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真面目な僕は遊び人になりました  作者: 樫原 翔
ゲームをさらに楽しみましょう。
26/62

シャベルで戦うのってロマンですよね?

『穴掘りの穴蔵』という名前は、鉱石を採掘する者が後を絶たず、あちこちに穴が掘られて洞窟と化してしまったからついたのだろうとはたまこちゃんさん談。


 現に今も彼女はツルハシを振るって壁に穴を空けています。

 僕は一応、周囲を警戒すると共に購入しておいたシャベルで穴を掘っています。


 ざくりと地面に先端が刺さる感じが意外と小気味良いですね。


 あ、何か出ましたね。


 ◆◆◆◆◆◆◆


『鉄鉱石(低品質)』


 を入手しました。


 ◆◆◆◆◆◆◆


 おお、初採掘です。


 ◆◆◆◆◆◆◆


 スキル『穴掘り』を獲得しました。


 ◆◆◆◆◆◆◆


 おお、同時にスキルもです。




 たまこちゃんさんの方は....


「お!」

「ん、あ、ウォーカーも手に入ったの。やったじゃん」

「ええ、ですがたまこちゃんさんの方がすごいですね...」

「そりゃ、年季が違うんだから」

 胸を張るたまこちゃんさん。確かにそうでしたね。


 彼女の傍には石の山が積まれています。


「どんなのが手に入りました?」

「そうね、今確認するわ」

 たまこちゃんさんが手を伸ばすと石の山が消えました。[リュック]に入ったのですね。


「ええと、鉄鉱石の低品質が30、中品質が15....後は石炭の低品質の10って所ね」

「大量ですね」

「でも低品質がほとんどじゃね」

 そういえば、僕が採掘した鉄鉱石も『低品質』と表示されてましたね。


 聞いてみると、品質の低い素材では性能の低い物しか作れないのだとか。

 一応、『精錬』という生産職のスキルを使えば品質を上げることは出来るけど、一つ上の品質にするためにはその何倍ものの量の素材を消費するからコスパで考えると微妙とのこと。


 そういえば、こんな風に素材アイテムの品質が表示されるのって初めてですね?

 どうして見えるのでしょう?




「ああ、それはアタシがパーティーにいるからだね」

 たまこちゃんさんが疑問に答えてくれました。

 生産職の職業を持つと、その職業で作るアイテムに必要な素材の品質を判定出来るとのこと。その恩恵はパーティーを組んでいる時にも賜れるらしいです(たまこちゃんさんの考えでは生産職のプレイヤーが判定してから入手したという設定なのではないかとのこと)。


 例えば、僕が個人で見ると...


 ■■■■■■■■■■


『鉄鉱石』


[解説]

 素材アイテム。鉄の原料となる。鉄製の武器や防具の素材として利用される。


 ■■■■■■■■■■


 となりますが、たまこちゃんさんが見ますと...


 ■■■■■■■■■■


『鉄鉱石(低品質)』


[解説]

 素材アイテム。鉄の原料となる。鉄製の武器や防具の素材として利用されるが、元の品質が低いため、性能はあまり期待出来ない。


 ■■■■■■■■■■


 と、いう風に表示されます。


 ちなみに、たまこちゃんさんが分かるのは『鍛治士』として必要な金属系アイテムをはじめ武器や防具の素材となるもので、まるたちゃんさんだと薬草とかの薬品系アイテムを作るのに使用される素材とのこと。


 なるほど、この品質チェックの技能があるからこそ、生産職は蔑ろにされることはないのでしょうね。

 モンスターとの戦闘が必須となるこのゲームにおいて、強力な武器は必要となり、武器を作るためには質の良い素材が必要となる。そのためには生産職のプレイヤーも必要となると。


 それは中々に興味深いですね。


 品質の判定は『鑑定士』などの一部のロール職ならスキルとして有するようですが、僕の『遊び人』でも獲得出来るのでしょうか?

