【1】魔王、魔剣を手に入れる
俺は異世界へ召喚されたことに、心が雀躍したが、やはり少し不思議に思った。
魔族たちに聞いて情報をかき集め始めた。
一時間くらいで、いくつかのことが分かってきた。
まず、この世界は剣と魔法がある異世界だ。
これを聞いてもっと嬉しくなった。
そして俺が魔王になったのは、魔族たちが魔王召喚を行なったからだ。
彼らが魔王召喚を行なった理由は人族と魔族の戦争だ。
この世界にはただ二つの種族がある。人族と魔族だ。
細かくはエルフ、獣人、ドラゴンといくつかに区別されるが、ひとくくりでは魔族である。
魔族の「魔」は魔族を貶す意味を帯びている。人族じゃない化け物という意味だ。
人族は大勢を占めて人族こそ最も優れる種族だと思い、すべての人族の国は人族至上主義という政策を実施している。
ちなみに、魔王領以外の他の国は人族によって作られた。
種族差別では、魔族は不公平な待遇のもと酷使され、はては魔族の女性の貞操も人族によってよく蹂躪される。
そのために、魔族は人族に不満を感じて何度となく立ち上がった。
しかし、すべての戦いにおいて敗れた。
この状況で、やむなく魔王召喚を行なった。
目的は魔王の力を借りて人族を打ち負かすことだ。
「我々魔族を助けてください。お願いします、魔王様」
と、俺の前に跪いて懇願する魔族たち。
魔族たちの切なる思いに耳を傾けていると、俺の心の中に人族に対するたとえようのない怒りが燃え上がってきた。
でも、ちょっと難しい……。
俺はまだ魔法や剣術ができない。どうやって彼らを助ける?
だが、魔族に同情の念を禁じ得なかった。見殺しにしてはいけないだろう。
……まあいい、機会があれば彼らに魔法や剣術を教えてもらおう。
「わかった。俺は必ずお前たちを助ける」
と、同意した。
みなは感動して涙を流した。
「よかった」
「……魔王様、わしにはお話しておきたいことがあります……」
「話してみろ、クロト」
「はい。実は魔王城のある部屋の中には巨大な岩に『魔剣』という剣が一本刺さっています。でも、今まで誰もその剣を抜くことができませんでした。わしは魔王様なら魔剣をきっと抜くことができると思っています」
「魔剣か……」
小説の中の魔剣は魔王が使う武器だ。
魔王としての俺なら多分抜くことができるだろう。
「試してみよう、その魔剣を抜くことを」
「はい」
魔剣を入手したら、きっと規格外の力を得る。
と、思った。
また興奮した。
✦✦✦
魔族たちは俺をその部屋へ案内した。
宮殿の門を出ると、柱廊だ。
廊下は広くて豪華に見える。
両側に並ぶ柱の一つ一つに一人ずつ魔族の兵士が厳めしそうな顔つきで歩哨に立っている。
柱廊を通ると、階段だ。
階段を下り、階下へ行った。
左に曲がってまっすぐに門があった。
魔族たちがその門を押しあけて、入った。
部屋も広い。
床には魔法陣のようなものがある。
前を見ると、確かに一本の剣が巨大な岩に刺さっている。
あれが魔剣か……綺麗だ。
その剣には俺にとって特別な魅力がある。
俺を引きつけている。
「それは魔剣です、魔王様」
「……っ」
抜き出したい。俺は抜き出したい。
俺の理知は全くその魔剣に奪われ、身体もなぜか自然に動いた。
一歩前へ進み出ると、床の上の魔法陣が強烈な光を放った。
魔族たちは魔法陣が光を放ったのに驚いた。
「魔法陣が反応を引き起こすなんて」
「綺麗ですね。初めて魔法陣が光を放つのを見ました」
岩に攀じ登った。
剣も光を放った。
我に返ると、俺は魔剣を抜き出していた。
「えっ?」
さっき、俺は……どうしたの?あれ?
疑惑を感じた。
にわかに、身体に力が湧いてきたような気がした。
手に握っている黒い魔剣を見て、剣がオーラを発散していると感じた。
波浪様の曲線が美しい刃文、刃先は非常に鋭く、ヒルトには彫刻による芸術的な薔薇装飾がある。
魔剣を振ると、すごく軽くてとても使いやすい。
気に入った。
「「「「「「「おめでとうございます、魔王様」」」」」」」
と、跪く魔族たち。
「ありがとう」
再び魔剣を見て、嬉しくなった。
「ふっふっふっ……」
突然、笑い声がした。
だっ、誰だ?
前に居並ぶ魔族たちではない。
「誰があたしを呼び起こそうとするの?」
声は魔剣から聞こえた。
「……えっ、え―――ええ!!」
魔剣が喋った―――!?
びっくり仰天した。
「あなたは誰?……まっ、待って、この魔力の反応は……ごっ、ご主人様?!」
と、一瞬にして魔剣はまたまぶしい光を放った。
「なっ、なに!?」
思わず手で光を遮った。
魔剣が宙に浮かんで少女となった。
彼女はしずかに床に舞い降りて俺にカーテシーをした。
「先ほどは失礼しました、ご主人様」
蠱惑的な美貌、妖艶な姿、煌めく綺麗な長い黒髮、つぶらな黒い瞳。
少し幼さを残す肢体、透き通るような白い肌。
さっき、彼女は俺のことをご主人様と呼んだようだ。
初めて女の子にご主人様と呼ばれた。
ご主人様なんて、とても恥ずかしい呼び方。
「お前は……?」
「はい、ご主人様。あたしは魔剣の剣霊 シルディアです。よろしくお願いします、ご主人様」
「よっ、よろしく、シルディア」
「はい!あたしのすべてはご主人様専属です。だから、あたしは一生ご主人様だけに奉仕します」
「あっ、ありがとう」
これで魔剣を入手した。
俺も目標を決めた。それは魔族を率いて人族を打倒することだ。
その前に、俺は必ず魔法と剣術をちゃんと勉強しなければならない。
俺がチートのような力を得たいという欲望のために……いや、魔族の幸福のために。
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