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優しい暴虐~クラス転移、意味不明スキルとして追放されたけども何とか魔王として君臨している女子高生の話

作者: 山田 勝
掲載日:2026/04/13

 大陸の北半分の支配者にして魔族の諸部族の長、不躾な格好でありますが、魔王様にお願いに参りました。


「あ、そんなの良いから・・・早く要件を言いな」



 ・・・はい、抹殺して欲しい者がいるのです。

 カズオです。異世界から来られた黒髪族です。


 彼は王国の厚遇を全く理解できずに暴虐の限りをしています。


 ご存じかと思いますが、異世界から学徒27名が女神信仰圏にやってきました。

 女神様からの贈り物です。


 中央国家群は会議を開き。平等に振り分けました。26名の黒髪族がそれぞれ・・・

 あっ、一名は行方不明です。

 特性により各王国に客人として迎えられました。



 ☆☆☆



 我が王国に来たカズオ・ヨシダ様はたいそうふくよかでした。

 きっと異世界では貴人に違いないと歓喜しました。

 ジョブは錬金術師です。



 しかし・・・・


『フモー!僕は姫様と結婚するポ』

『カズオ殿、イメルアには婚約者がおります・・・貴族令嬢との婚姻は実績次第ですな』



 ええ、私に執着しました。私も王女です。国のためならこの身をささげる覚悟ですが。


 幸か不幸か・・・彼はこの世界を馬鹿にし、できもしない施策ばかりを述べ。

 肝心の錬金術は・・・卑猥なお人形を作ってばかりです。



「それって、フィギュアっていうのだろう?」

「よくご存じで・・・・」



 それでも毎日貴重な肉をささげました。貴重な異世界の知識を披露してくれるものばかりだと思いましたがお人形ばかり作っています。


 ある日、我が父、陛下が意見をしました。


『カズオ殿・・・人形ばかりではなく農具を作ってくれないか?』

『芸術だポ!』

『趣味は仕事をした後にすればよかろう』

『じゃあ、人形を特産品にすればいいポ!』



 それ以来部屋にこもりました。

 でも、食事を与えればそれで満足します。

 ですが食事を運ぶメイドから苦情が来ました。


『姫様・・・私に伽をせよと命じます』

『まあ、それでは従者に食事を持って行かせますわ』



 すると抗議でドンドンと部屋を叩く音がしますが錬金術師です。

 武力はないと高をくくっていました。


 しかし、彼には恐ろしい能力があったのです。


 それが判明したのは・・・・・



「グスン、グスン・・・・」


 熱い涙が頬を伝う。しかし、魔王は待たない。それが魔王、傲慢である。



「早く言ってくれないかな」


「はい、私の結婚式に部屋から出てきました。私の婚約者に・・・」




 ☆☆☆


『リバースエンジニアリング!』


 と叫ぶと・・・恐ろしいことに体が分解されました。皮が剥がれ、肉がそがれ、それでも・・私の婚約者はしばらく骨のまま生きていました・・・


『ブヒ、イメルアたんは僕の嫁!』


『乱心したぞ!取り押さえよ!』



 騎士様たちも体が・・・分解されました。


「ブヒ!イメルアたん。ツインテールにするでブヒ!」

「ヒィ!」



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 それいらい私はカズオ殿が作った猫耳のカチューシャをつけ。髪型はツインテールというものにしております。

