18 陰謀と目隠し
甲板に上がった。久しぶりの外の空気に、思わず深呼吸をした。潮の香りがする。
「見ろ。島だ。」
全員、カニバーリェス卿の指差す方を見た。大きい島だ。青々とした木が繁り、低い山がいくつか見える。所々崖があるのか、茶色が見える。
「アル=クメニ島だ。七年前までは、クシュ族という魔術使いの民が住んでいた。クシュ族は、ウェン・ツェンという海賊に滅ぼされた。彼らと共に生きていた竜も数年前に滅んだが、島だけはこうして今も残っている。ある宝玉と共に。」
「父さん・・・?」
ウィリアムは、カニバーリェス卿を見上げたが、彼は無言だった。
三隻の船は、白い砂浜に止められた。セルヴァンテスは、相変わらずウィリアムの手をしっかり握っている。
「ついて来い。」
カニバーリェス卿が先頭に立って歩き始めた。五十人程が、ぞろぞろと歩き始めた。道など無い。もともと道だったような名残はあるのだが、今は草が生い茂り、大人でも足を取られそうになる。ウィリアムは、自分の背丈よりも少し低いだけの草に、草の中を泳いでいるような感覚になった。
急に、体が軽くなった。目線がぐっと上がった。
「服に掴まってて。」
セルヴァンテスがウィリアムを抱き上げたのだ。ウィリアムは少し間をおいて、小さく頷いた。カニバーリェス卿は横目でちらっとそれを確認すると、遅れるなよ、と言ってまた歩き出した。
かなり歩いたところで、一行は少し休憩を取った。空は日が暮れそうな色だ。
「あと少しで着く。これから、あの山へ行く。」
カニバーリェス卿の指差した方向には、低い山があった。だが、他の山と違って、こげ茶色の岩肌が露出している。中は空洞なのだろうか、洞窟の入り口らしきものがいくつか見えた。




