04 歪んだ道
アイエスが腕を高々と上げると、骸骨達は、手の武器を振り上げた。そして、神官がその腕を振り下ろすと同時に、こちらへ向かって走って来た。正直、気持ち悪い。
海賊達は、雄叫びをあげ、斬りかかって行った。死なないと言っても、武器を取り上げてしまえば、ただの骨だ。力任せに砕いていった。再生が難しいと見ると、海賊達は更に士気を高めた。魔術など、まやかしにすぎない。命を懸けているくせに、狂ったような興奮が押し寄せて来る。
「お頭、早く!」
ウェンは部下が自分の為に道を作ろうとしているのを見た。一瞬だ。少しでも呼吸がずれれば、道は崩れる。幸い、クシュ族はそれには気付いていないようだった。ウェンは少しほっとした。今日の為に、船の下働き一人まで、全て自分が人選した。狂いは無かった。
一瞬。
ウェンは水場を走り抜け、クシュ族の合間を縫って、さらに奥を目指した。
「ツェンを追え!祭壇に、アゼルの扉に近づけるなああっ!」
アイエスが叫ぶ。ウェンがまさか、こんなに多くの人間を連れて来ると思わなかった。いくら先見が出来るといっても、見える未来なんてたかがしれている。鏡を落とせば割れる、くらいのことは誰にだって予想はつく。所詮、その程度なのだ。狭くて、竜を思うように操れない。骸骨は、壊されれば戻らない。
ウェンはもう祭壇の前にいた。いくらクシュ族が魔術をかけてこようと、俺はアイエスにしか殺されない。本当にこの呪いは役に立つ。ただ、傷は負う。
銃はあまり好かないが、ウェンは鉛の弾を、祭壇を守っていたクシュ族に向けて撃った。守りが崩れ、一気に隙ができた。クシュ族は魔術を主に使う為、こういった無理矢理の実践には対応できないところがある。
ウェンは弾のなくなった銃を放り投げ、祭壇の奥の扉に手をかけた。扉には封印の鎖がかけてあるが、構わない。古そうだから、勢いをつければ千切れるだろう。すると突然、右手すれすれに、火の弾が飛んできた。よけた拍子に、壇から落ちた。
振り返ると、アイエスがいた。血で白い神官服が汚れている。乗っていた竜がいない。肩で荒い呼吸をしている。
「無駄だ、その扉はお前には開けられない。」
「どういうことだ。」
ウェンは険しい顔で聞いた。アイエスは嘲るような声で応えた。