03 見えなくても
銀髪の男は応えた。
「で、今日はどうしたと言うんだ。顔の呪いを解いて下さいと、頭を下げる気になったか。」
「まさか・・・我が父より引き継いだこの呪いは、非常に役に立つ。お前が必ずこの呪いを持つ者、俺を殺す呪い・・・。本当なら、父王だったが。言いかえれば、お前以外には俺は殺せない。」
「なるほど・・・それで、今日は殺されに来たのか。褒めてつかわす。」
ウェンとアイエスは同時に剣を抜いた。双方の部下もそれに倣った。
「愚か者、所詮、生身の人間ごとき、われらに敵うと思うな!」
クシュ族は魔術でウェンの部下を次々に倒していく。ウェンの部下は、魔術に苦戦した。
クシュ族は、魔術を一斉に放った。地面に向けて、だ。白銀の光が、一瞬、双方の目をくらませた。
ウェン達は、息を飲んだ。馬鹿な―。
「何を驚いている?生き返ったわけではないのだぞ。冥界から命を呼びさますことは、不可能だ。」
地面に転がっていた、ただの骨が、虚ろな目をそのままに起き上がった。骨が軋んで、嫌な音がする。それぞれが手に武器を持っている。骸骨はまやかしかもしれない。だが、剣は本物だろう。魔術はつくづく便利だ。ウェンは舌打ちした。俺は死なない。骨共も死なない。だが、俺の部下は。横目で部下を見た。自分の育て上げ、世界に誇れる海の戦士達は、勇敢にも、そして愚かにも戦うつもりのようだ。だが、他にどうすればいい。
「王、先へ進んで下さい。」
「しかし・・・。」
ウェンはためらった。犠牲は、好かない。海賊のくせに、甘いと言われそうだが。
「俺達がこんな死に損ない相手に、くたばるとでも?それとも、王は俺達が信用ならねえんで?」
ウェンはふっと笑った。
「そうだな。」
アイエスが嫌らしく笑った。
「馬鹿め、こいつらは死なない!」