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【9】魔王、お風呂場の中で倒れる

 フレナも入ってくるとは全然予想しなかった。しかも彼女まで裸なんて。

 それ故に目を閉じて逸らし、顔もさらに赤くなり、体も固まってしまった。


「よろしいですか、陛下?」


 どうしよう……?


 突然すぎて、どう答えたらよいかわからん。


 急に、香水のような匂いが周りに漂ってきた。この匂いを嗅ぐと、頭がくらくらして意識も朦朧とする。


「いいよ……」


 と、意識が奪われたようになって言った。


「……えっ?」


 我に返ったが、さっき俺はどうしたの?


「それでは、陛下はご了解されたのですね」

「えっ?……いっ、いいや!」

「では、お側へ行かせていただきます、陛下」

「おい!ちょっ!」


 フレナは躊躇することなく後ろに来た。しかし、フレナが俺の背中を流していると、扉が再び開いた。


「魔王様、私にも魔王様の背中を洗い流させていただけませんか?」


 この声は……ティリア!なぜ彼女も?!


「なんでお前も入ってきたの?」

「もちろん、私も魔王様の背中を洗い流したいからです」

「ティリア、背中を洗い流すには陛下の許可を得なければならないわ。私は陛下の許可を得たから、陛下の背中を洗い流すことができるのよ」

「ふーん、そうなの。でも、私見たわよ、あなたがさっき魅惑スキルを発動して魔王様に同意させたところをね」

「えっ!?」


 と、驚いたフレナ。


 ティリアの言葉を聞いて俺はわかった。なんだ、さっきは、フレナが魅惑スキルを発動して俺の意識を奪ったのだ。


「でしょう?」

「クゥ……っ」


 彼女たちは俺を挟んで口喧嘩している。


 ちらっと見ると、二人は互いに凝視して目が殺意を飛ばし合っている。

 お風呂場内に湯気が充満しているけれど、フレナとティリアの体つきがはっきりと見える。


 やばい!鼻血が再度……。

 再び顔を逸らして鼻を覆った。


 でもこの時、扉がまた開かれた。


 また誰?……まさか!


「魔王様、よかったら私に背中を流させてください」


 やはりアイナベラだ。当たり前だが、一糸も纏わずだ。


 ああ、恥ずかしく死にたい。


 アイナベラ、フレナそしてティリアもお風呂場の中にいるのを見て、吃驚のような表情をした。


「なぜお前たちもここにいるの?」

「見ての通り、魔王様の背中を洗い流すためです」

「チッ……」


 舌打ちして不愉快そうな表情をするアイナベラ。


「それでも、私が先に陛下の背中を流しますね」


 と、突然に俺の左手を抱きしめるフレナ。


 おっ、おっぱいが当たっている!

 俺は心の中で叫んだ。


「いいえ、私です」


 ティリアも右手に抱きしめた。


 まっ、待て!


「魔王様が疲れた原因は私の魔法授業ですから、私が先に魔王様の背中を流すべきです」


 アイナベラも後ろからしっかりと抱きついてきた。


 うわっー?!


 彼女たち三人が言い爭っているけど、三人のおっぱいが俺に当たっている。


 もう無理……。これ以上もうできなく鼻血が噴き出した。

 そして頭も重たくなり、気を失って倒れた。


「うるさい!私……えっ?!陛下!」

「魔王様!大丈夫ですか?魔王様!魔王様!」

「誰か、助けてくれ!魔王様が倒れてしまった」


 俺が気を失ったことで、お風呂場の中は大混乱になってしまった……。



 ✦✦✦



 気が付くと、俺はベッドの上にいた。


 ここは……?


 天井を見ると、ここは俺の部屋のようだ。


 なぜ俺は自分の部屋に?俺はいったい……そうだ、俺はお風呂場の中で倒れた……。


 しかし……俺が気を失ったなんて、部下たちの前で醜態を晒したなんて、死にたい!もう人に合わせる顔がない、俺は……と、絶望した。


「あっ!刀夜様がやっと目を覚ましました。よかったです」


 俺が目を覚ましたのを見ると、ディアは涙を流して俺に抱きついた。


「心配しました、刀夜様が突然に倒れるなんて!」

「……すまん、心配させてしまった」


 ディアの頭を撫でて落ち着かせ、優しく言った。


 でも目の前のディアを見て、妹のことを思い出した。彼女も泣き虫で、よく俺に抱き付いて泣いた。

 けど、現在は離れ離れだ。彼女は元の世界に、俺は異世界に。


 それに、父と母もきっと俺が失踪したと思って、俺を探しているだろう。なにしろ、いきなり異世界に召喚されたのだから。


 彼たちを心配させたくないけど……彼たちは今、どうしているのだろうか?


 家族が恋しかった。


「その、魔王様、本当に申し訳ございません」

「申し訳ございません、魔王様」

「私も申し訳ございません、陛下」


 ベッドサイドに土下座しているティリアたちは俺に謝った。


 なぜ謝るのか?……いや、理由はわかっているようだ。


 お風呂場の中で彼女たち三人に裸で抱きつかれたことを思い出して、思わず顔を赤らめた。


「魔王様を倒れさせたことには罪があります。私たちを処罰してください!」


 彼女たちの裸体が俺に強い性的興奮をおこし倒れたけど、よく考えると彼女たちはわざとじゃなかったと思った。ただ、俺の背中を流しただけだ。


「処罰なんて必要ない、俺は大丈夫だから」

「でも……」

「でもじゃない、ほら」


 腕を曲げて大丈夫であることを示した。


「だから、お前たちも心配しないで」

「……かしこまりました」

「それに跪かないでくれ、お前たちは無罪だ。立ち上がれ」

「「「はい」」」


 彼女たちは立ち上がった。これでいい。


 外を見ると時間はもうすぐ夜中になるようだ。

 俺はこんなに長い間倒れたなんて……。


「時間はもう遅い、お前たちも早く休んで」

「「「はい!」」」

「それでは、おやすみなさい、魔王様」

「おやすみなさい、魔王様」

「おやすみなさい、陛下」

「うん、おやすみ」


 彼女たちは俺にお辞儀をして部屋を出た。


「シナ、ミア、お前たちも早く休んで。俺専属のメイドを務めて、きっと疲れただろう?」

「いっ、いいえ!」

「そんなことはありません、魔王様!」

「そっか……。まあ、これからもよろしく」

「「はい!」」

「じゃ、おやすみ」

「はい、おやすみなさい、魔王様」

「おやすみなさい、魔王様」


 シナとミアもお辞儀をして離れた。


 今、部屋には俺とディアだけがいる。


「刀夜様は本当に優しいですね」


 と、寄り添うディアだ。

 近すぎる……。そのため、少し赤面した。


「べっ、別に優しくない。おっ、俺はただ……」

「刀夜様、ハーレムを作りましょう。どうですか?」

「……えっ?!」


 ディアの提言は俺をびっくりさせた。ハっ、ハーレムを作りましょうって……。

・面白かった!

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