカー」
ですよね。残念。
目の前には壺から上半身だけの大きな黒い人。
服は着ていませんね。いやでも、凄い筋肉ですから、筋肉アピール?
『侵入者ハ三名。エレメント・ジン、排除ヲ開始シマス』
壺の魔人さんこと、エレメント・ジンとの戦いはこうして始まりました。




