表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女の子たちの話  作者: なす
16/16

これから3

別に馬鹿になったわけじゃない。流された訳でもない。

ただ単に、一緒にいたかっただけだ。


それが代償なら、ちゃんと支払おう。

ルールにはそれなりに従う方だ。


いま、私はたくさんの未来を捨てた。

他の未来を保持しながら一緒にいられるほど器用ではないから、多分捨てたんだろう。


真紀はこちらを見ようとしない。


「どうしたの?」

「あのね」

「うん」

「あのね、これからお願いします」


顔を見せないまま、そっと呟く。

彼女の、自分が主導で動いていないときの弱々しさに笑ってしまう。


真紀がそっと体を寄せた。

私は二人の間にあった隙間が好きだった。

でも、真紀はそうじゃない。そういう違いを少しずつ埋めて、苦しんで、一緒になっていくのだろう。そうであってほしかった。


付き合ったとしてもやっぱり私は私で、普通の恋人みたいには欲しがれなくて、これからも真紀は少しずつ傷ついていくんだろう。それでも言葉で解決しながら、私たちは生きていけるんだろうか。

少女漫画のハッピーエンドのようで、それなのに私はまだ冷静だった。


お湯に浸かった足が温かい。


「ねえ加奈。ありがとう」

「こちらこそ」

「私がんばるね。加奈のことずっと、世界で一番分かってあげられる人になる。こうなったら、死んでも後悔させてあげないから」

「真紀がそういうと、なんでも実現できそうだなあ」

「頭いいからね、私」

「そうだね」


きっと大丈夫なんだろうなと思う。


北風が吹いて、真紀が私の肩に頭を預ける。

マフラーからはみ出した髪が、私の頬をくすぐる。


真紀が私に預けた体重がうれしかった。

無理しないで、頼ってね。


北風が吹いて、私たちはまた身を寄せ合う。

髪がなびいて、いつも彼女がやっているように、真紀の首筋にそっと歯を立てる。

生臭い味がした。


「加奈、無理はしないでね」


ああそっか。分かるんだ。私は私のために噛んだんじゃないって。

そっか。私はずっとこの子と生きていくんだ。

その時初めて、私は自然にそう感じた。


それは泣きそうなくらい嬉しくて、私はこのとき、生まれて初めて一人じゃなくなった。


二人で入る足湯は、温かくて、気持ちよくて、世界で一番幸せだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