チュートリアルです。
「ほう....」
僕の視界には先程までいた自分の住まいではなく、現実ではあり得ない不思議な空間が広がっていました。
時折青や赤に光るポリゴンのようなものが敷き詰められた壁、いや壁というのも少し語弊がありますね。
なにせ地平線の彼方まで終わりはなく続いており、視界に入る限り、足下に広がるポリゴンのようなものと同じ輝きが見えているだけですから。
「おや?」
いきなり、目の前に変な板が出ましたね。
アクリル板のような半透明のものかと思いましたら、いきなり文章が表示されました。
これはどうやらチュートリアルのテキストのようですね。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ようこそ“NOVA"の世界へ!
この世界に来た貴方にしていただくこと、それはそう、“楽しむ"ことただ一つ。
これから、このゲームを楽しむための説明を始めさせていただきます。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
“楽しむ"ですか....
娯楽のためであるゲームでありながら“楽しむ"ことをアピールしますか...
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
それでは、あなたが“NOVA"の世界を楽しむため、あなたのアバターを設定しましょう。
まずはあなたの名前を決めましょう!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「名前ですか?」
流石に本名そのままはあまりよくないですよね。
とは言っても全くデタラメにつけるのも却って難しいですし...
あ、そうだ。
僕の本名『進藤 歩』ですから...
『歩』を英語で...
「よし」
僕は入力欄に『ウォーカー』と入れました。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
それでは続きまして、あなたがこの世界で生きるための職業を決めましょう!
モンスターと戦うもよし、アイテムを作るもよし、やりたいことに応じて職業を選びましょう。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
次の説明文が表れました。
「なるほど、どれを特に楽しむかを決めるために...」
ふむふむ、職業ですか...
次いで現れたカーソルの【職業】の文字に触れると、初期設定で選べる職業の一覧が表れました。
・・・・・
なるほど、習熟度に応じて上位の職業へとクラスアップしていくのですね。
◆◆◆◆◆◆◆
“ファイター"
戦士系初級職。武器を手に前線で戦う勇敢な者が担う職業。
物理系のステータスを中心に成長します。
使用する武器に応じて習得するスキルが生まれ、スキルの成長具合に応じてクラスアップ出来る上位職が決定します。
例:“剣"なら“ソードマン"、“槍"なら“ランサー"
◆◆◆◆◆◆◆
“メイジ"
魔法系初級職。知識を探求し、勤勉な者が選ぶ職業。
魔法系のステータスを中心に成長します。
使用する魔法の系統に応じて魔法スキルが成長し、スキルの成長具合に応じてクラスアップ出来る上位職が決定します。
例:“回復属性"なら“ヒーラー"、“炎属性"なら“アードゥル"
◆◆◆◆◆◆◆
“アプレンティス"
生産系初級職。己の研鑽に費やし匠へと至ろうとする者がとる職業。
戦闘にはあまり向かない代わりにアイテム製作に秀でた能力を持ちます。
生産するアイテムの系統によりクラスアップ出来る上位職が決定します。
例:“金属系"なら“鍛治師"、“薬品系"なら“薬師"
◆◆◆◆◆◆◆
この三つから選ぶのが基本ですか....
おや?
こんなものがあるのですね。
◆◆◆◆◆◆◆
“ロール職"
こちらは他の三系統の職業と異なります。
育成次第で多彩な成長の可能性を有するということは基本的にないですが、職業ごとにその職業でしか得られない専用スキルが多数あり、成長するにつれて上位職へとクラスチェンジしその才能を伸ばしていくという専門的な職業です。
◆◆◆◆◆◆◆
僕はロール職のカーソルに触れてみました。
すると、そこから幾つかの職業が表示されました。
なるほど、これがロール職の一覧ですか。
なになに....
アイテムの機能やモンスターのパラメータを判別出来る“鑑定士"
アイテムの売買等で補正がかかる“丁稚"
モンスターを使役する“テイマー"
なるほど、なるほど。
面白そうですが、基本ステータスは低めとなってますね。
悩みますね.....
「ん?」
僕はその時、一つの職業の名前が目につき、それに触れてみました。
◆◆◆◆◆◆◆
“遊び人"
遊ぶこと、ひいては自らの享楽のために人生を捧げた者がなる職業。
興味があれば何にでも手を出すことが出来るため、他の職業のスキルも習得出来る場合もあります。
“遊び人"は上位職がなく、クラスアップによる恩恵が得られないのが欠点。
◆◆◆◆◆◆◆
“遊び人"ですか....
僕はこのゲームを遊ぶ訳です。
ならば、選ぶべきは...
僕は職業を決めました。
◆◆◆◆◆◆◆
この職業でいいですか?
【YES】 【NO】
◆◆◆◆◆◆◆
「もちろんYESで」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
お疲れ様でした。
それでは、“NOVA"の世界を楽しんでください!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
そう表示されたメッセージが消えると共に眼前が白く輝き思わず目が眩みそうになりました。
そして次に僕が見たのは不思議な町でした。