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真面目な僕は遊び人になりました  作者: 樫原 翔
ゲームをさらに楽しみましょう。
30/61

打ち上げです。その後には新武器の検証です。

年度末から予定が立て込んでしまい、更新が遅くなりました。大変申し訳ありません。

2023/2/19

「それでは、ダンジョン攻略を祝って、かんぱーいっ!」

「乾杯」

「か、かんぱい..」


 僕達は今、町にあるカフェで打ち上げをしています。

 カフェなのでお酒は出ませんからたまこちゃんさんはジュース(メロンソーダ)、マーキュリーさんもジュース(オレンジジュース)、僕はコーヒーで祝杯を挙げています。


「でも、あの隠しエリアに入るにはウォーカーが持ってる称号が必要なんてね〜」

 豪快にコップの中を飲み干し、たまこちゃんは呟きます。


「ウォーカーって、本当に何者?」

「? 至って普通の遊び人ですが?」

「違う、遊び人はそんなに強くない」

「強い? 僕が?」

 “こくこく"


 はて? どこがでしょうか?


 レベルはそんなに高くないですし、ていうかたまこちゃんさんの方が上ですし、マーキュリーさんは更に上ですし。


「あのね、ウォーカー、ジャンヌちゃんが強いのは知ってるよね?」

「ええもちろん」

 確か、ジャンヌさんはこの前のバトルイベントで本戦(出場者数32名)にも出場していましたね。


 結果は確か...8位。

 けど、下馬票ではもっと上の実力だったとか。

 そもそも彼女の結果は最後の相手がイベント優勝者のアーサーというプレイヤーと当たったためで、件のアーサーさんとの戦いぶりではジャンヌさんはかなり喰らいついていたとか。


 組み合わせの運が悪かったってことですね。


 聞いてみるとマーキュリーさんも予選でアーサーさんに当たったために予選落ちだったとか。




「で、ジャンヌちゃんは予選で苦戦させられたの」

「そうだったのですか?」

 あのジャンヌさんを苦戦させた方がいましたか。


 誰でしょうか?


「「・・・・・」」

「あれ、どうしましたか?」

「ウォーカー、掲示板見ていないの?」

「職業とか設定のものなら」

「ああ、そう・・」

 はて、額を抑えてどうしたのでしょう?


 寝不足ですかね?




 あ、そうだ。

「マーキュリーさん、フレンド登録よろしいでしょうか?」

「え?」

「あ、アタシもいい?」

「え?」

「こうして知り合えたのも何かの縁ですからね。よければお友達になっていただきたいのですが、ダメですか?」

「あ、その...あ、ありがとう」

 よかった。問題はないようですね。


 マーキュリーさんともフレンド登録しました。

 これで僕のフレンドはガイさん、まるたちゃんさん、たまこちゃんさん、悟空君、ルナさん、そしてマーキュリーさん。


 6人に増えました。


「お待たせしました。フレアアップルパイ、ナムナスベリータルトです」

「おお、ありがとうございます」

 カフェの店員さん(NPCとのことですが、普通の人間にしか見えないですね)が注文しておいたお菓子を運んできてくれました。


 メニューの説明を見ましたがこれ、前に食べて状態異常になってしまった林檎とベリーが材料とのこと。


 それを知ってしまっては無視できる訳ないですからすぐに注文しました。


「それではいただきましょう」

「お、美味しそう」

「うん..」

「「「いただきます」」」


 まずはパイから。

 噛むとサクッと気持ちのいい音が聞こえます。

 噛むほどに生地に包まれていた林檎の強い甘さが口の中に広がります。

 ステータスを確認しますが、毒状態にはなりませんね。


「ではこちらも」

 今度はタルトです。

 う〜ん、こちらは上に乗ったベリーのおかげでしっとりとした食感。生で食べるのに比べて酸味が程よいですね。

 まあ、あれは痺れもありましたが。

 こちらも麻痺状態になりませんね。


 そういえば、林檎もベリーも上位種(?)との食べ合わせは加工してもダメと出てましたよね。

 どうにか合わせて食べることは出来ないのでしょうか?


 試しにお二人に何か心当たりはないか聞きましたが良い回答はありませんでした。


 残念です。


 閑話休題。




「そういえばウォーカー、新しいエリアの拡張があるけどどうする予定?」

「そうですね、まだクエストは受けていませんし、それを幾つか受けてから新規エリアに向かいますかね?」

「そっか。まあ、拡張までまだ日があるし、手助けが欲しかったら誘ってよ。まるちゃんやガイガイにも声かけるからさ」

「それは助かりますね」

「まあ本音言うと、ウォーカーと一緒なら何か面白いことになりそうだからってのもあるんだけどね」


 おやおや、そんなことをおっしゃってまでクエスト初心者の僕を気遣ってくれるなんて、優しいですね。




 ーーーーーーーーーーーーーーー


 今回、単なる素材採取目的のつもりだったのに、予定とは異なる展開があった。


 上位プレイヤーのマーキュリーちゃんと知り合ってフレンドになった。

 今まではあまり挑まないでいたボス戦に挑戦したら勝つことが出来た。


 そしてストーンゴーレムから手に入った素材は今回、アタシが総取りとなった。


 最初は三人で山分けしようと言ったけど、

「欲しかったらまた挑みますので」

「私、アイテム作れないから」

 と言われてしまい結局貰うこととなった。


 もちろん、その代わりとしてアタシが出来得る限りのお礼はするということにした。




 そして一番予想外の展開はウォーカーが挑んだ隠しエリアでのエクストラクエスト。


 エクストラクエストは従来のクエストと違って条件を満たすとかしないと挑めないクエストだ。

 掲示板にも情報は上がるけど、大半は出まかせで、たまに本物と思われるものがあってもそれを挑むための条件が難しかったり突発的だったりで自分が挑戦するのは不可能に近いものばかりだった。


