表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/13

第11話 「僕が今、闇人妻を書いてる意味の話」(前編)

結構真面目な話ですが、最後まで読んでもらえると嬉しいです。

挿絵(By みてみん) 


 他社のサービスで申し訳ないけれども、これはPIXIV FANBOXの支援プラン作成の所にある注意書きだ。「本当にそうだよなあ……」って思う。僕は物書きとしては素人だけど、相場師としての固定ファンがいたからチャレンジ出来た。でも、本当にイチから始める人じゃ、FANBOXは機能しない。かといって特典なしだと、VALUバリューみたいになるだろう。


 だから、本当に才能のある若い奴に創作に打ち込ませて、殆ど見返りのない時代を、【投資】として待てる仕組みが必要だと僕は思う。最初の1~2年を黙って食わせる代わりに、目利きが当たってその人が作家になったら、ちゃんと投資を回収できる仕組み。僕が本当にやりたいのはそういう事だ。


 だから今、闇人妻をやってる。「投資がこれだけ増えて返ってきましたよ」っていう【実績】と、その1~2年を支える【支援者】を作るために。僕のその気持ちが分かってるさとい人間が、4月から僕を支援してる。5月から入れた人たちも、少しずつ分かって来てるだろう。最近はカクヨムの方も始めたし、ランキングにもよく入ってるから、4月とは、雰囲気が違うもの。


 僕が思うに、本当の芸術家っていうのは、「創作さえ出来れば、それだけでいい」っていう途方もない善人か、「良い作品を生み出すためなら、他人の迷惑など知った事か」っていう狂人のどっちかだ。前者のタイプが筆を折る事を阻止し、後者に勝ち逃げを許さないためにも、僕たちみたいな人間が必要なのだ。


 つまり、「芸術に対する審美眼を持ち、金(数字)を増やすことは好きだけど、それが一番には来ない人間」である。ボランティアじゃ先がない。前者はともかく、後者のタイプは、いくら尽くしたって恩に報いようとはしない。人間的にはクズだけど、良いものは作る。そういう人間は本当に沢山いる。


 僕には作品の目利きは出来るけど、人間の目利きが出来ない。だから、出資した作品はちゃんと当たってるのに、会社は上手くいかなかった。だから、誤魔化しが効かないように、【仕組み】で縛る。出資者の匿名性は維持しつつも、金の流れはすべて可視化する。そうすれば、それ自体がイベントになる。


 誤魔化すことに意味がない。あるいは、誤魔化した方が損をする。そういう【仕組み】を最初から作っておけば、出資者は目利きに、作家は創作だけに集中できる。Avacus-PayもFANBOXも匿名性は担保されてるけれど、「誰が、どのタイミングで、どれだけ支援したか?」は、ちゃんと記録に残ってる。それがとても素晴らしい。


 だからこれは、そのまま使えばいい。「今これだけ集まってる」という話題そのものが、支援者に安心感を与え、新たな人寄せになる。問題は、その前と、それから先だ。


 まずは僕たちが支援する。そして、作品が軌道に乗りだしたら、過去の支援実績を元に、【実際にマネタイズする時の、出資権利の配分】を決める。そういう仕組みを自前で作ろうと、僕は企んでいる。


 額も大事だけど、いつ支援したかが、この【仕組み】の重要なポイントだ。駆け出しの頃の100万と、商業化目前の頃の1000万じゃ、圧倒的に最初の100万の方が重い。その1000万がなくてもマネタイズは出来るけど、最初の100万がなければ、作家が暮らしていけないからだ。


 昔はその役割を、心ある編集者とか、専属契約制度が担ってたのだろう。だけど今は、その余裕が出版社の方にもない。音楽業界も似たようなもんだ。ネットは沢山の人間を幸せにしたけど、一獲千金の夢も潰した。ほとんど同じものが、無料で落ちてるからだ。


 同じものが無料で消費できるのに、敢えて本物に金を払う善人はほとんどいない。だからもう、発表から時間のたった作品は広告と割り切って無償で提供し、新作にお金を払ってくれる人を、自前で抱え込むしかない。FANBOXっていうのは、多分そういう仕組みなんだと思う。


 ネットがない世界にはもう戻れないから、作家が消費者と直接向き合って、薄く広くお金を貰う世界になっちゃうのは、もう仕方ないことだ。勿論、それは悪い事じゃない。妥協のない創作さえ出来れば、お金なんかどうでもいいという作家に、筆を折らせないで済むからだ。2万冊を売ることは出来なくても、200人を本気で感動させられる作家なら、この世に沢山いるだろう。


 本気の感動に年1万なら、全然高くない。むしろ、格安とさえ言えるだろう。200人でも実家なら暮らせるだろうし、これが、500人、1000人となっていけば、十分に裕福な暮らしが出来る。というか、1000人に1万円を出させる力のある作家なら、絶対に出版社が放っておかないはずだ。

 

 この最初の200人を用意し、500人から1000人に増やす手伝いを僕はしたい。そして、金の匂いを嗅ぎつけてきた連中に作家が食い物にされないために、代わりに交渉する。それは多分、「良いこと」のはずだ。作家に筆を折らせずに済むし、500から1000人の過程で僕らは十分に回収できる。

 

 そしてもし、既存の商業化ルートに乗せることが出来れば、最初の出資は何十倍にもなって返ってくるだろう。というか、【本気で200人を感動させられる作家(≒年1万円、出させられる作家)】なら、それを商品にするのは全然難しくないと僕は思う。目利きする人間がいないか、売り方が間違ってるか、あるいはその両方だ。

 

 僕は相場の世界では、ずっと騙しあいを楽しんできた人間だけど、創作者に対しては、ずっと誠実に接してきた。金を持ち逃げされたり、作品が完成しなかったことが何度もあって、そっちの世界じゃ大損だ。


 だから、ゲームやアニメにはもう触らないし、ボランティアもやらない。共同作業は、一人の手が止まると全員の作業が停滞するし、ボランティアは結局、「結果が出なくて当たり前」、「作品の価値はゼロ」って、自ら言ってるのと同じだもの。

 

 僕の師匠である菅野さんは、「自分を褒める奴は、すべて敵と思え」って真顔で言うような人格破綻者だったけど、「結果が全て」という価値観を叩き込んでくれた事には、本当に感謝してる。僕は誰かに褒められたい訳じゃないし、作家になりたい訳でもない。他人のやらないことをやって、ちゃんと「結果を残す」ために頑張ってる。


 僕は今、伊集院アケミとして創作活動をしてるけど、相場師して復帰したのはもう4年半も前の話だ。完結まであと半年として、この5年間の【DJ全力】としての活動を総括をするために、闇人妻を書きあげることが必要だと思った。


 じゃなきゃ僕は、相方だったDJ君への贖罪の気持ちに、ずっと苛まれることになる。2年前、僕が自分の我を通し、彼の気持ちを思いやらなかったために、僕は彼に筆を折らせてしまったからだ。

 

(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