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女の子たちの話  作者: なす
8/16

最初の日3

真紀のマンションについた。


ロビーの装置に、部屋番号を入力する。

真紀の部屋と通話がつながる。


「はい。加奈だよね?」

「うん」

「ありがとね。入って」


音もなく自動扉が開き、マンションのエレベータに通される。

家につくと、真紀が扉の前で待っていてくれた。


「きてくれてありがとう。いきなりごめんね」

「いいよ、暇だったし」

「この夏遊ぶ予定だった彼氏とも別れちゃったもんね」

「そういうこと」


どうぞ、と言われて玄関に入る。

生活感のないリビングを抜けて、真紀の部屋に案内される。


「うち、お父さんが単身赴任で、お母さんも出張多いから一人なこと多いんだよね」

「へえ。寂しくないの?」

「うーん。いたらいたでめんどくさい。中学くらいからは居ない方が気が楽かも。あ、ちょっと待ってて。麦茶持ってくるね」


改めて真紀の部屋を見渡す。服、参考書、赤本、ファッション誌、化粧台。ああ、この子の部屋はこんな感じだろうなと思った。この子は、なりたい自分になるために、やれることをやる人間なのだ。しかも実現能力が高い。芯が通ってて、強いのだ。


「お待たせ、これ麦茶。喉乾いたら勝手についでね。加奈、私がつぐとかそういうの嫌でしょ」

「ありがと」

「でね、葉山君とのこと聞いていい?まず私のことより、加奈がどんな感じだったのかを知りたいの」

「どんなって言っても、そんな大したことじゃないよ。普通にデートしてて、最後の方で手を握られて、無理ってなっただけ。葉山君には悪いけど、なんかすごい気持ち悪く思えちゃったんだよね。理由は私も分からないけど、『あ、これ無理だな』って一瞬で分かるくらい」

「手、握られたんだ」


柔和な真紀の空気が、一瞬だけぴりついた。


「じゃあ手を握られるのって普段からだめなの?」

「そんなことないよ。普段の生活の中だったら別にって感じ」

「それって、嫌らしい目で見られながら触られるのが無理だったってこと?」


突っ込んだことを聞いてくるなあ。


「わかんない。どうなんだろ」


うーんとうなりながら、真紀が何かを考えている。


「じゃあ加奈は、もう二度と葉山君と触れたりしたくないなって思っちゃったの?」

「そうだね。ちょっときつい」

「なるほどねえ」


私の状況を解析しているようだった。解析してどうするつもりなんだろう。


「じゃあさ、私と手を触れてみない?」

「いいよ」


そう言って、手を前に出す。真紀が手をそっと重ねる。

細い指だった。


「どう?嫌じゃない?」

「大丈夫だよ」

「ほんと?無理してない?」

「大丈夫だって。女の子同士だし、葉山君のときとは全然違うよ」

「そっか」


そのときの真紀のほころぶ笑顔が、私の脳裏にずっと残っている。

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