 というか、どうやれば獲得出来るのでしょうか?


 調べてみないとですね。




 なんて、考えていたらバサバサと羽音が聞こえてきます。

 洞窟の奥から聞こえてきたのでそちらを見ると音の正体はすぐ分かりました。


 コウモリです。

 見た目はTVのネイチャー系の番組で見るようなコウモリです。ただしサイズは普通のよりは多分大きいですね。尤も、本物を見た訳ではないので印象としてですが。


「ウォーカー、気をつけて! そいつらアタシ達が採った石狙ってる!」

 たまこちゃんさんが慌てて武器(ハンマー)を出しながら説明してくれました。


 “ガアァーンッ!"

 そしてそれを聞いた僕はシャベルを振り回してコウモリを打ち抜きました。

 先端を踏み、梃子の原理で上がった柄からシャベルを掴み取り、そのまま殴りました。


「え?」

 たまこちゃんさんの声が耳に入ります。


 コウモリがキイキイと騒ぎ、慌てて姿勢を直しています。

 けど、そんな時間はあげません。

 僕は踏み込み、今度はシャベルを突き出します。柄尻が三角形(底辺に当たる部分と柄だけならT字になりますね)になっている分、普通に棒を持って突き刺すよりも端を掴んで突き出せるからリーチが稼げます。

 先端の刃は切れませんので当たっても大きなダメージにはなりませんが。


 ならば更に叩けばいいだけです。


 突きで怯んだコウモリをまた振り回したシャベルで打ち抜きます。

 お、結構なダメージになりましたかね?

 なんかフラフラしています。




 トドメにシャベルを振り下ろします。

 先端の切れない刃の部分を縦にして。


 あ、ようやく消えました。

 落ちている牙を拾います。


 ◆◆◆◆◆◆◆


金喰蝙蝠(かなくいこうもり)の牙』×1


 を入手しました。


 ◆◆◆◆◆◆◆


 へぇ、名前が漢字だらけのモンスターだったんですね。

 なんか妖怪っぽい。


 ん?

 たまこちゃんさん、お口が開きっぱなしですが...


「何でシャベル?!」

「はい?」

「いや、いきなりシャベルで殴り出して、どうしたのウォーカー?」

 ああ、そのことですか。


 あの時は咄嗟でしたからね。


「いやだって、折角採った石を取られたくなかったですし...」

「低品質の鉄鉱石だよ! 採り放題のだよ!」

「いやですけど、記念ですし..」

「だからって咄嗟にシャベルで殴るって...」

「ああ、それは格好いいかなって思って..」

「はあ!」


 あれ?

 たまこちゃんさんは格好いいと思いませんかね?

 こう、日用品をいざという時に武器としてスタイリッシュに使い熟すのって映画やアニメみたいで格好いいと思ったのですが。


「ごめん。その感性は分からない」

「そうですか...」

 残念です。


「ところでウォーカー..」

「ん?」

「その、牙なんだけど...」

 ああ。


 僕は[リュック]から先程のコウモリの牙を取り出します。


「どうぞ」

「え、いいの?」

「ええ、たまこちゃんさんには武器を用意していただいていますから」

「ありがとう! この牙は品質の良いインゴットになるの!」

「インゴット?」

「ええと、金属の塊」

「ああ、武器や防具のいい材料になるのですね」

「そうなの!」

 たまこちゃんさん、嬉しそうですね。


 詳しく聞くと、あのコウモリは金属系の素材アイテムを一定量又は一定品質のものを採取すると時折何処からともなく出現して奪おうとするとのこと。

 モンスターの解説としてはどうやら金属を食べる種らしいので、プレイヤーが集めてくれた金属(エサ)を横取りするのだとか。


 ・・・・・


 金属の鉱石って美味しいのですかね?


