06 時間を止めて
船に着くと、戦いは終わっていた。もともと生きていた者達が倒れている。相討ちだ。負けや勝ちなど、どこにもない。静寂だけがあった。
ウェンは何も考えられなくなった。
「フェンロン・・・フェンロン?」
名前を呼んで、見渡した。どこにいるのか。姿が見えない。血まみれの人の体を避けたり跨いだりしながら、船室に入った。
「フェンロン?」
「・・・ウェン・・・。」
フェンロンの声だ。ウェンは急いで声のした方に行った。だが、そこにはもとのような美しい妻はいなかった。床に倒れ、もう身動きのとれないくらい怪我がひどい。顔にひどい火傷も負っている。
「フェンロン、もう大丈夫だ、すぐに止血を―。」
「ウェン、もういいわ。嘘もよして。」
もう助からないだろう。分かっている。でも、何もしないのは嫌だった。まだ人間とは違うから、何とかなるのではないか、と思いこもうとした。心臓が破れそうだ。
「喋るな、はやく血をとめないと。」
「ウェン・・・アルを・・・あの子をお願い。」
フェンロンは、ふうっと大きく息を吐くと、静かに目を閉じた。
「フェンロン・・・?」
もう分からない。何が起きている?それっきり動かなくなったフェンロンを床に降ろし、ウェンは部屋の隅へ歩み寄った。今になって、自分が血まみれなことに気付いた。
「アル・・・。」
生まれて間もない自分の息子が眠っていた。何が起きたかも知らずに。子どもが本当に羨ましい。そっと抱えた。フェンロンの胸には、魔術の直撃をくらった跡があった。アルを庇ったのか・・・。
「お頭!」
振り向くと、部下が立っていた。
「どうした・・・。」
「クシュ族は全滅した模様です。」
部下はそう言うと、ウェンの足元に横たわるフェンロンを見て、息を飲んだ。
「全滅?」
ウェンが部下に聞き返し、息子を抱えて部屋を出ようとした時、かすれ気味の声が聞こえた。
「まだ終わっていない、ウェン・ツェン!」