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真面目な僕は遊び人になりました  作者: 樫原 翔
ゲームをさらに楽しみましょう。
31/61

いざクエストに。と思ったら何やらトラブルでした。

 さて、ログインしましたし、今日はクエストを受けるとしましょう。


 よく考えるとゲームを始めて日は経つのにクエストを受けるのは今日が初めてって....


 まあ気にしても意味はないですね。


 それに、

「先パ〜イ!」

「悟空君、お待たせしました」

 先に待っていてくれてましたか。


「気にしないでください。こいつが予定より早くログインするって言って聞かなかっただけですので」

 その隣にははあと溜め息を漏らすルナさん。


 悟空君が早くに来たのを知っているということはルナさんもそれに付き合わされたということですかね。


 相変わらず仲が良いですね。




 今回、悟空君とルナさんが一緒にクエストを受けてくれることになりました。




 事の発端は先日の仕事終わりの時。


 取り引き先からそのまま帰路に着こうとした所を猿渡君と戌井さんに会いました。

 聞くと二人も取り引き先からの帰路に着こうとしていたとのこと。


 なのでそのまま夕食を共にしようということになりました。




 近くにあったファミレスにて席を取り、注文したメニューが来るまでの間、話は僕がこの前挑戦したダンジョンのことになりました。


 そして僕がたまこちゃんさんとマーキュリーさんとパーティーを組んだと話した途端です。

「ずるい!」

「はい?」

 何か不正はありましたかね?


 は、まさかたまこちゃんさんからお借りしたシャベルを振り回したことが...


「おれだって先パイとパーティー組みたかったのに! たまことマーキュリーずるい!」

「子どもか!」

 おやおや、お疲れでフラストレーションでも溜まったのかな猿渡君?

 あらあら、戌井さんの言葉に反応せずに俯いちゃってますね。




「お待たせしました、フライドポテト大盛りです」

「あ、ありがとうございます」

 ウェイトレスさんが注文しておいた品を運んできてくれました。


 では、

「いただきます」

 フライは熱々に限りますから冷める前に食べないと。


 うん。外はサクサクで中はホクホクした歯応えと程よい塩加減がいいですね。ここはドリンクバーでとっておいた炭酸と合わせて・・・


「ふう」

 うん、いいですね。


 ここはお酒の方も頼みますかね?


「先パイ!」

「ん、どうしました?」

 不満を口にして少しは落ち着いたのかな?


「今度、一緒にクエストに行きましょう!」

「ええ、いいですよ」

「ちょ、声でかい」

 あ、確かに他のお客さんや店員さんがこちらを見てますね。

 これは失礼。


「約束ですよ!」

「分かってますよ」

 心配症ですね猿渡君。

 よし、ここはあれで安心させてあげましょう。


「それじゃ、指切りで」

「え、あ、はい!」


「「ゆ〜びき〜り、げんまん、ウソついたら針千本、の〜ます、ゆびきった!」」

 僕と猿渡君はお互いに小指を出して指切りをしました。


 これで大丈夫です。


 お、次の品が来ますね。食べなければ。





 とまあ、こんな風にお約束をしたので今、これからクエストを探す所です。


 悟空君は僕の好きなものを選んでくれていいと言っていますが、本当にいいのでしょうか?


「お、よお、ウォーカー」

「ガイさん、こんにちは」

 町を歩いていたらガイさんと会いました。


「あれ、ウォーカーじゃん」

「こ、こんにちは」

 おお、たまこちゃんさんにまるたちゃんさん。


 こうも次々にフレンドの方々とお会い出来るとは奇遇ですね。


 ん、フレンドの方....


