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真面目な僕は遊び人になりました  作者: 樫原 翔
始めてみました。
10/60

昼休みにて。

「ふう...」

 デスクから立ち上がり、僕は凝り固まった身体を解します。


 午前中の業務も終わり、昼休みに入りましたから食事に行きますか。




 ん、あれは...


 僕は備品棚にあるコピー用紙の束を出しておきます。次いでに開けておきますかね。




「進藤先パイ! おれもご一緒していいですか?」

「ん? いいですよ、猿渡君」

「どこ行きます?」

「そば屋です」

 今日はそばの気分なので。




 ーーーーーーーーーーーーーーー


 私は頼まれたコピー用紙の束を持ってコピー機の方へ行きました。


 新人である私はまだ部署内での簡単な仕事を任されることが多いので一日でも速く仕事に慣れるように頑張ります。


 コピー機の所へ行くと、大町さんが用紙入れを開けて確認していました。


「大町さん、お待たせしました」

「あら小岳ちゃん、今日は早いのね。いつもはどこにあるのか見失うのに」

 大町さんの言葉に私はつい苦笑してしまいます。


「実は、棚の脇のテーブルに出されてあったんです。しかも、開封済みで」

「ああ、それ進藤くんね」

「え?」

 何で、進藤さんになるの?


「多分貴方がコピー機から離れて行くのを見たから察してくれたのよ」

「え、でも、何で分かったんですか?」

「進藤くん、変な所で目端が効くのよ。あたしも昔はよく世話になっちゃったわ」

「そうなんですか」

 後でお礼を言わなきゃ。大町さん、進藤さんのことをよく分かってるな〜。


「あ、そういえば、大町さんと進藤さんは同期入社でしたっけ?」


 ーーーーーーーーーーーーーーー



 ーーーーーーーーーーーーーーー


「あ、そういえば、大町さんと進藤さんは同期入社でしたっけ?」


 あたしが指導している小岳ちゃんからの質問は実は他の後輩ちゃん達からもよく聞かれる質問だ。



「そうよ。入社した時は変わった人だなって思ったわ。だってあんな瓶底眼鏡を掛けている人が現実にいるなんてさ」

 だからあたしは毎回こんな風に当時抱いた彼への印象も口にする。


 今ではその印象は変わっているかというと、そうでもない。

 進藤くんは妙な人だというのは多分、同じ部署のみんなが思っていることだ。


 何か目立つことをしている訳ではないのに、存在感があり見失うことはなかった。やっぱりあの眼鏡のインパクトが大きいのよね。


 仕事の様子は地味で地道、そして堅実といった感じ。

 仕事中、急にふらっとしたかと思ったら誰かの仕事をさりげなくフォローしていたなんてこともある。

 今の小岳ちゃんの件だけじゃない。


 確か、他の人が担当していた仕事の見積書の数字に誤りがあったのを見つけて、付箋でそれを示していたなんてことがあったわね。

 あれがなかったらかなり大変な事態になっていたのを後で聞き、誰がやったのかをたまたま目撃していたあたしがそれを教えたら、部長も一緒になってお礼を言っていたわね。


『いえ、たまたまですから』

 お礼を言われてもさらりと返していたわね。そういえば。

 淡白というか、なんというか...



「あの、大町さんと進藤さんって...」

 おっと、やっぱりこの質問に入ってきたわね。


 確かに同期で気軽に話したりするけどさ。


「付き合ってないわよ」

「ほんとですか!」

 そしてこの返しをすると質問した人みんな嬉しそうな顔をするのよね....


 まあ、あれ(・・)を知っていれば分かるけども。


「さ、補充とコピーを終わらせてお昼食べに行くわよ!」

「はい!」


 ーーーーーーーーーーーーーーー




「え、進藤先パイも始めたんですか!」

「はい。思い切ってやってみました」

「それで、どうでしたか?」

 そば屋さんにて、注文したメニュー(猿渡君は天ぷらそば、僕はたぬきそば)を食べる傍ら、僕は猿渡君に彼がおすすめしてくれた『NOVA』を始めたことを話しました。


 すると感想を聞こうと身を乗り出してきたのは少しびっくりしますが。


「まだ2回しかログインしてませんが、とても楽しいです」

「ですよね!」

「猿渡君、近いですよ」

「あ、すいません」

 更に身を乗り出しそうなので止めましょう。


 しかし、足りないですね。

 麺と天かすのシンプルなこちらのたぬきそばは美味しいのですが、その分物足りない時があります。


 なので、

「すいません。天丼大盛りをお願いします」

「まだ食べるんですね」

 とりあえず、そばのお(つゆ)を飲み干しましょうか。




 僕と猿渡君は器を空にします。


 そして今度は僕から話を切り出します。


「猿渡君、質問があるのですがいいでしょうか?」

「なんですか?」




 これはとても重大な案件、覚悟して聞かねば...


「『NOVA』内の料理は美味しいですか?」




 ・・・・・・・


「あ、はい。味とか匂いとか感じられるんで美味いですよ」

「ほっ、よかった」

「え、それが質問ですか?」

「ん? そうですけど」


 ・・・・・


「あ、分かってるとは思いますけど、『料理』のスキルや材料が必要ですからね」

「そうですか。ありがとうございます」

「ところで、先パイ! ゲーム始めたんならアレ(・・)にも出ますか?」

「.....はい?」

 何のことでしょう?


「え、知らない? あ、じゃあ、これですこれ!」

 すると猿渡君はスマホを操作し、画面を僕に見せてきました。


 これは...『NOVA』の公式ホームページ?

 おや、下に見出しが。


「えっと、『イベント開催のお知らせ』?」

「そうです!」

 再度スマホを操作してくれた猿渡君は僕に再度画面を見せてくれました。


 □□□□□□□□□□


『バトルイベント開催』


 自分達がこれまでに培ってきたその力を振るう時がきた!

 自分の力がどこまで通用するのか、その強さを確かめてみたいか?

 自分の力を知らしめてやりたいか?

 強者との戦いを楽しみたいか?


 戦いたい者は今すぐ登録を!


 □□□□□□□□□□


「へえ、イベントですか」

「そうですよ。プレイヤーの数も増えてきたしで、腕っぷし自慢はメチャクチャやる気になってますよ。もちろん、おれも参加します!」

「おお、頑張ってください」

「他人事!? 進藤先パイはやらないんですか?」

「そうですね。興味はあります。けど今は..」

「今は?」


「お待たせしました。天丼大盛りです」

「ありがとうございます」


 店員さんが天丼を運んでくれました。


「今は食べることが第一ですので」

「ええ〜」


 ん〜、エビ天のサクサクとかかったタレの甘さがいい感じです。


 しかし、『美味しい』ですか...


 帰ったら早速試してみましょう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公もプレイも淡々と進めていくスタイルは意外とわかりやすかったし、周りとの温度差も面白いのでこれからも淡々と進めてほしい [一言] 初見ですが面白くて一気に読み進めました!応援してます!…
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