第2話 とらぶる
船着き場に着くと、見慣れた狩竜人船が停泊していた、どうやらレイ達が帰って来ている様だ。
いつも忙しいと口にしていただけ有って、俺がここへ来てからまともに顔を合わせていない、俺よりももしかしたら姉の方が顔を合わせているかもしれないが、そう言ってからかう事すらままならない。
「おう新人共、今から教習か」
「違いますよレイナルドさん、これからハンマーテールの狩りに行くんです」
レイの問いに俺達が返事を出来る訳も無く、教育係のペインが返事をした、それから何度かやり取りを終えると、レイは俺達に手を振って船の中へ戻って行ってしまった。
ここが学校だったら何か話しかける事も出来たかも知れないが、いま自分が置かれている立場を考えると、そんな身勝手な行動は慎むべきだろう。
「船に乗ったらすぐに甲板へ移動する、そこで武器を選んで貰う」
「はい」
それからペインに連れられて船に乗り込むと、かなりの年数使い込まれた船らしく、ところどころに刻まれた歴戦の痕が見て取れた。
オフィーリア姫に乗せて貰った新造艦と比べると、設備も性能も数段落ちるだろうけれど、俺たちが命懸けで狩りをしてきてから戻ってくる船に良いも悪いも無い。
正直、飛ぶ、降りる、寝て、起きて、これだけ出来れば、森の中や砂漠を歩いて野宿をするよりも快適性は段違いどころか比べる事すら烏滸がましい。
甲板に整列するとそこには様々な武器が並べられていた、剣は言うに及ばず、盾、槍、鉾、果ては魔力銃まで置かれている。
「それじゃあ順番に狩りに持って行く武器を選べ。無くなる事は無いから好きに選んでも良いぞ」
何と無くで歩いて来たから、俺の順番は随分と後になってしまった、みんなはわいわいと話しながら槍や鉾を手にしている、それを見ているペインの顔が少し曇っているのがわかった。
「じゃあ次は、シリル。お前は何を使う」
ペインに促されて俺は武器を選び始めた、当然使った事が無いような槍や鉾には目も呉れない、片手剣を二本と短刀を二本、それぞれ腰と背中に刺し、身軽に動けるか身体を捻ったり飛んだりしてみた。
そして俺よりも後に並んでいた人たちが武器を選び終えると、ペインが再び整列するように号令をかけた。
「それでは、武器選びを終えたお前たちの命に関わる事だから忠告するぞ、まず槍や鉾を選んだ奴ら」
長い武器は間合いを取る事が出来るため、対人戦の場合はとても有効である、相手の攻撃範囲外から一方的に攻撃出来れば、簡単に勝利を掴む事が出来るだろう、対人戦、試合場でならと言う条件下で有れば。
「森の中では長柄の武器は振り廻す事が困難だ、運良く振り廻せる場所が有ったとしたら・・・、そこはハンマーテールの狩場だ。そこは最悪の場所と言っても良い、縦横無尽に振り廻される尻尾に肉塊にされるだけだ」
槍や鉾を持っている人たちは顔を見合わせてから肩を落とし、武器立てに手に持っている長いだけの役立たずを置くと、俺と同じように片手剣と盾を手に取った。
「次に、盾を持っている奴、いったい何を受けるつもりで手に持っているか解らんが、そんな事をしたら腕の骨が砕けるだけで済めば良いが、下手をすれば背骨、両膝、両足首、それらが折れてしまうかもな」
ペインの言葉に盾を手に取った人たちは更に落ち込み、盾を戻すとそのまま列に戻った。
「それから、今まで狩りをしていて武器が壊れた事は無いのか、たった一本の剣、お前たちが持っているのは何を斬っても切れ味の落ちない名刀か、大量生産された剣一本に命を託すのか、予備が有った方が良いんじゃないか、それとも素手での狩りに自信が有るのか」
そこで俺以外の全員がもう一本の武器を求めて武器立てに殺到している、俺は二刀流だから沢山持っているだけだけれど、そのお陰でジェイミーとの試合に勝った事も有り、不意のトラブルにも対処できるようにして置くのは当然だと思っている。




