空飛ぶ壺と戦います。
遅くなってしまい、申し訳ありません。
区切りのいい所までと考えていたら長くなりました。
2023/5/15
ダンジョンの前とは言いましたが、まだ距離はあります。
ただ、
「すごい霧ですね....」
「うむ、この先に件のダンジョンがあるのだ」
「魔法職向けのダンジョン、ですよね?」
「ああ、我も以前挑んだのだが内部の半ばでやむなく撤退することになったのでな」
「その時のパーティーは?」
「いや....我一人だ」
「ダニエルさん単身...」
以前たまこちゃんさんから教わったパーティーにおけるプレイヤーの役割からすると、おそらくダニエルさんは個人戦闘が可能なアタッカーかバランサーといった所でしょうか?
魔法職は打たれ弱いみたいですし、敵の数が多かったりすると大変でしょうしね。
「で...」
ん?
「なぜ、マーキュリーがいるのだ?」
「それはこっちのセリフ。なんで君がウォーカーと一緒にいるの?」
最後方にいるマーキュリーさんに対しダニエルさんが疑問を口にするとマーキュリーさんも同じく疑問を口にされます。
遡ると少し。
ここに向かう前のことです。
「それでダニエルさん、頼みとはなんですか?」
「実は以前挑んだが失敗したダンジョンがあってな、パーティーメンバーを求めていたのだ」
「僕がパーティーに?」
「うむ、急で悪いのだがいいだろうか?」
そういうことですか。
「ちなみに、どんなダンジョンですか?」
「ああ、遺跡型のダンジョンだ。出現してくる敵は魔法が有効なタイプがほとんどでな」
「魔法の練習によさそうですね...」
「あ、ああ。商人のウォーカーの初級魔法でも充分通用するし、大物はもちろん我に任せてくれ」
ん、あれ?
「ダニエルさん、違いますよ」
「ん、何がだ?」
「僕の職業は商人ではなく『遊び人』です」
「は?」
「『遊び人』?」
「はい」
「ロール職の?」
「その通りです」
・・・・・
五回目ですね....
なんだろう、もう流石にお約束だと理解させられますね。
「ん、待て....その出立ち...あ、バトルイベントでジャンヌ=ダルクに迫ったって噂の...」
???....何やらぶつぶつと考え込んでいますね。
どうしたのでしょう?
やはり僕では難しいと思ったのですかね?
「んん、よし! ウォーカー、改めて協力を頼む」
「よろしくお願いします」
それではダンジョン探索です。
「ウォーカー?」
「ん? あ、マーキュリーさん」
出発しようと意気込んだ所、後ろにマーキュリーさんがいました。
“バチっ!"
おや?
マーキュリーさんの視線は...ダニエルさん?
「『殺し屋のマーキュリー』...」
「『怪童のダニエル』...」
ふむ、これは...
「お知り合いなのですね」
「まあ、知ってはいるな」
「うん、前に倒したから知ってる」
「んぐっ!」
「そうなのですか?」
「ああ、以前のバトルイベントの時に予選でこいつと同じグループになってな...」
「その時に倒した」
「あれはっ、貴様が他の相手を蹴散らしている最中の我の背後から不意打ちした故の卑劣な勝利であろうが! 一対一なら始めから我の勝利だ!」
「でも実際に負けたのはあなた」
「くぅっ!」
なるほど...これは所謂『ライバル』というやつですね。
『好敵手』と書いて『ライバル』と読む感じの。
といった感じで三人でダンジョンに挑戦中です。
「まったく、ウォーカーが誘わなければ貴様など加える必要はなかったのだが...」
「こっちだって、ウォーカーに誘われなかったら君と組むなんてありえない」
「「ふん!」」
進んでいくと何やら廃屋と思われるものがチラホラ。
かろうじて残っている石造りの壁、皿と思われる物や壺の粘土細工が散らばっています。
「この粘土細工って何か使えませんかね?」
「ウォーカー、粘土細工じゃなくて土器って呼ぼう」
ああ、そうでした。こういうのは土器って言いましたね。
マーキュリーさんに訂正された僕は粘土細工改め、近くに落ちている土器を拾ってみます。
が、崩れてしまいます。
「フィールドを飾るオブジェクトの類だからな。拾おうとする壊れるんだ」
と、ダニエルさんの補足。
そうして進むと霧の向こうに何やら大きなシルエットが....もしや、
「ダニエルさん、ダニエルさん。あれが遺跡型のダンジョンなんですよね?」
「ああ、だがそろそろ....」
僕の疑問に答えてくれたダニエルさんですが、周囲を警戒し始めます。よく見ると手には杖が握られています。
僕もそれに倣ってショートソードとバックラーを構えます。
マーキュリーさんも鉤爪を構えます。
敵は何処から...
