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真面目な僕は遊び人になりました  作者: 樫原 翔
始めてみました。
13/61

予定が決まりました(決められました)。

「アホーーーッ!!!」

 あたしはこの年上の新人に呆れてしまい、思わず怒鳴ってしまった。




 だってこの新人、あたし達を助けてくれた時の装備品が正直言って貧弱過ぎるんだもん。


 確かにステータスや予算の関係であまり強力なものを買えないのは分かる。


 でも、いくらなんでもアンバランスな編成過ぎる。


 武器ばかり買って防具は小型の盾(バックラー)のみ。


 普通は衣装系の防具はもちろん、装飾品系の装備品を早々に身につけるべきなのにだ。


 しかも、あたし達が助けられた時、この新人、ウォーカーはゴブリン系モンスターから入手出来る使い捨てのおよそ実戦ではまず使えない武器ばかりで戦っていたというのだ。


 アホと言わずして何と言う!


 しかも、『ホブゴブリンのタルワール』を持っているということはホブゴブリンと戦ったということ。


 ホブゴブリンはゴブリンの上位種ではあるもボスクラスのモンスターではないため、フィールドでの遭遇は決して珍しくない。


 動きも単調だから倒せない訳ではない。

 でも、ホブゴブリンが主に駆使するカウンター攻撃は初心者からすれば致命傷になり得る攻撃で、初期装備の服と盾だけで戦うのは正直言ってやっぱりアホ過ぎる。


 ていうか....


「ウォーカー、君はファイターみたいだけど、最初は武器を一つに絞るもの! 何で幾つも武器買うの!」

「あ、たまこちゃんさん、一つ訂正すべき所が」

「なに?」

 もう、話を止めないでよね。


「僕の職業は『遊び人』です」


 ・・・・・・・


「え?」

 思考が停止したあたしは気づけば変な声を出していた。


 ーーーーーーーーーーーーーーー


「『遊び人』?」

「はい」

「ロール職の?」

「その通りです」


 自己紹介の時、また職業を言い忘れていたために、勘違いしていたたまこちゃんさんに訂正した所、初めて会った時のガイさんと同じ反応をされました。


 本当に『遊び人』は珍しいのですね。


 というか僕、ガイさんの時と同じやりとりをしていましたね。




「えっと、じゃあ聞くけどどうやってゴブリンを倒していったの?」

「そうですね...なるべく頭を刺す、首の頸動脈辺りを切る、心臓があるだろう左胸の辺り狙うようにはしましたね」

「うわ、ナチュラルに急所狙いじゃん」

「あ、やっぱり急所でしたか。イノシシ達の時も首や目を刺したおかげで簡単に倒せましたので」

 僕の推測通り、急所を突くのがいいんですね。




「ちなみに、ホブゴブリンは?」

 えっと、確か...


「こう、お腹を思いっきり刺して、ああ、そこから思いっきり振り上げた時に左胸辺りを切り裂きましたね」

 僕はあの時の動きを思い出しながら再現と共に説明しました。


「うわ、エグっ!」

「そうですね、返り血なんかがあったら僕の姿は毎回酷いことになっていましたな」


 ーーーーーーーーーーーーーーー




「そうですね、返り血なんかがあったら僕の姿は毎回酷いことになっていましたな」

 軽く笑いながら言うウォーカーの天然さに私は呆れると共に少し異質さを感じた。


 確かにこのゲームでは敵の急所を突くのが重要だ。

 そのシステムのおかげで、あたしやまるちゃんみたいな生産職やウォーカーみたいなロール職のように戦闘向きじゃないプレイヤーでも、モンスターとの戦闘をクリアできているし。


 もっとも、大型のボスモンスターなんかだと急所を突くのに苦労させられるけど。


 でも、平然と急所を狙うのを当たり前にした戦い方は殺し屋みたいで正直物騒だと思う。


 普通ならモンスターとの戦闘ってある程度こなしてからようやく急所を狙うことにも慣れるものだと思う。

 いくらゲームと分かってもリアリティのあるこのゲームではモンスターとの戦いは普通びっくりしてしまうんだから。


 なのにまだログインして3回程度のウォーカーはそれを行えている。

 つまり、モンスターとの戦いに対し怯えるとかがないんだ彼は。


 他にもこういうことが出来るプレイヤーはいるだろうけど、それを初めて間もない初心者に出来るのだろうか?


 やっぱそれって凄いことなんじゃ...


 でも、そんなウォーカーがPvP(他のプレイヤーと対戦).....




