分担して復興支援です。
村の一画、集会所に怪我人が集められていた。
身動きがとれないほどではないけど、歩くのに杖を要したり、腕を動かすのが難しいぐらいの怪我人はそれなりにいた。
そんな村人達に一ヶ所に集まり、その中心に立つのが『プリースト』であるわたしルナだ。
「”エリアヒール"」
杖を地面に突き立てると、淡くも暖かい光がサークル状に広がり、その中にいる村人達を癒していく。
『エリアヒール』は一定範囲内にいる味方(今回はクエストの関係から村人も味方扱いとなっている)全てを回復させることが出来る中位の回復魔法。
一人一人の回復量は、一人のみに効果を及ぼす『ヒール』よりは劣るけど、村人達ならば十分な回復量だから効率は悪くない。
それでも負傷が残る者は僅かにいたけど、そちらに対してはまるたちゃんがくれた『HPポーション』(Lvは1〜3まで用意)ですぐに完治する。
ウォーカー先輩も初めは範囲回復や回復量については把握しきれなかったけど、一度確認してもらい、わたし一人で基本大丈夫と分かると人員配置の調整を行ってくれた。
さて、怪我人の治療は順調ね。
アイツは大丈夫...ね。なにせあの4人だし。
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村の周辺を巡回するは私ジャンヌ=ダルク、そしてマーキュリー、悟空、ガイ。
私を含め戦闘力に自信のある上位プレイヤーが3人、そして名前が売れてきた新鋭コンビの戦闘担当という戦闘特化の4人パーティーだ。
仮にモンスターが襲ってきてもこの辺りのレベル帯ならば何の問題もなくあしらうことが出来る。
私達4人は現在、モンスター退治と並行して食料品となる素材及び建築に使える素材の確保に勤しんでいた。
「お、ボア発見!」
「肉!」
「お肉!」
「食糧だな」
「ブギィッ!?」
目の前を横切ったボアはギラついた目で見てくる人間(主に悟空)に戸惑っていた
本来ならすぐに攻撃を行うはずのボアが身を竦ませてしまっているほどだ。
故に、一瞬にしてその命は刈り取られるのだ。
「これでどれくらいだ?」
「目標の3割って所だな」
「まだまだ足りない」
「場所を変えてみようか」
三人は私の言葉に同意してくれたので、次の狩り場へと向かうことにする。
しかし、退治したモンスターの数は確保した食糧品分倒したモンスターの倍近くに及ぶのだが、中々集まらないな。
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村の広場では生産職の二人が奮闘してくれています。
「ウォーカー、そっちの建材ちょうだい」
「はいどうぞ」
「ウォーカーさん、ポーションの追加出来ました。ルナさんに渡してください」
「急いで行ってきますね」
生産職のたまこちゃんさんが家屋の修復を行い、まるたちゃんさんは回復アイテムを追加生産。
僕はその補助に回っています。
時々、薬草のすり潰しや建材の切り出しなどの生産面のほんの一部も手伝ってみたりしています。
おかげで『木工』のスキルを獲得し、バトルイベント前に手に入れていた『薬剤調合』のスキルもレベルアップ出来たのは嬉しいですね。
僕は回復アイテムを[リュック]に入れてルナさんの所へ運びます。
「ルナさん、追加のポーションです」
取り出したポーションをルナさんに渡します。
「ありがとうございます。ウォーカー先輩、優先的に回復させてもらった村の大工経験のある人です」
「お、ちょうどよかったです。それでは皆さん、家屋の修復に人手が欲しいので、怪我が治って早々悪いのですがご協力お願いします」
「おうよ、任せてくれ!」
「バリバリ働くから指示してくれ!」
おお、頼もしい限りです。
僕が家屋の修復に入れる方々をお連れしていきますと、早速たまこちゃんさん達と打ち合わせします。
「でね、ただ家を直すだけじゃまた嵐とか来た時に直す手間が出ちゃうでしょ。だから前よりも頑丈にした上で修復すべきなの!」
「それは助かるが具体的にはどうすればいい?」
「手間だけど、単なる木製の壁から土壁にしていくといいと思うんだ。今ある木製の壁の外側に土で補強する感じで」
なるほど、確かにたまこちゃんさんの話の通り、土壁なら火事になって燃え難い分延焼も防ぎやすいでしょうね。それに今ある壁に上塗りする形なら頑丈そうですね。
となると....
