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真面目な僕は遊び人になりました  作者: 樫原 翔
始めてみました。
14/61

ガイ先生のPvP教室です。

 気づいたらそこは、不思議な場所でした。


 なんて、映画のフレーズのようなことを思ってしまいましたね。


 僕は今、ガイさんと共に見慣れない場所に来ています。


 これは、何と言いますか...


「コロシアム?」

 そうです、ローマとかにある闘技場のそれですね。


「そうだ。ここは『決闘システム』の専用フィールドだ」

「決闘システム?」

 何でしょう? 決闘ということはやはり闘うということですかね?


「早い話、プレイヤー同士が闘う時はこの決闘システムを使うんだよ」

「なるほど」

 ということは...


「ウォーカー、何で武器を構えるんだ?」

「ん? 僕とガイさんで勝負をするのが特訓なのでは?」

「ああ..」

 おや、違うようですね。


「正確に言うと『模擬戦』だ」

「模擬戦、ですか」

「そうだ。模擬戦ではダメージ、MP消費、武器の損耗なんかが全くないんだ。つまり、武器の性能とかスキルの実践とかの練習が出来る」

「おお!」

 それはいいですね。


「従来の決闘だとダメージとかは普通にあるけど、それはどっちかていうとプレイヤー同士の実力を競うためとか、何かしらの取引から決闘が利用されるって感じだな」

「なるほど」

「まあとにかく、今回はPvPについて教えてやるよ」

「分かりました。よろしくお願いします、ガイ先生」

「先生はやめてくれ..」




 こうして僕はガイさんから対プレイヤー戦についての手解きを受けることとなりました。


「これは俺なりに大事だと思っていることなんだが、プレイヤー戦で重要なのはスキルの駆け引きだ」


 スキルの駆け引き、ですか。


「分かりやすく言えば、アーツスキルと魔法スキルを使うタイミングだな」


 タイミング...ああ、

キャストタイム(発動までの時間)リキャストタイム(再発動までの時間)、それにチャージタイム(発動回数補充の時間)というやつですね?」

「そうだ」


 これは以前スキルのことを調べた際に分かったことですね。


 □□□□□□□□□□


 ①キャストタイム

 アクティブスキルを使用してから発動までにかかる時間。

 強力なものほど発動までの時間が長くなる傾向がある。

 基本的には魔法スキルでみられる。


 ②リキャストタイム

 アクティブスキルを再発動するまでにかかる時間。

 強力なものほど再発動するまでの時間が長くなる傾向がある。

 基本的にはアーツスキルと魔法スキルではアーツスキルの方がリキャストタイムは短い傾向がある。


 ③チャージタイム

 アクティブスキルには発動回数の制限が設けられているものが存在し、チャージタイムはその発動回数を回復するための時間である。

 強力なものほど回復にかかる時間が長くなる傾向がある。

 基本的にはアーツスキルでみられる。


 □□□□□□□□□□


 僕が持っている『ウェポン・チェンジ』や『スローイング』はアーツスキルに分類され、これ等にはリキャストタイムとチャージタイムが存在していました。




「たとえばだな....」

 ガイさんがなにやらウィンドウを出して何か打ち込んでいます。


 すると、僕達の前に変な人形が出ました。


「あれは..」

「あ.....訓練用の人形だ」

「....五寸釘いりますか?」

「いやいらねーよ...気持ちは分かるけど」


 サイズは大きいですけど、どう見ても誰かを呪うための藁人形なんですよね。ガイさんもそう思ってましたね。


 運営の趣味ですかね?




「とにかくだ、いくぞ」

 そう言ってガイさんは藁人形の前に立ちます。

 その手には背中に掛けていた大剣を持っています。


「“斬撃"!」

 そして振りかぶって、剣を勢いよく振り下ろしました。


 大剣は藁人形を切り裂きます。


「剣術の攻撃スキル『斬撃』だ。ウォーカーはもう持ってるか?」

「いえ、僕が持っているのは確か..」

 僕はメニュー画面を確認します。


 剣術のアーツスキルで今持っているのは『パリィ』だけでした。


「お、防御系のスキルか。俺も世話になってるし使えるぜ」

 とはガイさん談。攻撃スキルの方はモンスター相手に剣で戦っていれば手に入るとのことなのでイベント前に獲得を目指しましょう。


「んで、次が...」

 また大剣を構えるガイさん。

 おや、いつの間にか切られた藁人形は消えていて、新しい藁人形が立っています。すぐに取り替えてくれるなんて便利ですね。




「“剛撃"!」

 また振りかぶり、大剣を振り下ろしました。

 モーションはさっきのと似ていますが、威力が違いますね。

 藁人形は斬られると共に衝撃で軽く吹き飛び、よくみると藁人形の足下の地面も軽く抉れています。


「こっちは大剣の攻撃スキル『剛撃』だ。威力は『斬撃』より高いけど、その分リキャストタイムとチャージタイムも長めだ。ウォーカー、この二つのアーツスキルで何か気づいたことはないか?」


 気づいたこと....あれかな?

「モーションがかなり似ていましたね」

「そうだ、アーツスキルのモーションはある程度似せることが出来るんだ。相手が持っている武器や相手が攻撃に入る時の構えなんかで、どんなスキルを使うのかは、経験のあるプレイヤーだったら見当をつけられる。だから同じ構えで繰り出すようにすれば何が来るのかと考えさせられるから、それだけで相手を警戒させられる」




 確かに、構えは同じでも出てくる技が何か分からないというのは脅威ですね。

 そういえば、野球のピッチングでも同様の技法がありましたね。チェンジアップでしたっけ?