「ウォーカー先輩、どうしたのですか?」

 僕がキョロキョロと辺りを探っているのを気にしているルナさん。


「いえ、もしかしたら...」

 あ、いた。




 僕は近くにある建物の陰にいきます。

 そこには身を低くして隠れていた彼女がいます。


「マーキュリーさん、こんにちは」

「ウォ、ウォーカー、こんにちは」

 見つかったことに驚くマーキュリーさん。


 確かに、僕が見つけた時も最初、微かにフードの端が見えてからでしたしね。




 僕はマーキュリーさんを連れて、皆さんに紹介します。

 上位プレイヤーとして名の知れたマーキュリーさんとのご対面にガイさん達も驚かれました。


 その後は同性のまるたちゃんさんやルナさん、そして以前からの顔見知りであるたまこちゃんさん達が相手をする形で一先ず状況は落ち着いています。


 いや、人見知りされるマーキュリーさんにとっては落ち着かない心境ですかね。




「で、ウォーカーの今日の予定は?」

「クエストに初挑戦するんです。ガイさんは?」

「俺はレベル上げって考えていたんだが、実際の所予定らしいものはないな」

 なるほど。


「なあ、俺も一緒にクエスト受けてみてもいいか?」

「僕は構いませんよ」

 チラリと悟空君とルナさんを見ますが二人もこくんと頷いて大丈夫と意思表示してくれました。


 こうしてガイさんをはじめ、まるたちゃんさん、たまこちゃんさん、そしてマーキュリーさんも加えた7人でクエストを受けることになりました。

 一気に人数が増えましたね。




 そしてどんなクエストがあるのかを確認するため、掲示板のある場所へと行くことになりました。


「実際の所、どういった傾向のクエストがあるのですか?」

「そうですね、指定されたモンスターの『討伐』、特定のアイテムの『採取』、あとは...」

「生産職向けのアイテムの『納品』とかもあるね」

 悟空君、たまこちゃんさんが順に教えてくれました。


 色々あるのですね。

「あとはロール職向けのもあるぜ」

「ガイさん、遊び人向けのはありますか?」

 耳寄りな情報です。


「あ〜・・すまん、俺が知る限りでは多分ない」


 ・・・・・

「そうですか」




「先パイ、落ち込まないで!」

「きっとありますよ! だってウォーカー先輩の装備とか称号っておそらくですけど『遊び人』絡みじゃないですか」


 ・・・・・

「そうですね。あるかもしれませんよね」


「「ふぅ〜」」

「お疲れ、ごっくん、ルナルナ」

「お疲れ様です」

 いやいや、情け無い所を見せてしまいましたね。失礼。




 気持ちを切り替えて、掲示板ももうすぐですから急ぎま・・しょう。


「おや?」

 何やら掲示板近くが騒がしいですね。

 人集りがありますし。




「・・です!」

「・・から・・・っ!」

 人集りのざわつきもあって、途切れてほとんど分かりませんが、何やら口論が起きていますね。


「なんだ?」

「あれじゃ掲示板見れないじゃん」

「どうしよう」


 よいしょ、っと。

「すいませ〜ん」

「ちょ、先パイ!」

 申し訳ないですが掻き分けていきます。


 しかし、掲示板前で何が起きたのでしょう?


「ですから、貴女ほどの腕を持つプレイヤーなら僕らと一緒に行くべきなんです」

「だから、私は組むつもりはないと言ってるんだ!」

 二人のプレイヤーが言い争っています。


 聞こえてくる内容からどうやら、男性プレイヤーが女性プレイヤーをしつこく誘っている様子。

 女性のお断りの言葉を男性は聞いていないようですね。


 さて、

「あの〜」


「なっ!」

「え、ウォーカー!」

 間を割って失礼します。

 あ、女性プレイヤーはジャンヌさんでしたか。


 えっと、これが掲示板。見た目はなんかキャンプ場の周辺地図とかを載せてそうな木製のそれですね。


 色んな紙が貼ってありますね。

 ほうほう、薬草採取にモンスター退治、お、アイテムの納品もありますね。

 本当に色々あるんですね。


「すまないが、私は彼とパーティーを組む約束をしているんだ」

「え?」

 いきなり腕を掴まれ引かれました。


 ジャンヌさん、そんな約束しましたっけ?


 記憶にないはずのことを思い返そうとした時、ジャンヌさんが何かを懇願するような視線を向けてくれました。


 これは....


 ジャンヌさんと向かい合うような位置に立つ男性プレイヤーは何故か唖然としたご様子。

 どうしたのでしょう?


 訳が分からないです。




「き、貴様! 一体なんだ!」

 あ、硬直が解けましたね。


「はじめまして、ウォーカーと申します。以後お見知り置きを」

 確かにいきなりお話を邪魔する形になってしまっては困惑してしまいますよね。


 自己紹介はちゃんとしなければ。


「あ...んん、僕はロイド! 双剣のロイドだ!」

 あれ、何を驚いているのでしょう?

 自己紹介してくれましたが。




「ウォーカー、貴様はジャンヌさんの何なのだ?」

「はい?」

「フレンドだ」

 あれ、ジャンヌさんはフレンド登録していなかったはずなのですが...

 じゃあ...


「ん? ちょっとウォーカー」

「え、ですがフレンドと言ってくれた訳ですからフレンド登録しないと」

「〜〜っ」

 おや、何やら額を抑えていますが、寝不足ですか?




「とにかく、私は彼と組むからそちらの誘いは断らせてもらう」

 おお、ジャンヌさんも一緒にクエストですか。




「ふざけるな!」

 ん、どうしたのでしょうか?


「どうしたのですかロイドさん?」

「貴様だ! ウォーカー!」

 はい?


「いきなりジャンヌさんとパーティーを組むだと! どこの馬の骨かも分からない人間がトッププレイヤーの一角である彼女と組むなど相応しくない!」


「そ、そんな・・」

「ふん、分かったならさっさと...」

「ジャンヌさん、聞きましたか? 今『馬の骨』って!」

「はぁ?」

「あ、ああ」

「僕、現実でそんな表現を聞くなんて初めてです! いやぁ〜人生何が起きる分かりませんね」

『そこぉ!?』

「あれ?」

 皆さん、何に驚いているのですか?


「き、貴様! 僕を侮辱しているのか!」

「ん、どうしましたロイドさん?」

 顔が真っ赤ですね。もしや、風邪?


 ならばログアウトして療養した方が...

 “ヒュンッ!"

「ん?」

 何でしょう? いきなり飛んできた思わず掴みましたがこれは・・手袋?


