【5】魔王、能力は強すぎる
自分は【火玉】の発動に成功し、喜びをあらわにした。
「どうだい、アイナベラ?」
「こんな攻撃力……始めて見ました……」
と、壁の凹みを見て呆気に取られるアイナベラ。
確かに【火玉】の威力はちょっと強すぎる。
壁を凹ませたなんて……修理費用は高いだろうと思い、俺は苦笑した。でも、引き続き壁に魔法を発動したら、壁を崩壊させてしまうかも。
しかし、【火玉】は初級魔法のはずだが、こんなに強大な破壞力があるとは思わなかった。
「あのさ……」
「そのような高強度の【火玉】を発動できるなんて魔王様はやっぱり強いです!」
と、近寄り欽慕の目で俺をじっと見つめるアイナベラ。
ちっ、近すぎる!
もうすぐ俺の体に触れる、彼女のおっぱいは。
「そっ、そりゃ当たり前だろう」
「はい!」
「けど、魔法発動一回だけで壁を凹ませるなんて悪いな。続けたら壁はきっと耐えられず崩れ落ちるよ」
「確かに悪いですね……。うんん、それなら」
アイナベラは右手を上げて詠唱を始める。
「虚無の無属性元素よ、我に力を与えたまえ!銅牆鉄壁、金城湯池、堅牢な盾となり、一切の攻撃を防御してくれ!【守御堅盾】発動!」
魔法陣が出現して半透明の巨大な五角形みたいな盾が現れた。
大きい、こりゃ……。
思わず【守御堅盾】の雄大な模様に賛嘆した。
「よし、これで壁を崩壊させることはできません。魔王様、この盾に【火玉】を発動してみてください」
「分かった」
目を閉じ深呼吸をして呪文を詠唱する。
「赤き存在の火よ。我が名において、手に集いて力となれ。我が前にいる敵を撃て。【火玉】発動!」
【火玉】は疾風の如く射出して【守御堅盾】に命中して爆発した。
そのため、【守御堅盾】は亀裂が走って破裂した。
「やばい!アイナベラ。【守御堅盾】が破裂した」
「えっ……」
吃驚するアイナベラは唖然として言葉がない。
「アイナベラ?」
「……っ」
返事がなかった。
彼女はこの事態に完全に頭の中が真っ白になり無言のまま立ち尽くしている。
「おい、アイナベラ!」
「はっ、はい、魔王様」
アイナベラは我に返り、やっと返事をした。
「お前どうしたんだ?ぼんやりして」
「すっ、すみません、魔王様」
アイナベラは頭を下げて詫びた。
「魔王様の【火玉】の威力は本当に強大すぎます。私はショックを受けてしまいました」
「ほう?」
「だって、【守御堅盾】は高級無属性魔法ですもの……、けれど、魔王様は一発だけで【守御堅盾】を爆裂させました、信じられません……」
「そうか……」
【守御堅盾】は高級魔法なんだ。だから【守御堅盾】が破壞されたのを見て、アイナベラがあんなに驚いたのも無理はない。
しかし、初級魔法が高級魔法を爆裂させるとは……マジでチートだな。
「魔王様の力は本当に底知れませんね……」
「今は褒める場合じゃない。【守御堅盾】の防御が脆弱じゃ問題がある、授業はどうしよう、アイナベラ?」
「そうですね……。えっと、どうしたらいいでしょうか、んん……。あっ!ありました!」
アイナベラは解決の方法を思いついたようだ。
右手を挙げて再度【守御堅盾】の呪文を詠唱する。
「虚無の無属性元素よ、我に力を与えたまえ!銅牆鉄壁、金城湯池、堅牢な盾となり、一切の攻撃を防御してくれ!【守御堅盾】発動!」
半透明の巨大な盾が再び現れた。
そして、また呪文を詠唱する。
「大地の無元素よ、私の呪文に応えなさい。一切の無属性魔法を強化して!【無強化】発動!」
次の瞬間、【守御堅盾】から光が四方に放たれ、【無強化】によってもっと堅固になったように見えた。
「これで良いです。再び【火玉】を発動してみてください、魔王様」
「うん」
アイナベラは【無強化】を利用して【守御堅盾】を強化した。そうすればたぶん、二度と爆裂させることはできないだろう。
「赤き存在の火よ。我が名において、手に集いて力となれ。我が前にいる敵を撃て。【火玉】発動!」
【火玉】は【守御堅盾】に向かって飛び、当たって爆発した。
「ウっ……」
と、固唾をのみ結果を待つアイナベラ。
……結局予想通り、強化した【守御堅盾】は全然損傷を受けなかった。
手に汗を握った。
「やっ、やりました……」
アイナベラはほっとした。
「緊張して心臓が口から飛び出そう……」
「俺もだ……。まあ、【火玉】はもう習得できた。次はどんな魔法を教えてくれるんだ?」
「んん、炎属性初級魔法【火刃】はどうですか、魔王様?」
「ああ。教えを頼む」
「はい!」
それから、アイナベラは【火刃】の呪文を俺に教えた。
すぐに呪文を覚えた俺は詠唱して成功したが、やはり【火刃】の攻撃力も軽視できない。
非凡な才能、尋常でない力。こんなチート状態、俺は超好きだ。
✦✦✦
今日の授業は俺にとって勉強になり、色々な初級の炎属性と無属性の魔法を習得できた。
アイナベラは攻撃型魔法だけでなく、防御型魔法も教えてくれた。
例えば、【火弾】・【燃焔】・【火矢】・【魔弾】・【噴炎】など、防御型魔法なら【火壁】・【火盾】・【魔盾】など。
授業はもう終わりに近く、少し疲れた。それに、ずっと呪文を詠唱するので喉も渇いた。
早く無詠唱の境地になりたいな。
人族を倒すために、無詠唱は必ず通らなくてはならない道だ。
強大な能力で自分の権威を確立し、魔族たちを俺の命令に献身的に服従させる。その上、魔王領もしっかり整頓しなきゃ。
そうなれば、魔王領は他の人族の国に馬鹿にされない。
「今日の授業はこれで終わります、魔王様」
「魔法を教えてくれてありがとうな、アイナベラ」
「いいえ、私は魔王様に魔法を教えることができて誠に光栄に存じます」
「うん、これからもよろ……」
にわかにめまいがし、意識が遠のきそうになった。
「どうかしましたか、魔王様?」
「突然、めまいがした……」
「これはおそらく魔力がもうすぐ尽きます、魔王様……」
「そうか……」
初級魔法を一回発動するたびに、魔力値が10ポイント減っていく。
俺は全部で五十二回初級魔法を発動した。……やはり、魔力がもうすぐ尽きる。魔力がもうすぐ尽きるという時には、めまいや吐き気などが起きるが、少し休めば魔力は回復する。
と、アイナベラは教えてくれた。
いきなりアイナベラは顔を近づけてきて……彼女の唇は俺の唇に触れ……キスをする。
なっ……なに……。えっ?えええええー!?
急展開に驚いて赤面してしまった。
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