バトルイベント〜予選③ フラグを回収してしまいました。〜
ジャンヌさんと同じグループですか...
悟空君から敵を取ってほしいと言われましたが、気乗りしませんね。
というか、するつもりはないですね。
『予選開始一分前!』
とにかく、まずは生き残ることを考えましょうか。
武器はソードブレイカー。
そして少しでも動き易くしようと思って出さなかったこちらも。
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『黒鉄のバックラー』
[性能]
VIT:+20
Durability:30
[解説]
盾の一種。鋼鉄よりも強度に優れた金属『黒鉄』製のバックラー。小ぶりな盾であるため防御範囲は狭いが強度に優れているので軽装の戦士が好んで使用する。
[製作者]
たまこちゃん(P)
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そして、防護マスクも。
お、皆さんこちらに注目していますね。
まあ、あんな風に煙玉を投げていたのを見たら警戒しますよね。
さて、それでは...
『予選、開始!』
早速プレイヤーが一人迫ってきました。
手に持っているのはナイフ。僕のものとは違うスタンダードなものですが、強そうです。
なるほど、スピード重視ということでしょうか。
「ウェポン・チェンジ」
「遅い!」
盾を前にするように半身に構えた僕ですが、ナイフ使いのプレイヤーが切り掛かってくるのが速かったです。
前に突き出した盾のおかげで喰らわずにすんでいますが、このままではまずいです。
相手は僕が煙玉を投げる隙を突こうとしているのでしょう。
だから僕は手に持っている短剣で“スラッシュ"の先制です。
「がっ!」
驚くナイフ使いのプレイヤーさん。
僕はすかさず、逆に隙だらけとなったその腹部に蹴りを入れます。
まあ、足裏で押すようなもので、ダメージはほとんどないですが。
ですが、蹴り押されたプレイヤーに巻き込まれて遅れて仕掛けようとしたプレイヤーも数人将棋倒しにすることが出来ました。
「“ウェポン・チェンジ"」
今度こそ僕は煙玉を出して放り投げて煙幕を展開するのです。
さて、ナイフ使いの方は驚いていましたね。
それは上々。
だってそれを狙っていたのですから。
これはガイさんとの特訓で気づけたのですが、このゲームにおけるアクティブスキルの発動は基本、その名前を発音する所謂音声入力というものでした。
ですが、ここで僕は疑問も感じました。
だって、名前を言わずともスキルを使えることがあるのですから。
僕は『スローイング』や『挑発』のスキルを名前を言わずに使ったことがあります。
つまり、このゲームにおけるスキルの発動は本当は音声入力ではなくいわば思考入力ということ。
だからスキル名を口にしても発動させずに済むのです。
そして早速引っかかってくれた方が一人。
一人しか引っかからなかったというよりは一人だけで引っかかってくれてよかったです。
流石に三人以上も迫って来たらまずい、って来た!
煙幕が拡がる前にと駆け込んできたと思しき三人のプレイヤーが思う思うに剣やら槍やらを振り抜きます。
それらは全て僕の頭上を通り過ぎ、勢いそのままに他のプレイヤーに当たりました。
「何すんだよ!」
「待て、わざとじゃ..」
「一体どこ...っていた!」
あ、二人が乱闘を始めましたがもう一人が気づきました。
なのですかさず“ペイン・スティング"です。
「ひがっ!」
比嘉? いや悲鳴ですか。変な悲鳴ですね。
短剣術のアーツスキル『ペイン・スティング』
威力は先に獲得出来る『スラッシュ』より劣りますが、その代わり便利な効果があります。
それは刺した相手に一瞬だけ硬直状態を齎すというもの。概要としては痛覚を強く刺激することで動きを止めるとかどうとか。
本来ならそこから続けて他の攻撃を放つのがいいのでしょうが(あ、『ペイン・スティング』を続けてやると硬直効果はなくなってしまうので一方的な連続攻撃は基本出来ません)、僕は逃げることに使います。
ちなみに逃げ方はさっきの攻撃を躱せたのにも役だった四つん這いスタイル。
用心して身を低くしておいたのが功を奏しました。
なのでこのまま撤退です。
“サササッ!"
・・・・・
ふむ、これではゴキ○リと言われかねませんね。蜘蛛柄服のヒーローの○ーカーさんはなんか格好良かったのですが...
やめましょう。
っと、矢が飛んで来ました。
盾で防御。危ない危ない。
煙玉追加。さっきはリンゴなので今度はベリーで。
走ります。
おっと、待ち構えているように大剣を振りかぶる方が一人。
待ち構えていたというよりは偶然ですかね。
だからスライディングして下を掻い潜りましょう。
成功。
おお、アクション映画とかである発車寸前の電車に乗った気分。
現実では出来ない行為なので楽しくなりますね。
あ、でも、小さい子が見て真似したら大変ですね。
なるべく控えましょうかな...と、また一人来ました。
身体を前に倒して身を低くした槍使いさん。
スライディングしていた僕を薙ぎ払う算段ですかね?
