オーパーツを焼却炉へ
朝部室の棚からサイコロと仮に呼ぶ、先輩二人と偶然発見したオーパーツを手に取る。
重みがあり、金属の表面に繋ぎ目は無く、溶けた様に歪む。
しかも近くでは携帯が不調に。
仕組みは不明、表面の目のみで文字数字ロゴ無し。
「このオーパーツなら……」
不思議で意味不明の謎物体なら必ず何かあると期待が膨らみ、変化を望みそっと額をつけた。
同日の放課後。
「あ、王子先輩」
長身、小麦色の肌、男子よりモテると噂の女子とばったり会う。
「王子って」
「すいません、心の声が漏れました」
謝ると視線が抱えるサイコロ(仮)に。
「それどうするの?」
「処分します。校舎裏の焼却炉で」
「え? なぜ」
「放課後まで待ったのに期待に何も応えてくれないから。もう良いかって」
期待と何も起きない落胆、処分の経緯を説明した。
「……猶予短っ、理不尽過ぎ」
「このフォルムですよ? 期待して当然じゃないですか?」
さも仕方ないと語る理屈に笑う。
「君面白いね。普通処分しないって。変われないくせに変なの」
王子がついて歩く。
「そもそも燃えるの?」
「さぁ? でも大体の物は燃えません?」
首を傾げると部活の先輩が行く手を塞ぐ。
「何してんだ!」
「? 携帯使用不能にするだけなんで処分するんです」
「待て! 連絡が面倒な時に電波が悪くてと言い訳できるぞ!」
「おぉ、盲点でした」先輩の説明に頷き「じゃ、燃やしますね」
頷くが考えを変えない後輩に驚く。
「なぜ!?」
「結局怒られる訳でしょ? 嫌じゃん」
「確かに……」
逆に納得する先輩、そのやり取りに笑う声が。
「あははっ、やっぱり面白いな。アタシと友達にーー」
「嫌です。変と言われて友達になります?」
秒で断ると次は先輩が。
「兎に角、部室に戻せ!」
「電波障害を起こすだけのガラクタですよ?」
「ガラクタ!? オーパーツはロマンだ! そこにあるだけで良いんだ。返せ!」
「ダメです。邪魔なんで。漫画本が棚に置けなくなります」
「漫画より価値が下だと?!」
「はい。現代機器を使えなくするのはゴミ同然です」
「もしかしたら火星の洗脳電波を防ぐオーパーツかもしれないだろ!」
「どんだけ必死なんです? なら持ち帰って下さい」
「それは……」と正体不明は持ち帰るのが怖く、けど手放したくないと渋る。
「ビビり」
すると横から手が伸び、
「ならアタシが持って帰るよ。じゃ、明日」
王子がサイコロ(仮)を抱え、片手を上げ爽やかに帰って行く。
なぜ人気者がと謎だが、何か起こる期待に胸が高鳴る。