 聞いてみるとウォーカーはこれで3回目のエクストラクエストとのこと。


 前にアタシ達を助けてくれた時に2回(どうやら連戦だったらしい。やばい)、そして今回ので3回目。


 アタシも情報通じゃないけど、エクストラクエストを短い間で3回も挑戦できたっていうプレイヤーの話は聞いたことないんだよね。


 やっぱりやばいわ、ウォーカー。

 けど、アタシもエクストラクエストにはいつか挑戦してみたい。


 だからアタシはウォーカーに何かあれば誘ってと言った。

 もしかしたらアタシもウォーカーの強運にあやかれるのではという打算を含めて。

 隠すつもりはなかったからアタシはそれも言ったけど、ウォーカーはあまり気にした様子はなかった。


 いや、見せなかっただけかもしれない。


 ーーーーーーーーーーーーーーー


 フレンドが出来た。


 今まで人と関わるのを最小にしていたからフレンド登録することはなかった。

 けど、今回私は二人をフレンド登録した。


 これで二人にチャットで話しかけることが・・でき・・・・る自信がない。


 改めて前の席に座る(隣にはたまこちゃん)ウォーカーを見る。


 前のバトルイベントで、私は早くに予選を終えたので、他の予選の様子を見ていたからウォーカーの戦いも見た。

 画面越しでも分かっていたけど、ウォーカーはすごく淡々としながら戦っていた。

 動じることもなく、狙ってくるプレイヤー達をクレバーに対処し、そして勝ってみせた。瞬時に立ち回りを変えていき、終始周りを翻弄させていた。


 あの時は単独の戦闘だったけど、今回のパーティーを組んで確信した。


 彼はバランサーだ。しかも超一流になれるほどの。


 だって、私が加わると即席のタンク役を買って出て、私やたまこちゃんが攻撃出来るように立ち回ってくれた。

 けど、ナイフ投げで私達を援護もしてくれた。これはサポーターの役割だ。

 そんな中で自らも攻撃を行なってくれて、これは当然アタッカーだ。


 そしてストーンゴーレムの弱点を見抜いた。その観察力はスカウトの役割に通じる。

 彼は自覚していないけど、経験を積んでスキルを増やしていけばきっと、どんなパーティーでも活躍出来ると思う。


『遊び人』

 本来は育成が難しいロール職で選択しているプレイヤーは皆無のそれを彼はとっている。


 私はそんな彼がこれからどうなるのかが気になって仕方がない。


『戦場の遊戯者』と呼ばれ始めた彼のこれからを私は見ていきたい。




 ーーーーーーーーーーーーーーー




 打ち上げを終え、お二人と別れた僕は今、人気(ひとけ)のないフィールドに一人います。

 東の森林エリアの一画で、木々のない程よい広さの広場です。代わりに周りは木々と茂みだらけなので不意を突かれやすいでしょうけど。


 とにかく、僕は[リュック]からピコピコハンマーを出します。

 手に入れてすぐに仕舞ってしまったから詳しく内容を確認していませんでしたので、ここで検証しましょう。


 えっと、性能は....


「POW:+5、ですか...」

 意外としょぼ・・いや、ピコピコハンマーですから破壊力を求めるのはお門違いですね。


 他には....ん?




 んん?






 んんん?


「何でしょう?」

 いや、解説テキストの内容は分かるには分かるのですが、本当なのかと疑わしく思えて仕方ないんですよね。


 “ガサガサッ!"

「ん?」

 茂みを掻き分ける音?


『ギイィ』

 あ、ゴブリン。


 5匹ほど。

 洞窟で会った貧血ゴブリン達と比べるとやっぱり血色がいいですね。


 やっぱり生き物はお天道様の下が一番なんですね。


 ん?

 でもコウモリやフクロウは夜行性で、お日様の下には出てこないんですよね?


 と言うことはお天道様の下が一番ではない?


「ふむ」

 実に興味深い。


『『『『『ギイィッ!』』』』』

 おや、ゴブリン達が怒っていますね。


 何故でしょう?


 ・・・・・


 ああ。

「僕が考え事して無視していたのに怒ったのですね」

『ギイッ!』

 あ、頷いてくれた。


 正解でした。


『ギ、ギイィッ!』

 あ、襲ってきた。


 こちらが気づくまで待っててくれるなんて律儀ですね。


 ならば、

「新しい武器の試験相手になってもらいます!」






 しばし経った頃。


 僕の周りにいたゴブリンはもう1匹だけでした。

 地面などにハンマーを振り回した痕跡を示すような凹みはありません。


 けど、僕は振り回して振り下ろしました。


 後ろで最後のゴブリンがギィと呻いています。


 まるで、『何をした?』と聞いているようでした。


 それなら、一度は言ってみたかったあのセリフを。


「知らざあ言って聞かせやしょ、う...」

 振り向きざまに言おうとしました。

 けど、ゴブリン、消えてっちゃいました。




 折角の口上でしたのに、残念です。





 でもまあ、検証はとりあえずこれで終了です。

 うん、ロキさんから頂いたこのピコピコハンマー、中々に使えますね。


「これは面白い」

 ですが、そろそろログアウトしないと。仕事後なのでやっぱり疲れました。






 ヘッドギアを外し、窓の外を見ると日はすっかり沈んでいました。

 さて、何を食べましょう。


 ドーナツを食べただけですからお腹も減りました。

 ゲーム内でも甘いものを食べていましたし....


「塩気のあるものにしますかね」


 さて、冷蔵庫にあるのは...




 僕は冷蔵庫を開けて今晩のおかずを考えるのでした。

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