書いてみたい小説のタイトルと概要をまとめたもの
タイトル:《ヤンデレ少女と薄幸男のヒストリカ》
概要;つまるところ、人生は蛇足なのだ。そう悟ってしまうほど兎に角不運な男、エルドレッド。不運なこと? そりゃあ誰にだってある。だが、冒険者をすれば毎回出張った先に剣帝級のイドがいるせいでまともに依頼がこなせやしない。兵士になればすぐさま戦争がおきて、しかも敗けたおかげで経済が崩壊してめでたく失業者の仲間入りをし、行商になれば高頻度で盗賊の襲撃がある。ない金を握って教会に縋っても「何も憑いてないですよ」と言われる始末。そんな男が運び屋として馬車を走らせていると遠くで乗合馬車が盗賊に襲われていた。急いで駆け付けるも少女をひとり残して乗客は全滅。悲しみにくれる少女をエルドレッドは故郷まで連れ帰ることにする。その道中、不運を諭し、どれだけの罵倒も真剣に受け止めるエルドレッドの姿に少女は惹かれていく。家族の喪失の埋め合わせを彼に投影するようになり、エルドレッドへの好意は病的になっていく。そんな、定職を求めて今を生きる不運な男と病的なまでに彼を愛する少女の物語。
タイトル:《8度目の裏切りを経て》
概要:生きるために人を殺す。それも人の営みで。裏の世界でも人情はあるものだと信じていた。それでも彼が愛した女はいつも佳境で彼を裏切る。一度目の裏切りから戒めとして一本、腕に傷をつけた。しかし、彼は悪に徹しきれず人の愛を信じようとして。腕の傷に8本目を刻もうとして、今更彼は悟った。そうして追手から逃げ、何日も歩き続け、森の中に見つけたのは小さな小屋。随分年代が経ったであろう小屋の中には質素な寝台で静かに眠る純白の少女。彼女は何日経っても起きやしない。初めは外の騒ぎが落ち着くまでの滞在のつもりが、いつ彼女が起きるのか、どうして彼女がそこにいるのか、そんな興味を抱くようになる。雨の日、窓から吹き込む雨が彼女を濡らす。しかし、ふと体を見やれば体は不自然なほどに戻っており、彼女の手が触れた部分が新品同様の美しさを保っていた。それでなんとなく彼は彼女がここにいる理由を察した。そして、ある日、彼女が目覚める。
"髪は整えておらず、服はカビたような、血なまぐさい臭いが目立つ。左眼には大きく覆うような眼帯がある。髭は適当に生やされ、意図的ではなく、時間のままに成長を続けたのが分かる。
彼の表情は生気を感じさせなかった。眠っていても分かる。いっそ全てを諦めて開き直ってしまったような、進取に欠ける雰囲気を持っていた。
強盗犯、強姦魔、殺人鬼。そう言われても無理はないような風貌であるのにそれでも。それでも。
「……ぁ」
彼女は笑った。弱々しくも、確かに。
それは切なさを感じる笑みであり、喜びを噛み締めたような笑み。
見る者に人知れず涙を流させるような儚げな笑み。"
タイトル:《そして、僕は心臓を差し出した》
概要:彼にとって欲しいのは友達。分け隔てなく接してくれる友人。努力もした、溶け込めるように、人とかかわれるように。だというのになぜか結果は真逆に進んでいって。結局すべてがどうでもよくなって友達になれるなら人でなくても良いと考えるようになって。金に釣られてやってきた友達まがいを染料に描いた魔法陣。そこに顕現した、大鷲の顔と猿の手、蜥蜴の尻尾を持ちながらも人の姿をした高貴なる存在。歓喜に震える手で少年は告げる。「血と肉とに繋がれた醜い契約を交わそう。この心臓を引き換えに、永久に続く繋がりを共にしよう」。しかし、悪魔は首を振る。「貴殿の格が高すぎるのだ。その格とこの供物ではどう足掻こうと私は貴殿を主と仰ぐ他ない」。血という呪われた格。絶望に歪みならばもう殺してくれと嘆願する少年に悪魔は一つの提案をする。「より高位の存在に呼びかければ良い。貴殿の供物をもってしても対等な友として契約できるだけの高位の存在を」。かくして少年は悪魔を連れて対等な友達を得るために強大な悪魔が息づく世界へと転移する。
