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小学校中が敵に思えだした頃、下校中にこっそり話しかけてきてくれた子がいた。
幼馴染で、うんと小さな頃に一緒に遊んでいた子。
交換日記を渡された。
私は嬉しくて嬉しくて、あの子が学校では一言も口をきいてくれなくても、そんな事は全然気にならなかった。
私の番の日は、すぐ次の日に日記を書いてそっとあの子の下駄箱にいれた。
すごく幸せだった。
ある日、学校に行くと教室の黒板に何かが張り出されていた。
私の書いた部分の交換日記。
小さな夢は笑いものにされ、密かに思いを寄せていた子には気持ち悪いと蔑まれた。
女子グループのリーダーに、これ以上張り出されたくなければいう事を聞けと言われた。
私はあの子を同じ目にあわせる訳にはいかないと思った。
もってるモノは全部むしりとられ、もっていないモノまで差し出せと言われた。
共働きで不在がちだった親におやつ代も含めて多目に渡されていたお小遣いは、あっと言う間に全部消える事になる。
女子のグループの後ろの方で、あの子が笑ってた。
幸せそうに見える。
皆が交換に勤しんでいる文房具は、私が差し出したお小遣いで手に入れたのだろう。
あの子がそれで喜ぶならいいかな、と思っていた。
とても、とても痛いところがあるけど。
だけどこの事はそれだけでは終わらなくて、親や教師も巻き込む事件に発展した。
なぜなら子供達が親が買い与えたモノ以外のモノを沢山持っていたからだ。
「 あの子がくれるっていうから 」
女の子達は泣きながら私を指さした。
お金やモノで友達を買収した悪者は私という事になる。
ママにまた怒られた。先生にも怒られた。
大人に囲まれて何も言えない。
ちがうのに。ちがうのに。ちがうのに。
あの子もきっとママに怒られたのだろう。私を、恨みのこもった目で見てる。
「 死んじゃえばいいのに 」
あの子が私に、初めて学校で話しかけてくれた言葉。
ごめんね。ごねんね。ごめんね。生きてて、ごめんね。
投げつけられた言葉に私は、曖昧に怯えた笑顔を作る。
「 本当にそうだよね 」
なんて返事する事はできるはずがない。
私はアズサが、怖くてしかたなくなっていた。
゛ 友達なんてもういらない ゛
私が誰かを好きになっても迷惑になるだけ。
友達に嫌われるのがこんなに辛くて悲しい事なら、もう友達なんていらない。