“カタカタッ!"
「え?」
何か固い物が小刻み揺れるような音がします。
しかもあちこち。
音が聞こえるのは若干地面側のようなのでよく見ると...
「壺?」
「くるぞ!」
カタカタと揺れる周りの壺に僕が首を傾げるとダニエルさんが半ば叫んで報せてくれます。
途端に揺れていた壺が浮き上がります。
さっきまであちこちに転がっていた古ぼけた壺がプカプカと浮いています。
それも一つや二つではなく、もっと多いです。
僕達を囲う様にフワフワと動いています。
これは...
「レッサー・エレメントポッドだ。体力は低いが数が多いから気をつけろ。それと..」
「ならさっさと始末する」
ダニエルさんの説明を聞いた途端、マーキュリーさんが駆け出します。
このメンバーで最も素早く動ける彼女の先制攻撃に壺は反応出来ず、その内の一体(一個?)にマーキュリーさんの鉤爪による斬撃が走ります。
けど、
「っ!?」
マーキュリーさんも驚きます。
だって壺はまだ浮いているのですから。
表示されるHPのバーも減っていますが、まだ半分は残っています。
「マーキュリー、気をつけろ!」
ダニエルさんが警告している時、マーキュリーさんが攻撃した壺がマーキュリーさんの方へと口を向けます。
その中は真っ暗で底が見えませんでした。代わりに目玉の代わりのように赤い光が二つありました。
なんて見ているとその赤い光が強く輝くと共に炎の玉が放たれます。
狙いはマーキュリーさん。
「“マジック・シールド"!」
炎の玉にマーキュリーさんが身を丸くしていましたが、彼女を包むように白い光が膜となって現れて炎の玉を防いでくれました。
「....ありがとう」
「話を最後まで聞け。確かにHPは大したことないが、コイツらは弱点を突かないと意外と固いんだ」
「つまり、魔法ですね?」
「正解だウォーカー、“ウォーターボール"!」
ダニエルさんの杖の先端から水の玉が放たれます。
先程マーキュリーさんを攻撃した壺に直撃すると途端に地面に落ちて割れてしまいます。
その時中から赤い光が微かに浮かび上がりますが、それもすぐに消えました。
「的確に魔法で攻撃すれば今のように一撃で決まる。だが...」
「じゃあ僕も、“ファイア"」
ダニエルさんに続いて剣を持っていない手から炎を出して近くの壺を攻撃します。
“キュポンッ!"
「あれ?」
僕の炎、壺の中に入っちゃいました。
同時に壺から炎の玉が出てきます。
マーキュリーさんの時より大きいです。
「うわっ」
咄嗟に転がって躱しましたが、驚きましたね。
「ウォーカー、そいつらは自分が使う魔法と同属性の魔法で攻撃すると吸収してしまうんだ!」
「そうなんですか?」
それは厄介な...
「吸収ってことは、今の攻撃が威力が上がるのもそういうことで?」
「正解だっ、威力が上がるのは吸収した直後の一発限りだ」
僕に攻撃してきた壺目掛けてダニエルさんが『ウォーターボール』を放ち倒しました。
ということは...
①弱点となる属性攻撃(僕達の場合だとつまり魔法)だとほぼ一撃で倒せる。
②弱点以外の攻撃(物理攻撃など)だと一撃で倒すのは難しい。これは僕達の中で一番攻撃力のあるマーキュリーさんのおかげで分かりました。
③壺の攻撃魔法と同じ属性攻撃だとダメージにならず吸収。その後一回だけ攻撃の威力が増す。
ですか....
「ふぅ〜」
壺の数は...16個でどの壺にどの属性攻撃が有効かは判別方法は不明。
有効打を与えられるのは僕とダニエルさん。
よし。
「マーキュリーさん、撹乱メインでお願いします!」
そういって僕は『挑発』を発動します。
壺の幾つかが僕の方に口を向けてきます。
よかった、もし全部が僕を狙っていたらまずい所でしたね。
『挑発』のスキルのレベルがまだ3でしたからよかった。
「了解」
マーキュリーさんは僕を狙っていない壺に攻撃を仕掛けてくれています。
僕を狙っているのは5個。
マーキュリーさんを狙いだしたのは4個。
他はまだ警戒態勢ですかね?
壺の一つが迫って来ます。
僕は剣で打ちます。
他の壺が攻撃してきます。
こちらは石礫を飛ばしてきました。盾で防ぎますが、衝撃が走ります。
黄色い光...
