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三國ノ華 ◇ 偽リノ陽ノ物語  作者: 言詠 紅華
─ 間章[起]─
13/81

木花咲耶ノ名ノモトニ (1/1)


 住 人間(ニンゲンガ スム) 世界(セカイ)(スナハチ) 人間界(ニンゲンカイ) (ナリ)

 (ソノ) 世界(セカイ)元来(ガンライ) 惟 人間(ニンゲン ノミ) (アル) 世界(セカイ) (ナリ)

 現在(イマハ) (ソコニ) (オニ)其処( アリ )(ソレ) 所以(イツハリノ) 偽之時間(セカイノ ユエン) (ナリ)

 (イツハリヲ) 立上者(タダスタメ) (タチアガリ)正偽シモノ アリ

 (イツハリ) () 時間(セカイ)( ノ )住人(ジュウニン)夫等(ソレラヲ) 呼〈六華將〉(ロッカショウト ヨブ)

 (ソノ) 意味(イミ)(ツヨキ) (ハナヲ)(モツ)六人(ロクニン) () (ショウ) (ナリ)


【人間だけが暮らす世界──即ち人間界にんげんかい

 本来は〝人間しか存在しない〟場所。

 その場所に、今は鬼がいる。

 故にこの時間(せかい)は〝偽り〟なのだ。


 その偽りを正す為に、立ち上がった者達が居た。

 偽りの時間(せかい)の住人は、彼等かれらをこう呼んだ。

 強き〈華〉を持つ六人の将、即ち〈六華將(ろっかしょう)〉と──】



───────────────



 ──〈六華將(ろっかしょう)〉。

 花の名を姓に持つ六人。


 春の闇夜に潜む花、菖蒲(あやめ)


 夏に飛翔(はばた)く白き花、鷺草(さぎそう)


 秋に香る千代(ちよ)の花、(きく)


 冬の雪に(かく)る花、(ひいらぎ)



 そして──花を代表する存在、桜。



 六人で、五種類の花を咲かせる〈六華將〉。

 彼らのうち、一人でも国に所属していれば百人力となるほど、強力な力を持つ存在だ。


 時は今、北方に領土を展開する魏国(ぎのくに)に対し、南西地方では蜀国(しょくのくに)、南東地方では呉国(ごのくに)が中心となって土地を治める、三国鼎立(さんごくていりつ)の時代。

 しかし昨年、北伐(ほくばつ)と称して魏を責めていた蜀の諸葛亮(しょかつりょう)が亡くなったことをきっかけに、現在の三国間は膠着状態にあった。


 そんな状況の中、仲達率いる魏国には、桜が加わったことで二人の〈六華將〉が所属していることになる。

 魏国に所属するもう一人は鷺草。

 そして他国──蜀国には菊。

 菖蒲と柊の行方は、現在もわからないまま。

 呉国は何れかの一人を既に雇っているのではないかと、そんな噂もあるが。

 その〈六華將〉に関して、この時間(せかい)にはとある奇譚(きたん)、即ち不思議な言い伝えが存在していた。




◇───────────────────


 (サクラ) (サキシ) (トキ)(シンシガ) 神使(ウゴク)


 菖蒲(アヤメノ) (シメシハ)(カラス) ()陰陽(インヨウ)

 〝(ハラエ)() 鷺草(サギソウ)(シラザキノ) 白鷺(ゴトク)

 千代(チヨ) ()守護(マモリハ)〟、鬼狼(キロウ) () (チギリ)

 (ヒイラギニ) (ヒソムハ)、〝(カクレ)() 白蛇(シロヘビ)


 逍遙(ショウヨウ) () (サクラ)(スベテヲ) (ツナギテ)

 (マサニ) (ロッカノ) 六華(シンジツ) (シメ) 真実(サントス)


 (サクラ) (サキシ) (トキ)(モノガタリガ) 物語(ススム)

 (ソノ) (サキニ) (アルハ)(イツハリ) ()終焉(シュウエン)


───────────────────◇




 この奇譚は、約四十年前の、桜の鬼がいた時代に言い伝えられたものだという。

 しかし、その奇譚は今になって、こんな解釈をされたのだった。




◇───────────────────


 桜が咲くとき神使(かみのつかい)が動き出す


 菖蒲(あやめ)が示す烏の〝陰陽(いんよう)〟は

 陰影(かげ)陽光(ひかり)の二面性


 〝(はらえ)〟の鷺草(さぎそう)白鷺(しらさぎ)のように

 悪しき者を排除する


 菊が施す千代の〝守護(まもり)〟は

 鬼狼が結んだ契によるもの


 柊に潜む〝(かくれ)〟の白蛇(しろへび)

 雪に忍びて姿を消す


 彷徨う桜が全てを繋ぎ

 〈六華將〉の真実を示すだろう


 桜が咲くとき物語が進む

 そして偽りは〝終焉〟を迎える


───────────────────◇




 このような解釈が成されたことが、奇譚を知らなかった者も知る機会となり、各国でも再び話題に上がるようになったのである。

 解釈の発端は、噂によるととある呉国(ごのくに)の将だという。

 しかし、これはあくまでも解釈。

 その真実を知っているのは〈六華將〉のみである。


 そして、その解釈をきっかけに。

 複雑に絡み合う謎は、徐々に明かされていくこととなる。


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