だったら今度は上に行きましょう。
槍の間合いに入る前に何とかスライディングからランニングのフォームへ移行します。
そして槍使いさんが振るった槍に対してジャンプ、
さらにそのまま槍使いさんを台にしての馬跳び、
そして着地。
回避成功です。
逃げる前に煙玉の置土産も。
楽しませてもらったのでリンゴとベリーの二種をどうぞ。
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「うわ、ウォーカー身軽!」
「ほんとう...」
おれとルナ、そして先パイがお世話になっているというたまことまるたの生産職コンビと一緒に先パイの勇姿を見ていた。
この二人が驚くのも分かる。
おれだってあんなに軽快な動きを見せる先パイは初めてなんだから。
「あの、悟空さん。ウォーカーさんって何かスポーツをしていたんですか?」
「ん、いや、特にやってないって言ってたな」
「というかあの人、あまりプライベートのことを話さないんだよね」
「そうなの?」
まるたの質問におれが答えるとルナも続き、たまこが意外そうな顔をする。
確かに先パイは愛想は悪くないけど、意外とプライベートは一人で過ごすことも多くて人付き合いは淡白な所があるんだよな。
まあ、飲み会とか食い物絡みだと来てくれるけど。
「あ、また煙玉」
「先パイ、これじゃ先パイの勇姿が見えないよ〜」
ルナの呟き通り、この広場で投影されている画面の一つでウォーカー先パイがまた煙幕を展開していた。でもこれじゃ先パイのかっこいい所見れないんだよな〜。
っていうか...
「煙玉何個持ってるんだ?」
「たしかに、まるちゃん、どれくらい作ってあげたの?」
「えと、材料の幾つかはウォーカーさんが用意してくれてだから...」
たまこの質問にまるたが指折りに数えていく。
どんどん増えていくその数字におれとルナは何も言えなくなった。
その数は...
先パイ、テロリスト志望でしたっけ?
「でも、それだけ作るのも大変だったんじゃないの、まるたちゃん」
「いえ、ルナさん。調合についてはウォーカーさんも手伝ってくれたので..」
「そう...」
「でもちょっと心配だったわよ。いつもと違ってかなり張り切っていたしさ」
「た、たまちゃん、しぃー!」
この反応、まさか....
「なあ、まるた」
「は、はい」
「もしかして...見た?」
「〜〜〜〜〜っ!?........はい」
うわ、顔を真っ赤。やっぱりか。
その反応にルナも察した。たまこの方は知らないようで首を傾げていた。
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さて、煙玉も結構使いました。
あと半分くらいですかね。
あ、魔法使いの人が杖を構えています。
狙いは他の...ジャンヌさん。
彼女は戦士職の方の相手をしていて気づいていないご様子。
ならば、スローイングダガーを“スローイング"!
よし、腕に刺さって狙いが外れました。
ダメ押しでもう一本。
そして撤退。
背中を向けて走っていると、誰かの悲鳴が聞こえますが、関係ありませんね。
隙を見せた誰かがやられた。
ただそれだけなのですから。
「もらった!」
「あげませんよ」
斧を構えたプレイヤー(女性)が振り下ろしてきました。
というか、その格好ってビキニアーマーというやつですか?
男のロマンだと昔友人が熱弁していましたが、なるほど、扇情的過ぎて刺激があり過ぎますね。
でも、防具としての実用性が無いのでは?
それに、冬だと寒くて堪らない気もしますが。
とりあえず僕は斧を振り抜いてくる彼女の攻撃が当たらないように急ブレーキ。
そして振り抜いて出来た隙を突くために前へ行きます。
そしてガラ空きのお腹にナイフを刺します。
「つぅ〜っ!」
おっと、まだ倒れませんか。斧を振るってくるので回避です。
そして逃げます。
「な、最後までたたかぇ..」
何か言おうとしていますが、その声は途切れます。
まったく、周りは敵だらけなのにそんな騒いでいる余裕なんてないでしょうが。
それに、『最後まで戦え』?
最後まで戦うには生き残ることを優先しなければでしょうに。
自分の発言と自分の行動がマッチしないとは、変わったプレイヤーさんですね。
「“流星斬"っ!」
おお、ジャンヌさん。何ですかその技は?
振った剣から光だか衝撃波だかが出て来ました。
それで何人か纏めて攻撃を受けています。
格好いいですね...
いけないいけない。無いものねだりは今はしている場合ではないですね。
「“スラッシュ"!」
僕は僕で、持っている手札で今できることをしましょう。
煙玉を投げ、一撃を与えては逃げ、交戦中の所に嫌がらせを仕掛けと繰り返している内に、辺りは静かになりました。
そして、気づけばフィールドにいるのは僕とジャンヌさんだけでした。
「おやおや、僕は運が良い」
「謙遜しないでくれ。貴方の実力だ」
「ありがとうございます」
「すまないが、お互いに一度アイテムで回復とはいかないか?」
「構いませんよ。むしろ助かりますし」
お言葉に甘えて僕は支給されたポーションでHPとMPを回復します。
ジャンヌさんも僕を見て同様に回復しています。
「改めて、自己紹介させてもらおう。私はジャンヌ=ダルク。職業は『聖騎士』だ」
「ではこちらも改めまして。ウォーカーといいます。職業は『遊び人』です」
聖騎士ですか...確か戦士職でも攻防に長けた上位職でしたか。
「『遊び人』?」
「はい」
「ロール職の?」
「その通りです」
三度目ですね。このやりとり。
本当に『遊び人』は珍しいのですね。
あ、同じこと思っちゃった。
「手加減はしないぞ」
「それはむしろ嬉しいですね。僕如きに手を抜かないでくれるのは」
「本気で言っているなら今一度、自分の実力を確認した方がいいぞ」
「十分に把握しているつもりですが...」
何でしょう?
何やら過大評価されていますね。
まあ、やることは変わりません。
『戦乙女のジャンヌ=ダルク』ですか。
ガイさんとは稽古という形で軽く打ち合いをする程度でしたが、その実力の高さを痛感させられました。
本気でやるとしたら、勝てる可能性は僅かでしょうね。
そしてジャンヌさん。実力は少なく見積もってもガイさんと同等。
いや、今の僕では相性的には格上と考えていいですね。
「ではいくぞ」
「よろしくお願いします」
ジャンヌさんは剣を、僕は短剣を構え、残り僅かな時間となったこの予選で一対一をすることとなりました。