「たまこちゃんさん、粘土とか泥が必要になりますか?」
「うん、現実では実際どうか分からないけど、ゲーム内だと粘土や泥が材料になるわ。前に鍛治仕事の炉を作る時にもそれを使ったし」
ほうほう。ですが家全部となると、かなりの量が必要ですね。
では、
「ララさん、怪我のない子ども達を連れてきてください」
「は、はい..」
「ドヴァさん、村の子ども達にも協力をお願いしていいですか?」
「は、はい」
ララさんが行くのを見届け、僕はシャベルを出します。
お店で購入したマイシャベルです。
それで地面を掘ります。『穴掘り』のスキルがあるからすいすいと掘れますね。とは言っても僕の狙いは穴ではなくて掘り出した土ですけど。
そうして僕の前には大量の土が山となっていました。
ついでに村の井戸から汲んできたお水の入ったバケツも。
少し待つとララさんを筆頭に村に住む子ども達が集まってきました。
「おじさ〜ん、どうしたの?」
男の子が聞いてきてくれました。ふむ、おじさんですか...確かにおじさんですね。
「はい、これから皆さんで泥んこ作りをします!」
「遊ぶの?」
「服が汚れちゃうよ?」
「遊ぶのとは少し違いますね。服が汚れるのも今回は無礼講というやつです。皆さんにはお家を前より強くするための泥んこを作ってもらいます!」
「お家強くなるの?」
「はい、皆さんがいっぱいお手伝いしてくれればそれだけ強いお家ができます」
「おいらやる!」
「あたしも!」
「よし、それでは皆さん、頑張りましょう!」
『おおーっ!』
盛り上がってくれた子ども達に大量の泥を作ってもらいました。
ついでそこにダメになった麦とかの茎や、鋸で切った建材から出た木屑とかを混ぜます。
なんかこう、昔見た番組の村作り企画か何かでこうすると頑丈になると聞いたことが....あった気がするので。
◆◆◆◆◆◆◆
New!『泥モルタル(低品質)』が製作されました。
◆◆◆◆◆◆◆
え? New?
◆◆◆◆◆◆◆
称号『生産の挑戦者』を獲得しました。
◆◆◆◆◆◆◆
ええ?
えっと、この称号は...
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『生産の挑戦者』
[概要]
今まで作られたことのなかった新たなアイテムを生み出した者が得る称号。この称号を持つ者はアイテム生産の能力が上達しやすい。
[効果]
1.生産系スキルの獲得経験値増加補正。以下の条件下においては更に増加する。
①新規のアイテムを作り出す
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これは....
「たまこちゃんさん、ちょっといいですか?」
「ええ、なに?」
「ええとですね、この称号なんですが...」
僕はこの『生産の挑戦者』を見せます。
「....んで」
「はい?」
「なんで?」
「え、何がですか?」
「何でその称号をゲットしてるのよぉーッ!」
えええええ、どうしたのですか?
ってか、涙目になってませんか?
「どうしたのたまちゃん?」
「アタシだってその称号欲しくて色々と作ってみたのに....」
「??? 何があったのですか、ウォーカーさん?」
「いや、なんかこの称号を見たらたまこちゃんさんが落ち込んじゃって」
「え、ええ!」
って、まるたちゃんさんも!
騒がしくなったお二人が落ち着くのに少々の時間を要しました。
落ち着いた所で聞いてみると、どうやら僕が手に入れた『生産の挑戦者』というものは生産職にとって名誉の証なのだとか。
概要欄にもある通り、この称号を手に入れるには誰も作ったことのないアイテムを作る必要があるとのこと。
新たなアイテムを作り出してみせることで手に入る称号。
なるほど、確かに手に入れてみたいですね。
「ですが、僕が作ったのはただのモルタル、建材なんですが」
「多分、建材を作ろうとする人が今までいなかったんじゃないでしょうか」
「ああ、そういうことですか...ん? でしたら...」
僕はふと思いついたそれを提案してみます。
・・・・・・
「「やったぁーーーっ!!!」」
声を揃えて歓喜するまるたちゃんさんとたまこちゃんさん。
無事に『生産の挑戦者』の称号を手に入れたようですね。
「ありがとねウォーカー!」
「ありがとうございます!」
「いえいえ、僕の単なる思いつきを二人が上手くやってくれたからですよ」
そう、僕が建材を作ったことで称号を手に入れた訳ですから二人にも新しい建材を開発してみればと勧めたらそれが正解だっただけなんですよね。
ちなみに、新たに作られた物はまるたちゃんさんが『石灰モルタル』で、たまこちゃんさんは『スルキモルタル』という物でした。
『石灰モルタル』というのは石灰と砂を混ぜて作った代物です。
砂は単純に落ちていたのを採取した物で、石灰はまるたちゃんさんが薬品調合用で持っていた貝殻を砕いたもので作られました。
『スルキモルタル』は燃やしてカチカチになった粘土を粉にして石灰と混ぜたら出来ました。
砂の代わりに粘土の粉とかはどうですかと適当に思いついたのを僕が提案したらまさかの正解でした。
ちなみに二人が作った物の品質は『中品質』でした。
僕は『低品質』なのに....
ちょっと悔しいです。
けどまあ、これで家屋の壁は頑丈になりますからね。
“ポーン"
お、メッセージが来ましたね。
ジャンヌさんから...
お、食糧が予定の半分は集まったから戻られると。
それじゃ、休憩も兼ねてお食事を作りましょうか。
村人さん達は大人数ですし、品数を増やすよりは絞る方がいいですね。
その代わり量は多くして...
それに食べるのは大人だけでなく子どももいますよね...
大人も子どもも食べれて、少ない品数で満足出来て沢山作れるメニューは...
・・・・・
「あれですかね?」
けど、あのメニューは....
「あ、あれがあるから大丈夫ですかね」
以前買ったけど使っていなかったから忘れていました。
問題は大丈夫そうですね。では、下拵えから始めますか。




