10 最果ての光
「だから、私には後継ぎがいないのだよ。それがこんないい機会に・・・。」
ローランド卿は窓の傍に歩いて行った。青白い月の光が、不気味に輪郭を照らし出す。静寂が訪れた。長い。ウェンがふと、口を開いた。
「・・・青山横東園 白光流西船
方今憶故事 縦欲而不忍
煙花而朗朗 見爾若道迷
雖啼龍為子 自古人有死
猶爾憐於子 上善正若水
駿馬於既去 班馬将今来
我心之憂矣 寧於莫知之・・・」
二人の将校は黙ってそれを聞いていた。
「これは復讐だよ、ウェン。」
ローランド卿が呟いた。
「どんな形であれ・・・あの子に光があるなら・・・頼む、救ってやってくれ・・・。」
ウェンの目から涙がこぼれた。そして、フェンロン、と繰り返し呟いた。
「名前は?」
「・・・アルバだ。」
「お前の国の名前ではないのか。」
「ああ、北の王国の海賊、シーマスが名付け親だ。」
「どうりで・・・。アルバ・ツェンか。悪くはないが、私の子として育てるには大いに問題だ。あの子はもうお前の子じゃない。私の子だ。・・・ウィリアム・ローランド。」
「ウィリアム・・・。」
ウェンが目を閉じた。シアーズ伯爵は、愚か者共め、と言い捨てると部屋を出て行った。
「アル・・・ウィリアムに会わせてはくれないか。」
「それはできない・・・。」
ウェンが目を伏せるのを見ると、ローランド卿は、何事も無かったかのように口を開きかけた。それを、ウェンが遮った。
「なら、せめて・・・。」
作中の漢詩は、「結局皆死ぬのに、そんな無駄なことして時間を稼いで、何がしたいんだ」くらいの意味にとっておいて下さい。文法は二分の一の確立で違うと思います。ちなみに、押韻も何もないんで、五言古詩だと思って下さい。




