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【2】魔王、勉強を決める

 俺が魔剣を抜いたことから魔族たちの俺に対する尊敬の念が一層高まった。

 魔族たちにとって俺は至上の存在だから、俺の命令にも絶対服従する。


 今、宮殿の王座に座っている。

 だけど、シルディアが俺に抱き着いたままの状態だ。


「……シルディア、なんで俺に抱きつくの?」

「だって、あたしはご主人様の武器ですから。武器はご主人様のそばにいるのは当然じゃないですか?」

「……っ」


 確かに……。

 シルディアが言ったことには道理があり、反論できない。


「これはご主人様の香り、いい匂いです。ふふ」


 と、嬉しく笑うシルディア。


 でも、少々恥ずかしい。

 女の子にこんなふうに抱かれるのは初めてだから。


 ……まあ、致し方ない。目的に戻ろう。


「俺にはお前たちに一つ頼みたいことがある」

「何事ですか、魔王様?」

「どんなことでも、わしたちは必ず達成します、魔王様」

「実は俺に魔法と剣術を教えてもらいたいんだ。いいか?」


 俺の要求を聞いて魔族たちはびっくりした。


「陛下は魔法と剣術ができないのですか?!」

「えっ、ええ……」


 思わず頭を掻いた。


「大丈夫です、魔王様。よろしければ、私は魔王様に魔法を教えてさしあげます」

「魔王様、私もです」

「私も。私は自分が知っているすべてを魔王様にお教えいたします」

「私もです」

「わしもです、魔王様」

「それでは、私は魔王様に剣術をお教えします」

「私も魔王様に剣術をお教えします」

「ありがとう、みんな」


 感動した。


 アイナベラたちは俺に魔法を教え、サノパとキーガは俺に剣術を教えることになった。


「俺は一対一で一日一時間ずつ魔法と剣術を習いたいが、お前たちは七人だな……。じゃあ、交替で俺に教えてくれ」

「ならば、私が一番目に魔王様に指導させていただきたい」

「いいや、私が一番目です」

「魔王召喚について私の手柄が一番ですから、私が一番目に魔王様をご指導すべきでしょう」

「そうですが、フレナ殿。わしの力はここにいる誰よりも強いのですよ。だから、わしが先であるベきだと思います」

「しかし、私は剣術が魔法より重要だと思います。ましてや魔王様は魔剣を手に入れたばかりで、まずは剣術の訓練の必要があります」

「なるほど、サノパが言うことには賛同するが、私は先に魔王様に剣術をお教えしたい」

「魔法は王道です。もし魔王様が魔法を勉強されたいとおっしゃるならば、先に私を選んでください」

「いいや、私です」

「いいえ、私が先です」


 誰が一番目に俺を教えるのかを言い爭っている魔族たち。


 彼らが願意で俺に魔法と剣術を教えるのは嬉しいが、こんなにつまらないことで言い争っているなんてもう見てられない。


「うるせぇ!黙れ!」


 一瞬に、魔族たちが黙って俺を見た。


「お前たち、こりゃ何たるざまだ!こんなことで言い争っているようでは人族を打ち負かすことができると思うか?」


 と、大声で魔族たちを責める俺。


「「「「「「「申し訳ございません、魔王様」」」」」」」


 魔族たちは頭を下げて詫びた。


「まったく……。俺は順位を決める。一番目はアイナベラ、二番目はフレナ、三番目はサノパ、四番目はティリア、五番目はアウカードロン、六番目はキーガ、最後はクロト。これでよいか?」

「はい、魔王様が決めた以上、我らには異存はありません」

「うん、それでよし。じゃ、アイナベラ。ちょっとあとで俺に魔法を教えてくれ」

「はい!魔王様に魔法をお教えでき誠に光栄に存じます」


 俺は小説の中のようにかっこよく魔法を発動したい。

 それを極めてみせる。


 もう魔法を勉強するのにわくわくして楽しみで待ちきれない。



 ✦✦✦



 魔王領の南方、戦場前線。

 人族と魔族はまだ戦争を続けている。


 魔王領の大軍は人族の国、サークレム王国の最北方の城、ケノス城に絶えず攻撃をかけていた。


 ケノス城はサークレム王国の軍事上重要な地位にある城だ。ケノス城が陥落すればサークレム王国が陥落することは明らかだ。


 王国の軍隊がケノス城の落城をふせぐために懸命に固守したから、魔王軍は長いこと攻め落とせなかった。ゆえに、その士気はますます消沈していた。


 魔王軍の作戦を指揮する指導者は魔王軍の四天王の一人、ファージェル・ソニランだ。


 ファージェルの身分はヴァンパイアだ。

 彼女は宝石みたいに光る長い紫の髪、三つ編みにしており、瞳はオッドアイで、左目はアメシストのような色、右目はルビーのような色。

 容姿端麗、悪魔のごとき美しさ、はっと目を引き、胸も豊かだ。


 ファージェルは魔王軍の士気を鼓舞したいが、帷幕の中を歩き回るだけで方法が思いつかなく、かなり当惑している。


「どうしよう……」


 この時、一人の虫人が顔色を暗くして入ってきた。

 体つきはカブトムシのように、頭部には大きな角があり、六本の足、発達した硬い外骨格は盾として防御できる。


 彼の名前はカオズ・ノム、魔王軍の先鋒将校だ。


「先ほど再び攻めてみましたが、同じように攻め落とすことが出来ませんでした、ファージェル様……」

「……わっ、分かった」


 ファージェルは苦悩に顔をゆがめた。


「もう撤退しましょう、ファージェル様。この戦争ではすでにたくさんの魔族の命が失われました。このままでは、もっと多くの魔族を死なせるに違いありません」

「駄目だ!撤退すれば、我々魔族が人族に劣ることを示すことになる」

「固執しないでください、ファージェル様」

「どうしたの?」


 と、突然女の声がし、一人のエルフが入ってきた。


 彼女はパイレナ・シーリ、魔王軍の軍師だ。

 翡翠色の長い髪、金色の瞳。耳は長く尖っており、目鼻立ちのきりっとした美しい顔、妖艶な姿だ。


「パイレナか、ちょうどいい、君もファージェル様に撤退を勧めてくれ」

「いいえ、撤退しないよ、カオズ」

「なっ、なぜ?」

「私には二つの良い知らせがあるから」

「どんな良い知らせだ?教えてくれ、パイレナ」


 と、ファージェルが急いでパイレナに聞く。


 それらの知らせによって魔王軍の士気は再び盛り返すやもしれず。

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