 ーーーーーーーーーーーーーーー


「ガイガイ、ウォーカーにプレイヤーとの戦い方を教えてあげた方がいいよ」

 ん、どうしたのでしょう?


「ん、ああ、そうだな。モンスターとの戦いのセオリーは掴めているけど、プレイヤー相手じゃそうはいかないしな」

 お話を進めていくたまこちゃんさんとガイさん。


 あ、そっか。バトルイベントはプレイヤーとの対戦で、モンスターみたいに急所を狙うのは難しいですもんね。

 というか、プレイヤーだと急所はないと考えるべきですね。


 確かに、僕はプレイヤーとの戦い方は全く経験がないですね。


「ウォーカー、とりあえずあたしが武器を用意してあげる。リクエストはある?」

「そうですね。僕でも装備出来るものなのがまず当然ですよね」

「それはそうよ。デザインとかでリクエストは?」

「そうですね...とりあえずシンプルなのがいいですね」

「・・・・作り甲斐ないわね」

 不満そうな顔のたまこちゃんさん。いやはや申し訳ない。


「たまこ、とりあえずウォーカーには今あるやつで装備を見繕ってやってくれるか? 出来次第早速練習するからよ」

「はぁ、分かった。とりあえずウォーカーが前に装備したのよりはいいやつは幾つかあるからそれを出すわね」

「ありがとうございます、たまこちゃんさん」




 こうして、何やら予定が急に決まってしまいました。

 まあ、問題はないので構わないのですが。




 そして待つこと少々、僕はたまこちゃんに用意していただいた武器を頂戴しました。

 もちろん、代金は払おうとしたのですが、助けてもらったからいいと言って断られてしまいました。


 なので、今後の素材調達などで手伝いが必要な時は微力ながら協力しますという約束は取り付けましたが。


 流石に若い方達にお世話になってばかりという訳にはいきませんからね。




「よし、ウォーカー、早速特訓と行こうぜ!」

「分かりました。よろしくお願いします」

「んじゃ、これにYESとしてくれ」


 ん? 何のことかと首を傾げそうになった時、目の前にウィンドウが現れました。


 ■■■■■■■■■■


 プレイヤー“ガイ"があなたに模擬戦を申し込んでいます。


 受理しますか?


【YES】   【NO】


 ■■■■■■■■■■


 ああ、これですか。


 YESと...


 途端、僕とガイさんは別の場所に立っていました。




 ーーーーーーーーーーーーーーー


 ウォーカーさんとガイさんは目の前から消えてしまいました。

 多分、決闘システムなのだと思います。

 やったことはないけど、聞いたことはあったので。


「ねぇねぇ、まるちゃん〜」

「え、な、何、たまちゃん?」

「ウォーカーと、何かあった?」


 ど、どうして気づいたの!?


「料理作ってから妙にウォーカーの方を見ないようにしてたし、これは何かあったと思わない訳がないのよね」


 す、鋭すぎるよたまちゃん!




「それで、どうなの?」

「えと、あの...」

 うう、誤魔化せないよう...


 ウォーカーさん....


「ッ!!!」

「ちょ、顔真っ赤! どうしたの?」

「す、しゅごかった...」


 思い出しちゃった...

 顔が熱いよう。


「え、何が?」

「そ、その、し、下が...」

「し、下っ!? な、何? 本当に何があったの?」

 まさか、あんなすごいのが隠れていたなんて...


「〜〜〜〜〜っ!!!!!」

「うわ、湯気出てる! 湯気出てるってば!」


 うう〜もう、無理...




「ま、まるちゃ〜んっ!」

 意識が薄れていく時、たまちゃんが必死に叫んでいました。


 ーーーーーーーーーーーーーーー


 ーーーーーーーーーーーーーーー


「ま、まるちゃ〜んっ!」

 親友のまるちゃんが顔を真っ赤にしたと思ったら気絶しちゃった。


 しかも湯気が出るほどって...




「下って、まさか...」

 あたしは思わず下腹部に視線を向ける。


 ウォーカー、あいつまさかとんでもない変態なんじゃ...


 いや、流石にそれはないわね。

 そんなことしたら即刻運営によってアカBAN(ゲームから永久追放)だしね。


 それに、話した感じ、天然で紳士って感じだしね。


 うん。大丈夫...のはず...だよね?






 あたしはその後、意識を取り戻したまるちゃんに再度尋ねたけど、顔を真っ赤にするだけで何も言わなくなったために結局分からないままだった。


 けど、あたしも後に、この日まるちゃんが遭った出来事の真相を知ることが出来た。


 もっとも、あたしだけじゃないのだけれど...


 ーーーーーーーーーーーーーーー

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