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女の子たちの話  作者: なす
10/16

つまらないこと1

動物園の日に言った、世界で一番つまらないデートをしよう。

私の方から真紀にそう送った。


つまらない場所へ行って、つまらなく遊ぼう。

私と遊ぶのに、そんなに頑張って準備しなくていいんだって伝えたかった。

私は現実主義者で無駄なことはしたくなくて、それでも悔しいくらい、真紀との時間は現実として楽しかった。


真紀からの返事を待つ。

自分の部屋にいても、ときおり真紀との行為を思い出す。

毎週、真紀の部屋で私たちは汗ばみながら体を重ねている。

あれは、いけないことなんだろうか。


例えば、学校では異性不純交友はいけないことだと言われている。

私たちが同性だってことを考慮しても、学校としてはこれはいけないことではあるのだろう。

でも考えると、そもそも異性不純交友ってなんだという気持ちになる。

大人になったらすることが奨励されているのに、なにが不純なんだ。


意味も分からず不純と言われ、10年後には早く子どもを産めと社会から急かされるのだ。

行為そのものに善悪なんてないんだろう。この行為に意味をつけるのは、私たちをとりまく状況だ。そして多分、その状況はこれから一年ごとにめまぐるしく変わっていく。


変化する社会の要求を一年ごとにこなしていかなければ、私たちはあっという間に取り残されてしまう。なんだか全部、気持ち悪い。


それでいうと、私たちの行為は今も未来も社会からは望まれていない。

少なくとも社会は、女性同士の性行為を必要なものと認識していないだろう。


望まれないままに、私たちだけのために行う。それはやっぱり、退廃的な気持ちよさがあった。

私たちはどこへも行かない。誰にも望まれていない。でも、やりたいからやる。


意味のないことの気持ちよさを、振る舞う必要のない楽さを、私は知ってしまった。

真紀が教えてくれた。


でも私たちは、いつまでここにいるんだろう。

いつまで踏み外し続けるんだろう。

そんなことも頭によぎる。


私はまだ17歳だから、焦る必要はない。

でも5年後、男の人を好きになって、男の人とやって、その人といるのが真紀といるよりも楽しくて、そんなことがありえるのだろうか。

ずっとそれが怖かった。


スマホが鳴る。真紀からの返事だ。


「家に来て話さない?」

「いいよ。でも今日はやらないからね。勉強で疲れてるから、あんま体動かしたくない」

「はーい」


このメッセージを誰かに見られるだけで、私は終わるなあ。

そのくらい、私たちは後ろ暗いのだ。

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