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真面目な僕は遊び人になりました  作者: 樫原 翔
ゲームをさらに楽しみましょう。
27/61

殺し屋さんは猫の耳でした。

 さて、お口をあんぐりさせているこちらの忍者さん。


「ところで一体、貴女は誰ですか?」

「知らなかったの!」

「たまこちゃんさんのお知り合いでは?」

「いや初対面!」

 なんと、推測が外れました。


「てっきり何かご用があるから後をつけていたのかと...」

尾行(つけ)られてたの?」

「っ!!」

「では自己紹介タイムとしましょうか」

「このタイミングで!」

 たまこちゃんさん。そんなに声を荒げて喉痛くないのでしょうか?




 洞窟の途中。

 僕、たまこちゃんさん、そして忍者さんの三人は座りました。

 しまった、お茶とお茶請けのお菓子を用意しておけばよかったですね。




 こほん。

「では、僕から。ウォーカーです。職業は遊び人です。以後お見知りおきを」

「え?」

「ん?」


「『遊び人』?」

「はい」

「ロール職の?」

「その通りです」


 ・・・・・

 は、四回目!


「えと、アタシはたまこちゃん。ちゃんも含めての名前ね。職業は鍛治士」

 たまこちゃんさんが仕切り直してくれました。


 そして、忍者さんは...


「あ、えっと....リー、です」

「え? 何?」

「忍者さんはリーさんというのですね」

 “ブンブンブンブンッ!"

 違いました。めっちゃ首を横に振ってます。


「...ユリー、です」

「ユリーさん?」

 “ブンブンブンブンッ!"


「...キュリー、です」

「物理学者の○リ・キュリー夫人でしたか」

 “ブンブンブンブンッ!"


「じれったい!」

「ィッ!!」

 おやおや、びっくりしていますね。

 何でしょう?


「ごめん。もうちょっとハッキリお願い」

「ま...」

「ま?」

「マーキュリー....です」

「ああ、マーキュリーさんでしたか」

「え!」

 ん、今度はどうしたのですかたまこちゃんさん?




「まさか、『殺し屋』のマーキュリー?」

 “こくん"


『殺し屋』

 中々に物騒ですね。




 マーキュリーさんの職業は『暗殺者』

 その名の通り相手を殺すことに長けた戦士系職業とのこと。

 急所を狙うことを得意とし、確実に殺すために毒の類も用いるという徹底ぶり。


 その能力を活かし、戦闘においてはその姿を捉えさせず、敵は気づけば討たれ倒れる。

 そんなスペシャリストな戦いぶりからついた二つ名が『殺し屋』


 その正体が...


「女の子でしたか...」


 ふむ、暗殺者というと個人的にはナイスミドルな紳士のイメージが..

 あ、あれはスパイの方でしたね。ゼロゼロの...


 ああでも、引退したけど復讐のために再び動いたあの人もスーツ姿が似合ってましたね。まあ、紳士というよりハードボイルドって感じですけど。


 そういえばあの人のあだ名って何でしたっけ?

 えっと、ビビンバ?

 いや、ババロア? パパイヤ?




「あの...」

「ああ、失礼しました」

 いけない思考が逸れました。


「それで、マーキュリーさんはどうして僕達の後を追ってきていたのですか?」

 たまこちゃんさんにご用ではないのでしたら一体何なのか?

 確認しておかないとですね。




「あ...」

「あ?」

 何でしょう?

 ()

 ()

 ()


 いえ、違いますね。

 そういえば『()』って漢字はアルファベットの『Y』と間違えそうですね。実際に使う機会あるんでしょうか?


「あ、貴方に...」

 ん?


「ウォーカーに、話がある」

 おやおや、僕でしたか。




「えっと、ウォーカーに話があったけど、話しかけるタイミングが分からず、とりあえず尾行したってこと?」

 “こくこく"

 たまこちゃんさんがまとめた内容に頷くマーキュリーさん。


 しかし、僕にお話とは何でしょうか?


「貴方は、何者なのか、聞きたかった」

「つまり?」

「職業とか、装備品とか...それに、私と同じ、『暗殺者』の職業だと思ったから」

「ああ。自分の成長に活かせないかと思ったのですね」

 “こくん"

 意外と向上心のある方ですね。


「しかし、僕程度では貴方のお役に立てないかと」

「....」

「ですが、折角のご縁です。このまま一緒に洞窟探検しませんか?」

「え、えと...」


 干支?

