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2話

ぶりっ子っぽい子が出てきますが、わりといい子なので見逃してください(?)

「……あの、お兄様」


「なぁに、メリー」



 特に会話もなく食事が終わった。今は部屋に戻りお兄様とメリッサとお付のメイドの1人であり、メリッサから聞いたことだが一緒にドラゴニュート国に着いてきてくれるアリスも一緒に荷造りをしてくれている。服や家具はあちらが全て用意してくださってるらしいから、5歳ということも配慮してぬいぐるみやお気に入りの物なら持っていくことを許されたのでそれをまとめているだけなんだけど…



「こんなにぬいぐるみあっても、置くとこに困っちゃいます…」


「え、そうかな…」



 私の部屋にあったぬいぐるみは持っていくとして、明らかにその倍の量のぬいぐるみが周りに転がっている。きっとお兄様が良かれと思って持ってきてくれたんだろうけど…おおい。軽く十数個はある。



「元から私の部屋にあった分だけ持っていきます。」


「そっかぁ…それじゃあ、メリーの部屋に残った子達は置いていくね」


「毎日掃除しますからね、お嬢様」


「うんっ…あ、アリス。ここからこっちのぬいぐるみだけ詰めてね」



 せっせとアリスがぬいぐるみを鞄に詰めているので、持っていく子と持っていかない子に分けておいたのを伝える。ちなみにアリスは最近お屋敷にやってきたメイドだ。なんでも遠い田舎の方の口減らしに出されて来たらしい。お兄様と同い年で、見た目は金髪碧眼のお人形さんみたいに可愛いけれどかなり腹黒い。ぶりっ子ぽいし。でも何故か私にだけは可愛がってくれている感がある。私と二人きりの時はぶりっ子ってないし…仲良い女の子は少なかったし、結構嬉しい。私自身も少し姉と思っている節もある。



「はいっ…あっ、ルーファスさまぁ、こちら持っていきますかぁ…?」


「ん?そうだね、メリーの髪がよく映えそうだ」



 上目遣いでお兄様を見つめるもその口から放たれるのは私の事ばかり。でもめげないというか、単に愛想振りまいてるだけかな?本命は別のいるのかと思ってる。



「そうですよね!では詰めておきます。…お嬢様、チョーカーの種類は如何しますか?お嬢様のお気に入りは持っていきますが、それ以外にも十数個は持っていかれるようメリッサ様から受けてますので。お嬢様の好み的には、こちらがよろしいと思うのですが…」



 チョーカーはΩにとっては必須アイテムだ。実は運命のつがいでなくとも、つがいというものは成立する。それはαがΩの首を噛むことだ。別に子供ができる確率が上がる訳でもないけど、もし運命のつがいと出会ってもつがいがいたらその人とはつがいになれない、というデメリット満載のもの。

 メリット…というか本人にメリットはほとんどないのだが、例えば悪い貴族が気に食わない家に1人しか子供がいなくて、なおかつその子供がΩだった場合。そういう仕事をしているαに依頼して無理やりつがいになればその家系はほぼ途絶える、という訳だ。しかも狡いことにαは何度でもつがいを変えられるがΩは強い精神的ストレスから二度とつがいが作れず一生発情期に悩まされる。つがいになれば発情期のフェロモンが無くなってつがいだけを誘惑するらしいが、そのつがいがいないのだからフェロモンが出てきて見知らぬ人すら誘惑してしまう。まだ発情期になったことは無いけれど、聞いただけでぞっとする。

 だから予防としてチョーカーを付けるのが常識となる。結構形は自由で、レース、フリル、レザー、宝石等々それぞれの好みだ。ちなみに私はレースばっかりつけている。フリルはくすぐったいし、レザーは色が濃いものばかりで私の雰囲気には似合わないらしい。宝石は首が重くなる。レースは軽いし、あんまりくすぐったくないしデザインも色々あって結構お気に入りだ。



「うん、…えっと、ここからここまでと、それ。あと右端のと、それから3つ目がいい」


「かしこまりましたぁ。」



 手際よく箱に詰めていき、お昼前には準備が粗方終わった。昼食も終わり、夜になればお屋敷に帰ってきた。なんでも、国内にはテレポートの魔法陣が備わってるから貴族のお出かけは大半それを使ってるらしい。だからそこそこの距離のあるお城まで日帰りなんだね。



「ただいま、メリー、ルー」


「はぁ…」


「おかえりなさい、お母様、お父様」


「おかえりなさい。お父様、私、いつ出発なの?」



 帰ってきて早々だけど、最初に聞きたいのはそれ。心の準備とか、心の準備とか、心の準備とか必要になってくる。王妃になるのはもちろんだけど、家族とも離れて見知らぬ土地に嫁ぐ。相手の人が男か女かもまだ他国の事を習ってない私としては相手が人じゃなくてドラゴン族ってことしか知らない。しかもお兄様から聞いた話だと、あの国に喧嘩を売った国は残らず焼け野原となっているらしいし…



「こちらの予定で決めていいそうだが、最高で今月末…まぁつまりは来週までに発って欲しいとのことだ。」


「来週…わかりました。荷造りはもう終わってるので、いつ出発でも構いません。」



 そう言って微笑めば苦笑する父と母。そういえば私、5歳児だったんだ。手遅れだろうけどこんな物言い5歳児らしくないし…でも性格とかの軸は元のメリリースだからなんとかなると信じよう。



「メリー、そんなに頑張らなくてもいいんだよ」



 うん?



「そうよ、貴女はまだ5歳だもの。嫁ぐとはいえ、婚姻がむすべる成人まではまだ7年もあるの。だからその7年間はまだ婚約関係。まだそこまで頑張らなくてもいいのよ」


「そうだよ、僕だって次期領主になる予定だけど、まだ実感も湧かないもん…」


「……でも、心の準備が必要だと思うんです。私はまだ5歳ですけど、王妃になるんです。ならあと7年の間でその心構えとか、色々と…だから、その、」



 上手く言葉に出来なくて口をもごもごさせているとそっと暖かな手が私の手を包んだ。



「…メリー、頑張らなくていいなんて言ってごめんなさいね。実は……お母様達が寂しいだけなのよ…」


「え」



 目の前の3人の目から滝のような涙が溢れ出した。お母様は控えめだけど、お父様とお兄様は号泣だ。お兄様は私をがっしりと抱きしめ、お父様はその上から包むようにお兄様ごと抱きしめた。二人とも案外力強いから、ちょっと苦しい。



「まだ5歳の娘が他国に嫁ぐなんて寂しくて死にそうなんだよお父様!まだいっぱい可愛がりたいのにぃ!!」


「僕も寂しいいいいいい!!メリーと離れたくないよおおお!!!」


「……お、お手紙書きますね…」


「絶対だよ!!」



 泣きつく家族を慰めながらじんわりと目尻が滲んだ。私だって離れるのは嫌だ。私と混ざったメリリースが大泣きしている。それでも、行かなくちゃいけないと決心していた。元からメリリースは強い子だったと実感する。私だったら、きっとしばらく部屋に塞ぎ込んでいただろうな…


 皆と話し合った結果、次の週に私はメンシュ国を発ったのであった。

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