 とにかく、それで体内に蓄積された金属は牙という形で精錬されるらしいのです。

 確かに改めて見ると中々にメタリックな輝きをする牙でしたね。

 で、それを改めて加工すると最低でも中品質以上のインゴットに加工出来るとのこと(ただし、どんな金属かはインゴットになってからでないと分からないとのことでした)。


 この洞窟は駆け出しの生産職にも利用しやすい仕様のようで、大量の素材を集め易いけど、その代わりという感じで品質はあまり良くない模様。


 たまこちゃんさんは生産職としては中々の腕前らしいですが、個人での採取となると戦闘面からここが丁度いいとのことです。

 だから品質のいい素材が手に入るコウモリの牙はなるべく欲しいと。




「よし、それじゃもうちょっと奥に行こっか!」

「ええ、行きましょう」

 思わぬ収穫に上機嫌なたまこちゃんさんと共に僕は更に洞窟へ進みます。




 あれから僕も何度か採掘活動をしていきました。

 おかげでようやく中品質の鉄鉱石を掘り出せました。


 まあ、またコウモリも出てきました。しかも三匹。


「こ、のぉ!」

 ハンマーを振り回して近づかせないたまこちゃんさん。

 この洞窟はそこそこ広いので武器を振り回すことは然程難しくはないのが幸いです。


 しかし、こう暗いと草原の時のようにサポートするのは難しいですね。

『挑発』で引きつけた二匹のコウモリを相手していますが、やり難いです。


 時間差で飛んで来るためにカウンターで倒すのも出来ませんし、時折超音波を飛ばしてくるんですよねこのコウモリ達。

 ダメージは大したことがないんですけど、感覚を狂わされる感じで攻撃が外されます。

 今もシャベルでのフルスイングが外れてしまいました。

 最初のように格好良くはいきませんね。


 おかげで結果時間がかかりました。




 そして攻防を繰り返すこと更に数回。

 シャベルによる攻撃が決まり、二匹目のコウモリも倒せました。


 あと一匹。

 あ、丁度たまこちゃんさんのハンマーが撃突して倒れました。




 と、安堵しましたが、直後にもう一匹、飛んで来ました。

 時間差で来ましたか。


 牙を僕に向けて噛みつこうとします。

 ああ、ダメージを覚悟しないとですね。




 なんて考えていましたが、実際は違いました。

 だってこのコウモリ、目の前で泡吹いて倒れたのですから。


 これは、毒状態?


 そして、今コウモリが飛んで来た方向は僕達が通った後の通路。




 ああ、そういうことですか。


「すいません、助かりました」

 まずはお礼を言いましょう。


「え、ウォーカー、アタシじゃないよ」

「ええ、それは存じています」

 僕がお礼を言うのは...


 えっと、

「改めまして、お礼を言わせてください」

 ここかな?


 誰もいないスペースにしか見えません。


『っ?!』

 けど、当たりです。


 グニャグニャと、そのスペースの空間が揺らぎます。

 そして出てきます。


「な、何!?」

 たまこちゃんさんはビックリしています。


 あれ、気づいていなかったのかな?




「ど、どう..して...」

 おや、こちらもですか。


 姿を見せてくれたこちらの女の子。

 全身黒尽くめで格好は何て言うのでしょう?

 西洋版の忍者?

 そう、そんな感じでいいでしょうか。


 こちらの忍者さんも困惑した様子。

 見えなくなっているのに気づかれたから驚いているのでしょうね。


 ですが、別に違和感とかあった訳じゃないんですよね。


 だから正直に言って安心させてあげましょう。


「何となくです」

 と。


 この時、忍者さんとたまこちゃんさんは揃って口をあんぐりとさせていました。


 僕、可笑しなこと言いましたかね?

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― 新着の感想 ―
[良い点] いいよねシャベル掘ってよし叩いてよし刺してよし軍用とかなら横で斬ってよしまさに万能
[一言] な ん と な く
[一言] 可笑しな事を言ってるよ
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