 ああ、『えっと』ですか。


 まあ、この洞窟は既に調べ尽くされたダンジョンとのことですし、旨味はないですものね。


「よろしく、お願いします...」

 あ、よかった。




 こうして僕、たまこちゃんさんにマーキュリーさんが加わっての三人パーティーが結成されました。


 ーーーーーーーーーーーーーーー


 私、マーキュリーは初めて他のプレイヤーさんに話しかけたいと思った。


 人前だと緊張して、上手く喋れない私は現実とは違うこのゲームで少しでも治せればと思ったから始めたけど、現実に近すぎて結局緊張しちゃう。


 NPCですら本物みたいだから話しかけるのに苦戦した。

 それでも何とかなったからアイテムの購入は出来るようになった。


 でも私は基本、一人で行動していた。

 やっぱり他の人が近くにいると落ち着かなくて人を避けてしまう。


 それでも一人で敵を倒せるように工夫していたら、『殺し屋』なんてニックネームがついた。


 まあ、『暗殺者』の職業で姿を見られないようにしていたから仕方ないのかもしれない。




 そんな時、私はあの人を見つけた。

 この前のバトルイベントに出てたあの人。


 名前はウォーカーだって今知った。

 イベントの時はモニター越しで見れたけど、他の人達もモニター前に集まって来たから思わずその場から離れて、名前を知る機会を逃しちゃった。


 ウォーカーの戦い方は私とは違うけど、暗殺者に通じるものがあった。


 敵に狙われながらも撹乱して隙を作ってからの一撃離脱ヒットアンドアウェイ


 特に、私はあんな風に他の人達からマークされているのに臆することなく立ち回れるのはすごいと思う。

 きっと、普段から人前に立つ人なんだろうなぁ。


 私も、ウォーカーと一緒なら変われるんじゃないかな?

 だから勇気を出して、ウォーカーの後を着けた。


 本当はすぐに話しかけたかったんだけど、緊張してかけられなかった....


 スキルまで使って姿を隠してしまうし。


 でも、ウォーカーは私を見つけてくれた。


 やっぱり、ウォーカーはすごい。


 しかも、私をパーティーに誘ってくれた。


 嬉しい。頑張ろう!


 ーーーーーーーーーーーーーーー




 アタッカーとなるマーキュリーさんが加わってくれたおかげで、洞窟内の探索は更に楽になりました。


 一先ず、盾を持つ僕が敵を惹きつける即席タンクを担当し、マーキュリーさんが遊撃。

 生き残った敵をたまこちゃんさんが追い討ち。


 パーティーとしての形が成り立ってきました。


「ウォーカー、すごい...」

「ん、そうですか?」

「流石に本職とはいかないけど、タンクの役を熟せるのは助かるよ」

「恐縮です」

 そういうことですか。


「すごいと言うなら、マーキュリーさんもですね。流石『暗殺者』かと」

「そ、そう...」

「そうだね。後ろに回り込んで一撃って、プロって感じだよね」

「あ、えっと...正面に立つのは、緊張しちゃうから..それで」

「いいじゃないですか。僕も参考にしたいですね」

「私は、ウォーカーみたいに..敵に狙われながらも立ち回れるのを参考にしたい」

 ほうほう。


 マーキュリーさん、熱心ですね。


「まあ、自分のやり方に落とし込めるように工夫していきましょう」

「う、うん..」




 さて....ここでも採掘を行いましたが、採れる鉱石の質が上がってきましたね。

 シャベルで掘っている僕は低品質よりも中品質の物の方が多く採れてきました。


 そしてたまこちゃんさんの方では高品質の鉱石が少しずつ出てきました。


 おかげでたまこちゃんさんは当初の予定よりも多く鉱石採取が行えたとほくほく顔になっています。




「?...ちょっと待って」

 進むことしばしば。

 先頭を歩いてスカウトの役もこなしてくれているマーキュリーさんが足を止めました。

 なので僕達も止まります。


 そして、降ろしていた服のフードを被りました。

 その服、フード付いていたんですね。


 “ピコンッ!"

「え?」

「へ?」

「うう、見ないで..」

 僕とたまこちゃんさんは呆けた声を出し、その反応にマーキュリーさんは恥ずかしそうにしています。


 いやですが、フードから耳が....


 あれは、猫の耳?

 全身が黒を基本としたコーデのマーキュリーさんのフードから生えた猫の耳....黒猫ですね。


「か、かわいい〜」

 ん、たまこちゃんさん?


「何それ? 何処の服飾アイテム? ってか動いているよね、触っていい?」

「こ、これは...」

「ストップですよたまこちゃんさん」

「あ、ああ、ごめんごめん」

 落ち着きましたか。


 しかし、確かに耳が動いていますね。

 おお、リアルですね。


 それに、触り心地もよさそうですね。

「あ、あの...」

「ウォーカー、近づきすぎ」

「おっと、失礼しました」

「え、えっと...“索敵"」


 マーキュリーさんが前をジッと見ています。

 これまで見せてくれたスキルで敵の動きを捉えようとしてくれている様子。

 何だか、短距離走とかクラウチングスタートのポーズみたいですね。


 猫の耳も細かに動いています。

 あのフード、『索敵』のスキルを補助してくれる代物ですかね?


