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真面目な僕は遊び人になりました  作者: 樫原 翔
始めてみました。
15/61

部長と焼き鳥です。デザートを忘れてしまいました。

書くペースが遅くなり、申し訳ありません。とりあえず、週に一回くらいのペースで更新していけるように努力します。

「先パイ! イベントに参加するんですよね?」

「ええ、僕もバトルイベントに参加登録しましたよ猿渡君」


 勤務後半を過ぎ、余裕が出来たので僕は猿渡君にイベント参加を表明しました。


「先パイ、そういえばアバターの名前は何なんですか?」

 そういえば教えてませんでしたね。

 とは言っても、教えていいのでしょうか?


 あ、そういえば...

「猿渡君、これを」

 僕は机に入れておいた紙束を渡しておきます。


「ん? 何ですかこれ?」

「猿渡君、明日は担当案件のプレゼンがありましたよね? 用意した資料に加えるといいですよ」

「え、でも、おれ資料は用意しましたよ。まさか、なんか不備が...」

 顔を青くする猿渡君。急いで訂正しないと。


「不備はないですよ。ただ、猿渡君が用意した資料は案件に直接関係するカテゴリのデータが主体でしたから、こちらの全体図のデータも用意したんですよ」

「え、と...ん?」

 ああ、分かりづらいですね。



「全体図のデータからも案件のカテゴリの比重が重いですから、案件の重要性を更に印象付けた方が、その後の取引にも追い風になると思ったんですよ。ですので、よければ使ってください」

「そういうことか...先パイ、ありがとうございます!」

 理解してくれた猿渡君。よかった、あまり上手く説明出来なかったので少し不安でしたが杞憂ですね。


「それじゃ、プレゼンのデータにこの資料のデータを加えるのは頑張ってくださいね」

「うえぇ、先パ〜イ、手伝ってくれないんですか?」

「・・・頑張ってください」

「そんな〜」

 あらあら、泣きそうな顔をしていますね。


 仕方ないですね...僕も資料を渡すのが遅くなってしまった非がありますからね。


「じゃあ少しだけてつ「こら、猿渡!」

 おや、言葉を遮られましたね。


「うげ、戌井(いぬい)!」

「何が“うげ"よ、何進藤先輩を巻き込もうとしてんのよ!」

「いや、でもよ、明日の資料を修正するのは時間的に...」

 猿渡君、戌井さんに言い返そうとしてますけど、萎縮しちゃってますね。


「何言ってんのよ! プレゼン製作はあんたが担当するって言ったんでしょう! 情けないこと言う暇があるならもっと念入りに作っておきなさいよ!」

 案の定、戌井さんが更に畳み掛けていますね。


「いやそう言うけど、そもそもお前がいまだにパソコン音痴なのも原因だからな!」

 お、そう返しますか猿渡君。


 確かに戌井さんはパソコン操作は不慣れですからね。

 まあその代わり、プレゼンの説明なんかは上手いんですけどね。




「う...うるさい! だったらわたしが手伝えば文句ないでしょ!」

「何でそうなるんだよ?」

「わたしだって明日の案件の担当なんだから当然でしょ! ほら、無駄口叩く暇があったらやるわよ!」


 おやおや戌井さん、猿渡君を手伝ってあげるのですね。


「いや〜仲良いね二人とも」

「あ、部長」

 いつの間に?

 ですが、そのお言葉には僕も賛同します。


「「どこがですか?」」

 実際、こんな風に息ピッタリですし。


「部長、心外です! こんな情けない奴と仲良いだなんて」

「お前、それはおれのセリフだよ!」

「なによ!」

「んだよ!」


 睨み合いを始める猿渡君と戌井さん。

 二人が入社してからすっかり恒例の展開ですね。


 とは言え、放置はまずいですね。




 こほん。

「猿渡君、戌井さん」

 静かにはっきりと二人に声をかけましょう。


「「は、はい」」

 よかった。聞こえてくれて。




「ここは何処ですか?」

「「か、会社です!」」


「何をする場所ですか?」

「し、仕事に務める場所です!」

「ろ、労働に勤しむ場所です!」


 僕の質問に、二人は答えてくれます。


 さて、最後の質問にしましょうか。




「二人は今、それをしていますか?」

「「し、してません!」」


 慌てた様子で二人は答えてくれました。

 後はもう言う必要はないですね。


 二人は作業に取り掛かりました。

 しかし、何であんな風に怖がるのでしょうね?