「“ウィンドカッター"!」
ダニエルさんが放った風の刃が石礫を飛ばしてきた壺に当たり、壺は落ちます。
あ、ダニエルさんの方へと行こうとする壺が...
「“挑発"」
させません。
あ、今度は炎の玉と水の玉の同時攻撃。
熱いのは嫌なので炎の玉を盾で防ぎますが、水の玉は直撃です。肩に当たりました。
思ったよりも衝撃が強くて、昔やったドッジボールを思い出しました。
HPバーが減ります。
赤い光と青い光...
と、よろけていたら更に別の壺が風の刃を放ってきました。
いけるかな?
「“パリィ"」
剣で受け流....
「うわっ!」
せませんでした。咄嗟に盾で防御しますが半分くらい当たりました。
「ウォーカー、『パリィ』はアーツスキルとかの物理攻撃しか効果ないから」
壺の攻撃を躱し、近くに着地するマーキュリーさんからの一言。
残念です。
[リュック]からポーションを出して慌てて回復します。
今のは緑の光...そういうことですか。
「反撃です」
走ります。目指すは壺の一つ。
こいつは....赤。
なら、
「“ウォーター"」
向けてきた口から逃れるように身を捻ってからの水鉄砲です。
おお、発動してほぼすぐに出ました。
流石ダニエルさんがくれたペンダントです。
ダニエルさんのと比べるとショボいと言われるであろう僕の水鉄砲ですが、壺はブルルと身震いしたかと思うと力なく落ちて動かなくなります。
ってか、壺割れてます。残り15個。
「ダニエルさん、中の、目の光です」
「なにっ?」
「光の色に応じて、使う魔法、が、決まっています」
他の壺の攻撃を躱しながらの会話なので途切れ途切れになってしまいます。
でも一応伝えることは出来たはずです。
あ、でも、離れて攻撃するのが基本のダニエルさんだと確認してからの攻撃では時間がかかりそうですね。
どうしましょう?
いや、教えればいいんですね。
まず一つ。
こいつは...
「赤です!」
“シールド・バッシュ"で赤い光の壺をダニエルさんの方へ飛ばします。
「援護感謝する!」
即座に水の玉を放つダニエルさん。
よかった、こちらの意図を察してくれて。残り14個。
「ウォーカー、後ろだ!」
そういうダニエルさんの言葉に僕は振り向くと壺が魔法を放ってきます。
これは緑、風ですね。
盾で防御して反撃...
「させない」
と、思っていたらマーキュリーさんが壺の後ろから切り掛かってくれました。
一撃では倒せずとも、振り下ろし気味の一撃により、地面すれすれに下降してしまう壺。
チャンスです。
「“アース"」
壺の真下の地面がぐんと上に伸びて壺にぶつかり、そして壺は割れました。残り13個。
「マーキュリーさんありがとうございます」
「動きを止めるから後お願い」
「分かりました!」
おっと、また来た。これは青...
「青です!」
今度は蹴り飛ばします。
「“ファイアボール"」
ダニエルさんの魔法が直撃。残り12個。
この調子でいきましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーー
『レッサー・エレメントポッド』
魔法職の天敵で魔法職が天敵という風変わりなモンスター。
見た目は同じなのに弱点となる属性攻撃でないと一撃ではまず倒せず、その他の攻撃では一回は耐えてくる。
けど、攻撃力の高いマーキュリーでも倒しきれないなんて。
その上、自身が使う攻撃と同じ属性の攻撃だとダメージは入らない上、強力なカウンターを放ってくる。
以前、ボク一人が挑戦した時は一属性ずつ魔法攻撃を連発して少しずつ数を減らしていくことで何とか勝利した。
まあ、カウンターを何度か受けることはあったけど、ボクの魔法防御力は高いので耐えることは出来た。
それに、アレもあったしね...
即席のタンク役兼魔法によるアタッカー役を担ってくれるウォーカーさん、以前ボクを負かしたマーキュリーもいるからやりやすいはず。
と、思ったけど、数が多い。
前は10体もいなかったのに、今回は17体って...
どうしよう?
「ダニエルさん、中の、目の光です」
「なにっ?」
「光の色に応じて、使う魔法、が、決まっています」
え、あ、ホントだ!
すごいウォーカーさん、攻撃を躱しながらそれに気づくなんて。
しかし、レッサー・エレメントポッドの目の光を判別するには遠距離戦ではまず無理だ。
ウォーカーさんみたいに近接戦じゃないと判別出来ないし...
魔法が有効だけど、その弱点を見抜くには接近って....