 まことに恥ずかしい姿ですが、このような事情でこの姿で魔王城にお伺いしたのです。




「私は婚約者を殺したカズオ殿の婚約者になりました。賢者でも対抗できない魔法です。

 人族の身でお願に参りました。どうか、カズオ殿を抹殺してくださいませ。

 報酬は羊千頭、豚千頭、牛三百頭を寄進したします!」



 シーンとなった。この魔王城の謁見室には、魔王ゲラと四天王たちと衛兵たちがいる。



 魔王は口を開いた。


「う~ん。気に入らないな。化け物には化け物ってやつか?かなり失礼な話しぶりだったよ。マリーンはどう思う?」


 マリーン、黒い羽の生えている空の女王だ。堕天使との噂もある・・・


「筆頭、そもそもこのお嬢ちゃん。誤解しているよ。我らが魔王はゲラじゃない」

「え、そうなの?知らないの?」



 ・・・え、魔王はゲラじゃないの?殺戮魔王・・・十万の人族軍を三千で打ち破ったことがあるのに・・・



「今さ。魔王は俺じゃないのさ。サチコ様だ。ほら、黒髪族出身だよ」


「えっ」


 骸骨の死霊使いが答えた。


「ヒヒヒヒヒ、わしの可愛い孫でもあるぞ」


 上半身が山羊の魔獣の王、獣人王ロボも賛同する。


「うむ。私の姪かな」


 空の女王、マリーンは・・


「いっちゃなんだけど素材は私よりもはるかに上さ。もう少しおしゃれに気を使ってくれたら、あたしも美貌女王の名を返上しなければね」


 武勲第一のオーガ大将も・・・おおむねこんな感じだ。牙を見せて笑顔になる。


「一部不同意だ。今のままでも十分マリーンよりも美しい」


「えっ、そうなの?安心したよ。殿方の目にそう映れば正解さね」


 おかしい。我の強い魔族の長たちが手放しでサチコとやらを称賛している。


 サチコ・・どこかで聞いたことある。

 そういえば、一人だけおかしなスキルの女学徒がいたと聞いた。同じ名前だ・・・

 確か、スキルは・・・『意味なし』だった。


 奥から狼の遠吠えが響いて来た。



「ワオ~~~ン!」


「「「「サチコ様だ!」」」」



 五体の魔族長と兵士たちはひれ伏した。

 謁見室の奥から大狼に乗った黒髪族の女がやってきた。


 髪は三つ編み、メガネをかけている。あれは学徒の制服・・・


「皆さま~、ご苦労様です」


「サチコ様、大狼は慣れましたか?」

「フフフ、ハンサムさんでとても良い子です」

「グフン~」


 大狼がなついている。あれは子犬のころから調教しなければなつかないはずだわ。・・・


「お名前は付けましたか?」

「ロボさん。ありがとう。うん。迷っちゃって、ガオガオ大王にしたわ。気に入ってくれたかしら」

「ガオ~ン」

「おお、ガオガオ大王殿、名前を拝命するとは名誉なことだ。しっかりお仕えせよ」

「ウオン!」



 ヒドイセンスの名前だけど、誰も文句を言わない。幹部たちはみな笑顔だ。


 ガタガタ~


 足が震えていることに気が付いた。

 何だ。この怖さは。

 この女からは怖さを感じないが、まるで猛獣の檻に兎がいて魔獣達を従えている不穏さを感じるわ。

その兎には何かあるに違いない。



「あら、この方がお客様ね。初めまして、サチコ・ヤマノシタです」

「イメルア・ドリア・・・ドリア王国の第一王女でございます」


 スカートをめいいっぱい広げてカーテシーをして、我が国の惨状を話した。


「まあ、吉田和夫君・・・彼、不登校だったけど、たまたま転移の日に登校をしていたのよ・・・でも、殺人までするなんて・・」


「事実でございます・・・陛下ですら顔色を伺っておりますわ」


「グスン、悲しいわ」


 クラスメイトたちにはそれぞれスキルを授かったけど。皆、危険なものばかり。


「私のスキルは意味なしよ。全く作動しなかったの。それでね。お金をもらって出されて残念転移者として魔族領にいきついたの」


 ゲラさんたちに襲われたけども、そんなことやめてくださいと言ったらやめてくれたわ。



「サチコ様、あの時は身の程知らずにも過ぎました。その話はご勘弁を・・・」

「あら、ごめんなさい。今は仲良くできて嬉しいわ」


「ヒヒヒ、サチコ様のおかげで魔族幹部はみんな仲良しになりました」



 分からない。優しい暴虐とでもいうのかしら。怖い。



「吉田君のこと何とかしますわ。ですから、今度は貴方達が試される番です」


「えっ、それはどういう意味ですか?」


「それは・・・恨みをもって恩で返す。これが私の好きな言葉です」


「・・分かりませんわ」


 綺麗事をほざくか・・魔王のくせに。


「貴方方は私たち日本人を資源として使っています。なら、徹底末尾そうしなさい。吉田君の錬金術師としての能力だけは残しておきますわ」


 できるのかと問えない雰囲気があった。


「さあ、これからサチコ様、政務でございますよ」

「分かったわ。イメルアさん。またね」



 魔王城を出た。城外で待たせていた騎士たちと合流する。


「姫様、魔王との会談は・・・」

「まず。着替えるわ・・・いつもの髪型とドレスにする。その姿で王国に帰るわ」


「では魔王は了承したと?」

「ええ・・・多分」




 城に帰ったら、相変わらずにメイドたちを追いかけまわしていた。


 サチコ様を見てから彼は怖くない。


「ブヒ、イメルアたん。ツインテールどうしたなり?」


「・・・貴方とは結婚しませんわ。速やかに農具を作ってください。とりあえず鍬を千本、今月中にできますわよね。遊んでいる暇はございません事よ」


「ブヒ~、イメルアたんも先生と同じなり!【リバースエンジニアリング!】」


「え、【リバースエンジニアリング!】【リバースエンジニアリング!】・・・」



 サチコ様のいう通り魔法は作動しなくなっていた。



「騎士様たち拘束して、殺してはいけないわ。貴重な資源よ」


「しかし、殺された者が大勢・・・」


【言われたとおりにしなさい!】



 それから会議が行われた。

 魔王へ送る約束の報酬が議題だわ。

 だが、皆は反対する。



「羊と牛、豚を用意しなさい・・・魔王サチコに送るわ」


「いや、この現象と魔王に因果関係ありません。証明できません」

「いや、魔族ですよ。約束など守らなくても・・どうせ大規模な魔王討伐が実施されますよ」


【用意しなさい!命令です!貴方たちの理屈に意味はありません】


「姫様・・・」

「・・・了解です」





 のちに知った。スキル意味なし。つまり・・・・


 理由など必要ないのだ。因果関係なし。実証実験は出来ない。何故ならこの星を壊すことも可能なのだ。

 これは危険な能力だ。



 その後、勇者が魔王討伐に出ると不思議に台風が発生していく手を阻む。

 カミカゼと呼ぶものもいる。


 もう、後50年は魔族領に侵攻できなくなる。

 という事は、人族間国家は魔王討伐で求心力を保つことは出来なくなる。


 平和が原因で国家間の争いが起きるだろう。


 サチコ様の言った『試されるのは貴方たち』というのはこの事だろう。


 と家畜を魔族領に移送する行列を見ながら・・・そう思わざる得なかった。



最後までお読み頂き有難うございました。

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