 普通に問い掛けただけですのに。


「ははは、凄いね進藤くん」

「いえ、大したことは何も」

 いや、本当に問い掛けただけなんですが。


「そうだ、進藤くん、悪いんだけど終わったら少し時間いいかい?」

「はい?」




 ーーーーーーーーーーーーーーー


 おれ、猿渡(さわたり) 陽彦(はるひこ)は今、パソコンと睨めっこしている。


 尊敬する進藤先パイがくれたデータを明日のプレゼン資料に加えて編集し直しているからだ。


 でも、

「うう、部長ずるいよ〜先パイを連れて行くなんて」

「文句を言う暇があるなら手を動かしなさい」

「そういうお前はいつになったらブラインドタッチをものにするんだよ?」


 ぼやくおれの隣で画面とキーボードを交互に見ながら作業している戌井(いぬい) 月奈(つきな)におれはすかさずツッコミを入れてやった。

 入社して間もない頃は一本指でキーボード打ってたから大分ましになってはいるけどやっぱりミスは多いからおれがフォローしてやることになる。


 ったく、なんなんだよこいつは?


 昔からの腐れ縁だけどよ...


「あ!」

「ちょ、何よ?」

「先パイにゲームのこと聞こうとしたのにはぐらかされた!」

「仕事しろ!」


 ーーーーーーーーーーーーーーー




 ーーーーーーーーーーーーーーー


「いや〜悪いね進藤くん」

「はい?」

 終業後、僕と部長は焼き鳥屋さんのカウンター席に座っていました。


 お酒と焼き鳥を相棒にしばし世間話をしていたら何故か部長が申し訳なさそうにしていました。


「ほら、猿渡くんと戌井くんの担当案件。フォローするのはギリギリまで待ってって僕が言ったじゃない」


 ああ、猿渡君に渡したデータの件ですか。


「いえ、たまたまですから」


 ええ、猿渡君の作業の様子は自分の仕事の合間に見かけたから気になりましたが、部長からのお達しで露骨に見る訳にはいなかったのでそれを何度か見て最近になって全体像が分かりましたね。


 その後に戌井さんとの打ち合わせの様子を耳にしたので一先ず使えればと思い必要になりそうなデータを一通り用意したのが一昨日で、後は昨日に拝見させてもらったプレゼン資料から不要なデータを抜き取るだけでした。

 最後に残ったのを猿渡君に渡したから、ギリギリまで待ったではなく単に遅くなってしまっただけなんですよね。




 と、部長に話したのですが...

「いや、気づかれないように動いている時点で十分過ぎるから。本当にありがとうね」

「え、と、はい」

 よく分かりませんが、とにかく食べますかね。


「すいません、砂肝に皮、モモもお願いします」

 と、既に串がなかったので追加です。


 とりあえず、コップに残ったお酒を飲みましょう。


 うん、辛さがいいですね。

 でも、焼き鳥の塩やタレの濃さにお酒も辛口なのは少し飽きますね。


「すいません、レモンサワーをお願いします」

 とりあえずお酒でもいいから甘さが欲しいです。


 帰りにアイスも買いましょう。




「ところで、進藤くん的に見てどう?」

「どう、とは?」

「そりゃ、猿渡くんと戌井くんの二人だよ。あ、仕事の出来じゃなくて、ね」




 ・・・・・

「部長、出歯亀紛いの行為は奥さんに怒られますよ」

「大丈夫、うちのカミさんも知りたがっているから」




 ・・・・・

「仲は変わらずいいと思いますが」

「やっぱりそう思うよね。部署のみんなも気にしているからね」

「まあ、確かに」

「実際、あの二人の腐れ縁は少女漫画みたいだしさ」

「いや、どちらかというと少年漫画のラブコメみたいだと大町さんが言ってましたね」




 あれは、入社した年にあった飲み会で酔った二人が話してくれたことですね。


 生まれはお隣さんの幼馴染み。それから幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、果てには就職先まで同じだというからあの時は飲み会に参加した皆さんが驚いていましたね。


