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白鳥の軌跡  作者: 月森 小雨
5/13

【 ∵ 】




小学校全体に響く授業開始のチャイムにほっとして引出をさぐる。



国語の時間。教科書を取り出そうとして息を詰まらす。

教科書の間に違和感。広げきる前に机の中に教科書を押し戻した。


教科書は忘れた事にした。先生に忘れ物で叱られる。

クラスメイトが声を潜めて笑っていた。


2冊目の教科書も駄目にした。

ママにすごく叱られる。駄目な子だって言われる。

なんて説明したらいい?また買ってもらえる?


それよりママは話を聞いてくれるだろうか?

でも、もうこれは使えないよ。だって教科書の間で芋虫が潰れてる。



放課後、パチパチと音を立てて燃える焼却炉の炎を、じぃっと見つめていた。

顔が熱い。それでも形の定まらない炎をただただ、見つめる。


゛ えい ゛と芋虫の亡骸を納めた教科書を投げ入れた。


これでいいのか解らなかったけど、この教科書を誰かに見つかるほうが怖かった。

隅から縮むようにして黒い焦げが燃え広がり、教科書はなんだかよく解らない物になる。


きっと、文字も芋虫も挿絵も煙突から出て煙になって空に溶けてったんだろうなと思った。私もそうなってしまうほうが、楽な気がした。




給食の時間。は、とうに終わった。

食べれないものが机に残ったままの掃除の時間。


先生が来る。やっと終わるかと思われたその時、食べれないままお椀に残った品々を一つのお椀にまとめられる。


ぐちゃぐちゃ、ぐるぐる、と先生がかき混ぜた。

最後に牛乳が注がれる。

机にあるのは白い液体と食べ物だったものの塊。 


見上げた先で先生は笑ってる。私はスプーンを握って意を決した。


゛ 好き嫌いはいけません ゛だから、私は食べられないモノがどんどん増えた。

それでも笑う。調子を合わせて。

耐えて笑って、口に運ぶ。気持ち悪い。でもまた笑う。

食べる事が嫌いになった。誰かと食べる事は特に、苦しい作業でしかないから。



子供は嫌いだなと思ってたけど、大人も嫌い。

誰も味方はいない、だから一人でここで頑張って生きてかなきゃいけない。


でもなんで、頑張って生きていかなきゃいけなのかな?




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