冬の楽園
馬鹿みたいに君を求める私と、そんな私をドロドロの優しい沼へゆっくり引きずり込む君。
きっとここから抜け出せない。
今年も君とやっとあうことができた。
眠りかけていた記憶を辿ってやっと見つけた愛しの君。
遠く暗闇に差す一筋の光。
そんなドラマチックな言葉さえ思い浮かんだ私はかなり今浮かれている。
「やっとあえたね。ずっとずっとこの時を待ってたよ。」
思わず顔に笑みが漏れた。
君さえいればどんなに辛い世界も乗り越えることが出来る。
真新しい今季人気の可愛い模様を着飾って君は人気アイドルのよう。
憧れの的、みんなが我先にと君に群がるほど。
「ああ、やっぱりこれだよねえ。」
寒さで緊張していた身体がふにゃふにゃりと緩み切る。
緊張していた神経はぐにゃぐにゃと柱の抜けたようになってしまう。
それはまるで乾麺だった素麺を茹でた時のように。
濃厚で甘いひと時をまた君と一緒に味わえる。
「よろしくね。」
朝から晩まで、目覚めからベッドに入るまで。
誰よりも私を甘やかしてくれる存在。
油断をすればすぐに私はあなたに依存してしまう。
気を付けねば、と少しだけ気を引き締めるが五分後には
「あー、もうどうにでもして。」
と身体を君に委ねてしまう私はとても意志が弱いのだろう。
だけどこの甘美な誘惑に勝てる者がいるだろうか。
私が知る限り誰一人としていない。
一度身体を合わせてしまえば君と離れがたくなって寝るのがついつい遅くなってしまう。
「もうちょっとだけ、一緒にいたい。
永遠になんて我儘は言わないからあともう少しだけ。」
冷たい身体を包み込む優しい温もりはまるで楽園のようで。
そっと深く深く君の中へ潜り込んだ。
柔らかな温もりはまるで日向にいるような心地よさ。
ずっとずっと一緒に居させてほしい。
もう君以外いらないよ。
「大好き、大好き。
誰よりも愛している。」
幸福な夢よ、どうか醒めないで。
それでも浮気気味な私はたまに他にも手をだしてしまうけれど、最後にはやっぱり君の元へ戻ってしまうの。
最先端なあの人もあなたには最後には勝てなかった。
最初は満足するのだけど、だんだん物足りなさを感じ、君への愛しさを自覚する。
君はそんな私でさえ優しくすぐに天国へ導いてくれる。
「やっぱり君じゃなきゃダメみたい。」
泣きそうな声で言う私を無言で許してくれる。
まるで「しょうがないな。」って言うようにふんわりと肩から全てを温めてくれた。
君の優しさに底はない。
私は君のその底知れぬ優しさの沼にドロドロとはまってしまう。
「やっぱりもうダメなのかな。
もうそろそろだって分かってる!
私だって分かってるよ!だけど、だけど・・・。」
涙ぐむ私にあなたは首を振ったように見えた。
去る準備はもうとっくに出来ていた。
だけど諦めの悪い私は君を手放せずに、ずるずると今に至る。
しかし、それももう終わり。
いい加減にしないとだめだ。
もう季節は春に差し掛かろうとしている。
これ以上時間が過ぎてしまえば君に肩身の狭い思いをさせてしまう。
邪魔だ、と言われてしまうのだ。
あんなにもみんな君に恋焦がれてお世話になったというのに。
そんなこと望んでいない。
これ以上君を困らせてはいけない。
「・・・来年、また絶対に君を探し出してみせる。
どんなに君が遠くにいたって絶対に探し出してみせるから!」
また君はあの暗闇へ。
そして季節が巡る度、何度だって私は君を求める。
きっと死ぬまで君を求め続けるのだろう。
私の呆れるくらいの独占欲を君は優しさで包んでくれる。
冬の楽園がそこにある限り、私は君を求めるのだ。
はい、こたつのお話でした~。
ところで、こたつの擬人化って良いと思いませんか?
・・・最強の冬の彼氏だ!