 ■■■■■■■■■■


 プレイヤー“ロイド"があなたに決闘を申し込んでいます。


 受理しますか?


【YES】   【NO】


 ■■■■■■■■■■


 おや、いきなり決闘システムのウィンドウが。


「僕と決闘しろウォーカー! 嫌とは言わ..」

「あ、いいですよ」

「話を遮るな!」

 え、大声で決闘しろなんて言ってましたが、その後何か言ってたのですね。


「いいか、僕が勝ったらジャンヌさんは僕達とパーティーを組む! 万が一にも貴様が勝てばジャンヌさんとパーティーを組むがいい」

「それは了承しかねます」

「断るのかよ!」

 そりゃ断りますよ。


「いいですか、ロイドさん。ジャンヌさんがロイドさんとパーティーを組むかはジャンヌさんが決めることで、僕達二人で勝手に決めていいことではありません」

「うぐっ!」

「どうやら無理矢理お誘いしているようですが、そんなことをする人とは組みたくなくなってしまいます。一緒にゲームがしたいなら、礼儀をもって申し込みをするのが大事だと思います」

「う、うるさい!」

「ということで、決闘は折角ですからやりましょうか」


 えっと、YESっと!


「あ、ちょ、話が終わって..」

 ロイドさんの話を遮り、僕の視界は変わりました。




 ーーーーーーーーーーーーーーー


 フレンドのウォーカーが決闘をすることになった。


 いきなり過ぎるなおい。


 とりあえず、

「よお、ジャンヌ=ダルク」

「破断のガイか。久しぶりだな」

「お前も面倒ごとに巻き込まれたな」

「ああ、あのロイドというプレイヤーは以前に一度組んだだけなのだが...」


 ああ、それなのに我が物顔でパーティーを組むべきとか吐かしてんのかよ。

 下手すりゃ迷惑行為でアカBANだぞ。


「しかし、ウォーカーは大丈夫なのか?」

「ああそれな」

 俺も思ったんだよな。


 咄嗟にスキルショップで購入した『初級鑑定』でレベルを見たが、ロイドというプレイヤーはウォーカーよりも高いんだよな。


「大丈夫だと思うぜ」

「君は..」

「よお、バトルイベント以来だな」

 俺達の心配に対し、悟空が大丈夫だと言う。


 悟空はリアルでもウォーカーの後輩とは聞いていたが..


「何か根拠はあるのか?」

「いや、ないぜ」

「ないのかよ!」

「大丈夫って言ったのは、あなたのことよジャンヌ」

「ルナ、どういうことだ?」

 ジャンヌは大丈夫って...???


 ダメだ訳分からなくなってきた。


「さっきのロイドってプレイヤーが決闘に条件を持ち出してきたでしょう。でもウォーカー先輩はそれは拒否した。しかも正論ぶつけられてまともに反論出来ないまま決闘に入っちゃったし」

「つまり、仮にあのロイドって奴が先パイに勝ったからと言ってもその後にジャンヌをしつこく誘えばあっちが野暮ってこと」

「ああ、そういうことか」

「ウォーカー、そこまで考えて...」

「「いや、それは違う」」

「え?」

 ジャンヌの言葉を遮るようにして悟空とルナが否定した。




「あれは多分..」

「はじめての決闘だから..」

 まさか・・・


「早く勝負したかっただけ?」

「「多分、正解」」

 俺の推測を二人は呆れ気味に肯定してくれた。


 その瞬間、がくりと力が抜けてしまった。

 あ、ジャンヌもだ。


 とりあえず、俺達はウォーカーの決闘が終わるのを待つことにした。


 ーーーーーーーーーーーーーーー

※補足と余談


『決闘の申し込み方法について』

 基本は目の前のプレイヤーに対してメニュー画面から決闘を申し込めばいいのですが、それでは面白みがない、という運営の遊び心から『手袋を投げつける』というやり方も決闘の申し込みの方法となりました。


 けど、「手袋がないプレイヤーは?」ということになり、靴下でも装備している装飾品でも何でもいいから『持ち物を投げつける』という形にその後収まりました。


 しかし、これが原因で新たな問題も・・・

 過去に仲間内で試してみようと言って靴下を投げつけたプレイヤーがいたのですが、投げつけられた仲間が遊び半分で避けたことで、代わりによそのプレイヤー(めっちゃ強面)の顔に当たったことがありました。

 慌てて謝罪しようとする投げつけたプレイヤーでしたが強面のプレイヤーはすぐさま決闘を受理して、そのプレイヤーをコテンパンにした後、お説教をしました。


 幸い、アイテムを取られるなどのことにはなりませんでしたが、この出来事から以降は他のプレイヤーも『投げつけるのは手袋のみ』なんて暗黙の了解が出来上がったとのことです。


 ちなみに、件の靴下事故の様子は動画に撮られ運営サイトの掲示板にて今も挙げられており、決闘をする際のマナー教材として活躍しているのだとか。

 もちろん、当事者の顔は全てモザイクがかかっています。


 が、当時の事件を目撃した人は多く、その様子を動画にして挙げているため、誰がやったかなんてのは丸分かりですが。

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