14 呪いの左目
「何の用です、僕なんかに。」
少年はぶっきらぼうに言い放った。だが相手は気にもかけないようだ。
「いつも愚息が世話になっているね、ウィリアム君。」
「言っていることとやっていることが違います。」
カニバーリェス卿は小さく溜め息をついた。こういうところか。親戚からも憎まれるというのは。黙っていれば可愛いのだが。
「さて・・・どこから話そうか。先日、我が国王がある物を御所望になった。勅命が私に下った。内密にやれと。」
「内密?これのどこが?ある物って、何です?」
「『ある物』に関しては君の方がよく知っているのではないかね。」
ウィリアムは黙った。だが、全く知らないようだった。
「知らないのかね?そうか・・・ならば知らなくとも良い。最初我々は、それについては何も知らなかった。噂くらいはもちろん聞いたこともあるが、辿り着く方法すら、噂をもとにした怪しいものだった。」
カニバーリェス卿は、グラスに酒を注ぎ足した。
「だが、我々は苦労の末、やっとそこへ通じる扉を見つけた。だがなんということか!アゼルの扉は魔術で封印されていた。人間にはどうやったってかなわない。そして、我々はその扉を開ける唯一の方法を知った。多大な犠牲を払って。」
「方法・・・?」
「そうだ。竜の力が必要だった。だが君も知っているだろう?竜は、たった数年前に滅んでしまったのだ。・・・だが神は我々を見捨ててはおられなかった。ここに・・・。」
そう言ってカニバーリェス卿は、ウィリアムの前へ立った。そして、しゃがむと、左目に巻かれた包帯を解き始めた。
「おやめ下さい!」
ウィリアムは驚いて、手を振り払おうとしたが、逆に簡単に払われた。
包帯が音もなく、床へ落ちた。
「竜の力は残っている。たった一つ・・・。」