"「契約は為った。今この時をもって私は貴殿の下僕となる。私は伯爵階級、“智を備え、あらゆる位置を把握し、あらゆる過去を見通す”職能を持つ者。名をロバイド。新たなる主に栄光あれ。“高貴を従えし者”へ盲目の愛を」"
タイトル:《異世界転生願望者》
概要:藤代蓮は死にたがりである。別に何かを憂いているわけでも、絶望的な状況に苛まされているでもない。……いや、強いて言うならば漠然とした不安、とでも形容しようか。ただ無意味に過ごして16年。これからも続く人生。将来に思いをはせ、死ぬまでの道筋をたどると、そのなんと長き事か。これまでも16年間の人生は決して短くなかった。だというのにまだ折り返しにもなっていない。これからも死ぬまでの人生をただただ歩み続ける。そんな苦痛が人生だというのか。蓮にはそれが耐えられない。死までの遠い道筋をたどるのは億劫で仕方がない。だから死にたい。そのような動機で彼はいつものように自殺の名所に足を運ぶ。フェンスのされていない崖。一歩踏み出せば忽ち真っ逆さまだ。そう、一歩踏み出せば楽になれる。だが、進めない。怖い? いや、違う。死に対しての不安なんてあるはずがない。怖いのは死後の存在だ。蓮が望むのは思考の終わり。考えることの停止である。もし、死後が存在するならば、あるいは異世界なんてふざけたものが実在するならば、蓮の望みは死してなお叶わぬことになる。死後の世界なぞ正確に行き来したものはいない。シュレディンガーの猫。観測されてない故、分からない真実。だからこそ蓮は恐怖する。そんな蓮のもとに現れたのは狩野隆也という同級生。文武両道、容姿端麗、家事全般をこなし、様々な知識や技術を備えた天才。そんな男がなぜ自殺の名所にいるのか聞けば彼はこう答えた。「俺が死ぬ時の参考にしたい」。聞けばこの男、異世界に転生したいのだという。そのまま人生を送れば間違いなく世に名を残し、あらゆる自由を手にできる男がファンタジーと非常識とこの現実でも叶う酒池肉林を求めて異世界に行きたいのだとほざく。そんな話があるものか。蓮は隆也を馬鹿にする。「いいかい? 人は死んだらそこで終わりなんだ。死後の世界だとか、ましてや異世界なんて、そんな不合理で非論理的な世界があってたまるか」「なら、なんで死なないんだ? 死ぬことは怖くないんだろ? 死後の世界があることが怖くて死ねないんじゃないのか?」そう返され蓮は歯を食いしばる。そして苦しみ紛れにこう返す。「なら、君だってさっさと死ねばいいじゃないか。死ねば異世界とやらに行けるんじゃないのかい?」その返しは苦笑い。「……いや、怖いんだよ、俺も。もしかしたら異世界なんてものは鼻から存在しない人間のまやかしかもしれない。そうなったら、期待を抱いて無様に死んだ俺は何一つとして夢を叶えることがないまま肉塊として腐り落ちる。それが、怖いんだ」だから、と。彼はつづけた。「俺たちで異世界が本当にあるのか調べてみないか?」と。そうして始まる物語。異世界の存在を信じない青年と異世界を信じる青年の異世界検証の話。
タイトル:《ようこそ、極楽街へ》
概要:社畜なんて今更なんだというのか。どこもかしこもみんなそう。苦痛の種類の違いは在れど、死にたいと思うことが一般の世界で山中時重は今日も人間の許容量を超えた仕事をこなし、見当違いな上司の罵倒を浴び、心身を摩耗して深夜二時に帰宅する。そのはずだった。気づけばそこは荒野の真っただ中で。赤茶けたこの荒野で人の気配はまるでない。どういうことかを辺りを見渡すと遠くに建物の姿が見える。ひとまずそこへ向かう。そこはどうやら街のようだった。街の入り口は鳥居になっており煙管をふかしてもたれかかる女がいた。「ようこそ、極楽街へ。なんだい、あたしに見惚れでもしたかい?」狐の耳に尻尾。豊満な胸を揺らした彼女は自身を妖狐の浪華と名乗った。困惑する時重をつれて浪華は極楽街を案内していく。糸取り狢が呉服屋を営み、悪婆は何かを抱えている、仙狸が跋扈する花魁通りでは今日も嬌声が響く。人から忘れ去られた妖怪と神が造り上げた人間にとっての極楽。何一つとして努力を求められることなく、自由に飲み、食い、女を犯せるこの世界で時重はなにを見出していくのか。