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女の子たちの話  作者: なす
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最初の日1

あの夏の話をしよう。


そのころ、私は弱っていた。

男の手に触れた瞬間、なぜ嫌悪感が沸き上がったのか。ベッドの上で考える。


男子と肌が触れたことがないわけじゃない。

日常生活の中で手が触れてしまうことなんていくらでもある。

それに嫌悪感を覚えたことはない。


なぜ、あの男とのデートのときにだけ嫌悪感があったのだろうか。

考えたくはないが、考えなければいけないので考えた。


決定的な違いは、可能性の有無な気がした。

あの男は私の手に触れたとき、その後のことを想像しながら手を触れたはずだ。

私の唇に触れることや、私の胸に触れることを想像しながら。

その可能性を現実味のあるものとして彼は考え、私はその可能性に耐えられなかった。

つまりあの男との"その後"は、私にとって現実味を帯びるだけで、吐き気を催すほどに耐えがたいものだったのだ。


誰でもこうなるのだろうか。

分からない。なる気もするし、ならない気もする。

好きじゃないからこうなったのだとして、私は誰かを好きになるまで恋愛ができないのだろうか。


そうなのだろう。本来は、好きになってから恋愛をするのだ。

とはいえ、私はそれを上辺の名目だと思っていた。

だって、好きになってから恋愛をするのなら、世にこんなにも恋愛が溢れている訳がない。

みんなそれなりに折り合いをつけながら、ステータスのためだったり社会的な役割を果たすために恋愛をしているのだと思っていた。

恋愛というものの中で、"気持ち"が大きいファクターだとは信じていなかったのだ。


もし体を許せる好きな人としか恋愛ができないなら、好きな人が現れなかったらどうすればいいのだろう。

それとも、好きな人が現れない人間なんていないのだろうか。

そんな人間はいないのに、私はそうなのだろうか。


もしかしたら、体に触れないという条件のもとで交際してくれる人もいるかもしれない。

でも、そんな可能性がほとんどないことも私の理性は理解している。

通り過ぎるときの男たちの視線から、私は男という存在をかなり早期に理解させられていた。


なんだか、疲れてしまった。

結局のところ、いつかくる誰かに望みを託すしかないのだ。


蝉がうるさい。

あいつらも元気に発情してるなあ。そんな風に思った。


スマホがなる。

クラス女子のグループLINEだ。

みると、中学のころからの同級生の真紀が、私のデートの顛末を聞いてきていた。

めんどくさいなあ。夏休み前、クラスのみんなに言うんじゃなかった。

ひとまず見なかったことにして、そっと瞼を閉じた。

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