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01 魔術の島

 イギリス帝国の西側にある一つの王国。この島は、古来より神秘の島だと言われてきた。ローマ帝国からも侵略を受けず、そこに住む生き物は、動物も植物も全て、毒を持たない聖なる場所だという。

 その西の王国からまた少し西へいったところに、小さな島があった。青々とした着植物に覆われ、小高い山がいくつかある。アル=クメニ島と言われ、西の王国の神秘の結晶のような場所だ。かつてアル=クメニ島には竜と共に生きる魔術使いの民、クシュ族が住み、古くからクシュ族に伝わる宝玉を守っていた。


 海を滑る一隻の船がいた。ジャンク船で、赤いぼろぼろの帆をいっぱいに張っている。大型の武装商船のようだ。甲板には水夫達が大勢働いていた。その中でも、際立って目をひく一人の男がいた。細身だが締まった体で、色は地味だが装飾の施された鎧と、紺色の着物を身に纏い、腰には二つの平刀を差している。三十代半ばくらいで、東洋系の均整のとれた顔立ちだ。黒い髪は、うなじで一つの長い三つ編みにされている。よく日焼けした象牙色の肌だが、左目から左頬にかけて、濃紺の痣のような長い痕があった。髪と同じ黒い瞳は、爛々と輝いている。

「もうすぐだ・・・アイエス。聖水を・・・。そして、貴様の力を、マリアネをこの手にするぞ。」

 船はアル=クメニ島へ向かった。

 島へ近付くと、所々に流氷が浮かんでいた。氷の張るような季節ではない。魔術か。部下達は皆、身を乗り出して見ている。

 流氷は漂っていたのを突然やめたかと思うと、海底に根を降ろし、周囲を凍らせた。大きな氷の柱が、海底にいくつも出来た。ゆっくりと、水面に向かって伸びている。海底はどうなっているのだろう、と男は不思議に思った。しかし、わざわざ海へ入って見るわけにもいかない。

 一羽の鳥が、丁度良いとばかりに、波の上に突き出た一つの柱の上に留まった。船の上で、全員が目を疑った。さっきまで羽ばたいていた鳥が、時を止めたかのように動かない。彫刻のようだ。・・・いや、それよりも、あの氷の柱に触れれば、体温を奪われて死んでしまうのだろう。

「警告か・・・この程度をくぐり抜けられぬようならば、島に近づく資格もない、ということか。ふん、面白い。」

 恐らく意図的に流しているのだろう。男は操舵手のもとへ行った。

「どけ、俺がやる。」

 半ば強引に舵を握ると、微妙に調整しながら、氷の柱を避けた。胸が躍るようだ。


 氷の柱を見事に避け、船をアル=クメニ島の砂浜につけると、男は大勢の部下を引きつれて、一つの岩山を目指した。


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