僕のお父さん 国重渡②
「システムクリア、起動確認」
全長3メートルほどのゴーレムのような物体が立ち上がり、そこから声がしてきた。
「反政府軍のバカ共がまたやられにきたぞ。最近、奴らはロケットランチャーを持ち出しているからな。戦死しても補償は少ないぞ」
俺の名前は国重、階級は一頭特尉。民間軍事会社でこの特殊装甲パワードスーツ、ギガントのオペレーターとその教官をしている。
日本は自衛隊を批判し、そして壊滅させるほどの世論をぶつけてきた。ならばと自衛隊はなんと民間軍事会社へと変貌を遂げた。
株式会社、日本民間防衛公社だそうだ。
文句があるなら株を買え。とのことらしいが、未公開株にしたらしく、国有財産の1つらしい。
まあ、民間企業になったということでどうなったかというと、給料が増えた。危険手当に特殊技能手当などなど、自衛隊時代にはなかった物が給料として存在した。
逆に危険度が増した。志願制ではあるが、こうして海外への出向という形での任務が出来た。
紛争地帯は無理だが、正常不安定な国での要人警護や新兵器の売り込みを兼ねた教官役などができるようになった。
眼の前にまだ遠いが敵が乗っているトラックが見えた。トヨタご自慢のピックアップトラックだ。どこの紛争地帯でもコイツは出張ってくる。ご丁寧に改造して対空砲だの、無反動砲、兵員満載で縦横無尽に駆け巡ってくる。メイドインジャパンの傑作だ
「毎度、日本製品をお買い上げありがとうございます。出来れば新車にお乗り換えくださいな」
パワードスーツが手にしていた30ミリ機関砲を狙いをつけて遠距離から狙い撃ちすれば曳光弾に導かれるかのようにトラックに被弾。積んでいた兵員と武装、そしてトヨタのピックアップトラックは無残なスクラップの塊となった。
「さて、まだ来るぞ。新人共、生き残って美味しい酒を飲むぞ」
教育している現地政府軍は重機としても使えるパワードスーツに期待しているらしく、一個増強中隊、12機の導入を検討しているようだ。
兵器輸出するな?コイツはパワードスーツ、重機と同じ工作機械だ。文句があるならトヨタとかにも言え。偶然、機関砲とかに対応できるオプションがついているだけだ。
警備会社が戦争するな?戦争じゃない、反政府軍、つまりテロリストや犯罪者でしかない。警備活動だ。ただ、対応するための道具が現地にあっただけだ。
野党の戦争反対派はそういうことを批判しているが、自衛隊を廃止したのは野党の連中が騒いだからだ。
誰だって、少なくとも野党の馬鹿な政治家よりは自衛隊時代の自衛官のほうが戦争は嫌なんだよ。
一番最初に死ぬのは現場の人間だからな。早く、終わらせて息子に会いたいぜ