ー続くー
薔薇の夢を見たんです。とても綺麗な薔薇園の夢を。
彼女の名前は、メンフィス。
メンフィス・ミカ=コールダーティ
位牌の字書きである。
「今日は夢見が良くて仕事が捗りそうです。あなたの分も書いてあげましょうか。」
ミカは庭の枯葉を履きながら言う。
「こら!無駄話なんぞしとるから全然片付いとらんじゃないか!」
長ぼうきを片手に本堂の雑巾がけを終えたミカの父であるところの、メンフィス・ヨハン=シュトラディバリスが作務衣姿でヘルプに来る。
「すまないね、毎朝。お詫びと言っては難だが、朝ごはんの支度が出来ている。先に食べてきなさい。」
「はい、ではお言葉に甘えて。」
「あー!ずるい!私も!」
「お前は食べすぎだ。おにぎりで我慢しなさい。」
「はーい。」
親子仲睦まじくて妬けてくる。
寺の勝手口側から家に上がり、使用人室側へ進む。
「あ、いらっしゃ〜い。そこに座ってね。」
と、何故かナプキンが立てられた席を指される。
「今日の朝ごはんはなんでしょうか。」
緊張がちに聞く相手であるこの人は、メンフィス・幽々子=西行寺、この寺の母前である。
「今日はですね、卵納豆、鮭の塩焼き、卵と大根の味噌汁です。」
「すごいですね…」
「さぁ、召し上がれ。」
「いただきます。」