運営の悪意を軽く感じる。
でもどうしよう。ボクの場合じゃ攻撃を耐えてから反撃して倒すしか.....
「赤です!」
って、ボクの方に一匹飛んできた。
え、何? 赤...あ!
“ウォーターボール"ッ!
「援護感謝する!」
杖から出る水の玉によって、ボクの方へと飛んできたレッサー・エレメントポッドが消える。
よし、この調子でウォーカーさんが飛ばしてくれるのを倒せば...
って、ウォーカーさん自身も倒してくれてる!
すごい、何匹もいるのに上手く捌いてる!
っと、感心してる場合じゃない!
ボクの方にも何匹か来る「“挑発"」
と思ったらウォーカーさんが惹きつけてくれた。
でもあのままじゃウォーカーさんが危ない!
ならば、
「“マジック・シールド"」
防御魔法を展開してウォーカーさんを援護です。
おかげで何匹かが放った魔法は防げた。
「ありがとうございます、ダニエルさん!」
そう言いながらウォーカーさんは剣を振るう。
でも、あの距離じゃ剣は届かないんじゃ「黄色です!」
え、届く?
いや、なら準備を、“ウィンドカッター"
「“ウェポン・チェンジ"」
「なっ!?」
デカッ、ってかピコピコハンマー?
ウォーカーさんの手にあったはずの剣がいつの間にか巨大なピコピコハンマーに変わった。
剣よりもリーチがあるから見事に命中してレッサー・エレメントポッドの一匹がボクの方へ飛んでくる。
そして射程圏内に入ると共に風の刃が命中して倒れる。
でも、あのピコピコハンマーは一体..
「“ファイア"」
なんて考えていたらウォーカーさんがまた倒してくれた。
いけないいけない、集中っと!
ーーーーーーーーーーーーーーー
単に吹っ飛ばすのならこっちの方が効率いいと気づいた僕はピコピコハンマーに武器を変えてティーショット、いや野球的なフルスイング?
まあ、そもそもティーショットの意味とかよく知りませんけど。
振るったピコピコハンマーによって気絶状態の壺が何個か出てきたので続けて魔法攻撃です。
そうこうしている内に頑張ってマーキュリーさんも倒してくれています。
ダニエルさんも確実に倒してくれています。
おっと、こっちに2個来ますね。
どっちも青ですね。
でしたら、“ウェポン・チェンジ"
ナックルに持ち替えての、
「“クイック・ブロウ"」
素早い拳の一撃に壺の一つが押され、もう一つの壺にぶつかります。
からの、
「“ファイア"」
纏めて焼きます。
これぞ壺焼き....
あ、中身ないんでしたね。
あと6個。
ーーーーーーーーーーーーーーー
魔法の練習も兼ねてこのダンジョンに挑戦しているウォーカー。
それに加えてまさかのダニエル。
私もパーティーに加わりウォーカーを助けようと思ったけど、まさか一撃で倒せないなんて。
ボスでもない普通のモンスターなら大抵一撃なのに...
油断して攻撃をもらいそうになった私はダニエルに助けられた。
正直悔しい。
でも、
「....ありがとう」
助けてもらったから。
「マーキュリーさん、撹乱メインでお願いします!」
ウォーカーの言葉に私は動く。
前にストーンゴーレム相手にもやったし、それと比べれば楽。
それに全く攻撃が通じない訳ではないから削りきるだけ。
「ウォーカー、後ろだ!」
あ、ウォーカーを狙ってる。
ダニエルじゃ届かない。
「させない」
だから私が助ける。
「“アース"」
私が叩き落としたモンスターをウォーカーがトドメを刺してくれた。
「よくやったマーキュリー」
偉そうに...
「君がのろまなだけ」
「なにをっ!」
「なら競争」
「いいだろう、我が多く倒してやる!」
「負けない」
また私が勝つ。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ふう...」
僕達の周囲に敵の姿はありません。
「お疲れ様です、二人共」
無事勝つことが出来ました。
おや?
「はーはっはっは!」
「むぐ...」
何やらご機嫌なダニエルさんと悔しそうなマーキュリーさん。
「我は6体!」
「....4体」
ああ、何体モンスターを倒せるか競争してたのですね。
そういえばそうでしたね。二人が倒してくれたモンスターの数は。
となると、僕は..ひい、ふう...
「僕は7体ということですかね?」
「そういうことだな、一番は貴様だウォーカー」
「おめでとう」
「ありがとうございます」
さて、目的の遺跡までもう少しです。
更に進むこと少々。
僕達は遂に目的のダンジョンの前に到着したのです。