「これについてはどんなスキルがあるかをある程度把握しないといけないから手間だけど、ウォーカーも調べておくといいぜ」

「ありがとうございます。それでは後で調べておきますね」

 イベントまでの間に把握しないとですね。


「本当はウォーカーもこの戦法を使えばいいんだが、そんなにアーツスキル持ってないよな?」

「ええ、残念ながら」

「んじゃ、これは相手が取り得る手段として頭に入れておいてくれ」

「分かりました」




「次に、魔法スキルだが、俺は魔法職じゃないからあまり魔法スキルの扱いについては力になれないんだよな..」

「大丈夫ですよガイさん。僕もまだ魔法スキルは獲得出来ていませんので」

「そうか、じゃあ魔法職対策を教えるぜ」

 魔法ですか、どんなものなのか見てみたいものです。そして、使ってみたいです。




「魔法職が物理的なステータスが低めなのは知ってるよな?」

「ええ、もちろん」

「だから魔法職相手に有効なのはやはり懐に入ることだな」

「ほうほう」

「対して魔法職は如何に相手との間合いを保てるかが肝だ」

「つまり簡潔に言うと、近づけば戦士職が、離れれば魔法職が有利と?」

「基本そう考えてくれていい」


 となると、今の僕は接近する手段を考えないとですね。




「ウォーカーが今使えるアーツスキルは何がある?」

 ガイさんの質問に、僕はメニュー画面から獲得したスキルを再度確認します。


 武器換装の『ウェポン・チェンジ』

 投擲術の『スローイング』

 短剣術の『スラッシュ』

 剣術の『パリィ』

 敵を引きつける『挑発』


 の五つですね。




「・・ウォーカー、『槍術』や『格闘術』は獲得しているか?」

「そちらも持っていますね」

「だったら、『俊突』と『クイックブロウ』のスキル獲得を目指してみてくれ」

 そのスキルは確か、槍術と、格闘術のアーツスキルでしたね。


「分かりました」

 剣術同様、モンスターとの戦闘で頑張りましょう。




 その後もガイさんから対プレイヤー戦について一通り教わると、最後にガイさんに実践稽古をつけてもらいました。


 実際に、使用スキルが何かを読むのはやってみると難しいですね。

 受け止められそうな『斬撃』と思えば今の僕には防げない『剛撃』を放たれて吹き飛ばされました。


 こちらの攻撃は大剣を盾にして防がれるので、大剣のリーチよりも更に懐へと行こうとするとハンマーに持ち替えていたガイさんにまた吹き飛ばされました。

 ガイさんも『ウェポン・チェンジ』を持っているんですね。




 繰り返すことしばしば。


「ハア、ハア、ハア」


 息が切れたので中断となりました。


 ガイさんの息が切れたので。




「ウォーカー、お前、疲れないのか?」

「疲れる? 何がですか?」

「いや、結構な時間稽古したのに息を切らしてもいないからさ」

「ああ、そういうことですか」


 でも、ガイさんは()()()()()()()()()()()


 ん、あ、眼鏡に汗が...

 外して拭かないと。


 だって、

「ふふ、こんなに楽しいのに、疲れる暇なんてありませんよ」


 ーーーーーーーーーーーーーーー


「こんなに楽しいのに、疲れる暇なんてありませんよ」


 その時、俺は呼吸するのを忘れていたと思う。


 だって、よく考えるとあいつが笑うのって初めて見たなって思ったし、


 何気にすげぇこと言ってるなと思ったし、




 何より、そんなあいつの言動と合わさって見たそれ(・・)は....


 迫力に満ちていたなと思い、見入ってしまったから。




「ガイさん、ガイさん?」

「あ、ああ悪い悪い。続きと行こうぜ」

 ウォーカーが眼鏡を整えて構える。


 俺も武器を構える。


 こうして、最初の稽古の時間は過ぎ去っていった。


 ーーーーーーーーーーーーーーー


「今日は本当にありがとうございました」

 アトリエに戻った僕は、ガイさん、まるたちゃんさん、たまこちゃんさんの三人にお礼を言います。


 何かお返しをしたい所なのですが、初心者の僕では返せるものがないのが本当に心苦しいです。




「いいってことよ!」

「武器のメンテを頼みたかったらアトリエに来て。この時間なら基本いるからさ」

「ポーションとかも必要でしたら協力しますから」


 皆さん...


 本当にいい人達ですね。




「それじゃ、イベントまでの間、何度か特訓してやるからよ」

「あたし達は参加しないけど、応援には行くから」

「頑張ってください!」

「はい。とにかく出来得る限り準備をしてイベントに臨んでいきます」




 そして僕はログアウトをするのでした。








「ふう」

 ヘッドギアを外せば、そこは見慣れて住み慣れた部屋。


 時計を確認すると、やはりですが随分と長くログインしていました。


 だからですね。


 お腹が空いて仕方がありません。

 いや、長い間プレイしていたからだけではないですね。


 仮想空間での食事も刺激になってしまいましたね。




 さて、今日のメニューは...

 冷蔵庫の中には....




 よし、『豚の生姜焼き』と『ハンバーグ』です!


 やっぱり食事はお腹も満たせないとですからね。




 僕はキッチンにて調理に取り掛かるのでした。

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[一言] PVPイベか、初心者とベテランとステータスや装備格差はどう調整するかな
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