「来る。数は三体、多分ケイブ・ゴブリン!」

 そう言うや否やマーキュリーさんの腕から鉤爪が出てきました。

 フードの耳と相俟って猫っぽいですね。


 はて、ケイブ・ゴブリンとは?


 僕はたまこちゃんさんを見ます。


「確か、洞窟に棲むゴブリン系モンスターの一種だね。アタシも初めてだけど、普通のゴブリンとは違うらしいよ」

「違うとは?」

「あいつら、連携してくる」

「へぇ、連携を」


 そうこう話している内に件のゴブリンが来ました。外で見かけるゴブリン達が黄緑色の肌でしたが、こちら青いですね。貧血っぽいですね。

 それに体格も少し小ぶりな気が...ゴブリンだけに小ぶり?


 『ギィッ!』

 『ギギィ!』

 『ギイィ!』

 数は3匹。しかも武器はそれぞれ弓矢、槍、剣ですか。


 こちらを見るとすぐさま纏まってきました。

 いや、陣形を組んでいますね。


 この貧血ゴブリン達は連携すると言ってましたね。

 弓矢が後方、前に槍、その間に剣。


 ということは...


「え、ウォーカー!」

 たまこちゃんさんの声がしますが確認してみましょう。僕は剣を出します。


「来い!」

 僕は“挑発"を使い注意を引きます。


 弓矢の貧血ゴブリンが射ってきました。しかも盾で防ぎ難い足下を狙って。

 僕はそれを躱します。


 すると、槍持ちが待ち構えるように進路上へと突いてきます。

 おっと、身体を翻して回避。掠りそうなので盾も使って逸らします。


 となると、

 “ギイイィッ!"

 最後の剣を持った貧血ゴブリンが剣を振りかぶりながら飛び掛かってきます。


 やっぱり。

「“ウェポン・チェンジ"」

 予想通りの動きに僕は槍を取り出し、突き出しました。

 見事剣を持った貧血ゴブリンの喉に刺さります。

 この三匹の貧血ゴブリン達はまず、弓矢で牽制し、槍で更に動きを狭め、そこを剣で決めるというもの。くらいかなと思ってましたが正解だったのでカウンターを狙うのは容易いですね。


 “ギィ?!"

 おっと、動揺している暇はないですよ。

 僕は倒れた貧血ゴブリンの剣を拾い上げ、槍持ち目掛けてぶん投げます。


 剣がくるくると回りながら槍持ちの貧血ゴブリンに命中します。

 まだ倒れてはいませんが、動きが止まれば十分。


「“俊突"っ!」

 後は突くのですから。


 仲間が瞬く間にやられて動揺する弓矢の貧血ゴブリンですが、落ち着きを取り戻し僕目掛けて弓を構えます。


 けど、遅いですよ。


 後ろにはマーキュリーさんがいるのですから。


 マーキュリーさんの鉤爪に喉を切られる貧血ゴブリン。

 これで全滅です。


「ウォーカー、いきなり走り出さないでよ」

「すいませんたまこちゃんさん。武器の組み合わせから何となく連携の流れが読めましたので」

「もう...」


 さて、この貧血ゴブリンのドロップアイテムは?


 ◆◆◆◆◆◆◆


『ゴブリンの剣』

『ゴブリンの槍』

『ゴブリンの弓矢』


 を入手しました。


 ◆◆◆◆◆◆◆


 ゴブリンの武器シリーズですか。

 やはり、どれもDurabilityが無いからすぐ壊れる代物。


 どう使いましょうかね?






 この後も何度か貧血ゴブリンのチームと交戦しましたが、連携戦術自体は1チームにつき1パターンしかないようなので然程難しい相手ではないですね。

 1匹でも倒せば連携が崩れて後は単独行動になりがちなので倒すのは容易でした。


 ところで、何度か倒した貧血ゴブリンの武器を拾っては投げつけることを繰り返していたら、スキル『スティール』を獲得しました。


 どうやら相手が持つ道具を奪えるスキルのようです。

 試しに使うと離れていたはずの貧血ゴブリンから弓矢を獲得してしまいました。

 丸腰となった貧血ゴブリンは更に倒しやすかったです。




 そして進むこと更に。

 ようやく、僕達は洞窟の最奥に辿り着いたのでした。

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