「その話が出てから、戌井さん狙いだった男性の方々はすっかり凹んでいましたね」

「ああ、逆に女性陣はそんな関係に大盛り上がりだったね」


 尤も、それで囃し立てたら照れて機嫌を悪くしてしまったので、以降は暗黙の了解ということで皆さん眺めるに留めていますね。


 何故、『異性の幼馴染み』というものにそれほどまでに皆さんが盛り上がるのか、僕個人としてはよく分かりませんが、害がない以上静観するだけです。




「んじゃあ、仕事の話にいこうか?」

「何ですか?」

「実はね、猿渡くんと戌井くん、あの二人には後々、新人の教育担当を任せていこうと思うんだけど、進藤くん的にはどう?」


 新人の指導役ですか....


「そうですね、担当させる新人の傾向としては、猿渡君の方は誰とでもフランクに接していける分、プレッシャーに弱い方やマイペースな方なんが来た際にいいかもしれません。逆に戌井さんの方は公私混同は基本しない主義ですから、仕事に対して意欲的な方、行動力のある方なんかだといいかと思います」

「ふむ、ちなみに逆だとどうなるかな?」


 逆の場合、ですか...


「猿渡君は要領がいい分、抜く所は抜ける人ですが、意欲的な新人だと却って反感を買いかねないかと。戌井さんは行動的な分、気の弱い人だとプレッシャーを感じてしまって気が滅入ってしまうのではないでしょうか?」


 まあ、結局の所、これは僕個人が出す二人の見解でしかないのですが。


 小岳さん、大町さん、そして当事者の猿渡君と戌井さんがそれぞれを評価したら、僕の見解とは変わっている可能性も十分にあります。


 ですが、そんなことは部長も分かってくださっていることですけどね。


「ありがとう。今度大町さんにも同じ質問を聞いてみるよ」

「それがいいですね。まあ、今年も新人の指導役を担ってくれている大町さんの方が僕よりも有益な意見が出してくれるでしょうね」

「進藤くん、君だって指導役は経験しているし、そもそも猿渡くんと戌井くんの指導役だったんだから自信を持っていいんだよ」

「.....恐れ入ります」


 少し、照れますね。






 こうして部長の奢りの下、お酒と焼き鳥(というかほぼ焼き鳥)をご馳走になった僕は帰路に着きます。


 こんな風に部長と一対一で食事は初めてですね。


 あ、大町さんと話をする時は下手に食事に誘うのはまずいことを部長にお伝えした方がいいですね。

 部長も大町さんもそんなつもりはなくても、失礼な勘繰りをする方が出るとまずいですし。


 解散する前に気づいておくべきでした。


 あ、またガイさんに称号のことを聞き忘れていました。


 はあ、いけませんね。仕事でもこんなことがないようにしないと。






 帰宅し、シャワーで汗を流した僕は水を飲みます。

 少しとはいえアルコールを飲んだ分、水分を摂っておかないと。


 さて、口直しに甘いものを....あ!


「アイス、買ってない」

 そうです。買い置きがないから帰りに買おうと思っていたのに....


 近所のコンビニは確か改装中で今は閉まっていましたし....






 その時、僕は思い出します。


 お腹は満たされないけど、味は感じられる手段はあります。

 幸い、お腹は食事を摂ってきたで一杯です。




「せめて、甘さだけでも」

 僕はヘッドギアを装着してログインするのでした。

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