表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/83

第七十六話「イリス」


礼拝堂の扉が開かれ、中から白いドレスを着た人物が出てくる。

顔が見えないほどのベールに包まれる人物、

本来ならば出てきてはならないが彼女が現れた途端、

回廊にいた大勢の警備が動揺しながら近づいて来る。


「ルナ様っ!?

一体どうされたのですか!!?

今すぐに礼拝堂にお戻りください、

いくら聖堂とはいえ誰が見ているかも分かりませんっ」


『どうぞ中にッ!!』


十人弱の警備が一斉に頭を下げて願うが

ルナと呼ばれる人物は一向に部屋へ戻らない

痺れを切らした警備が顔を上げようとした時、

彼女はようやく口を開いた。


「地下室へ向かいます。

あそこならば危険もないでしょう?」


「ぐっ! た、たしかに....あそこであればっ!!」


警備の騎士たちはなんとか部屋に戻ってもらおうと思案を巡らせる。

ーーが、


「......はぁ....今回だけだからな?」


彼女の提案を拒否できるだけの意見が生まれず、彼らは渋々了承することにした。


「.......ありがとう。

ですが、敬語はやめないように.....あなたこそ誰が見ているかわかりませんよ??」


そう言い残して彼女は地下室がある場所まで歩を進める。


しばらく歩くとドレスの中から小さい声が彼女に語りかけてきた。


(ペルジアさん、まだ着きませんか?

滑って落っこちそうなんですけどっ)


(いや、ちょっ!

もう少しの辛抱です!!

頑張ってしがみついていてくださいっっ)


ペルジアも周りを警戒する騎士たちに感づかれないように

言葉を返すが不自然に足を早めることもできず、

ただただ耐えろとしか言えないのであった。


(あっ! いい感じに掴める場所がありました。

これなら落ちることもなさそうです!!)


ショウの視界はドレスで遮られているが手探りで見つけた

二つの小山に手を置いてガッチリしがみつくことに成功した。


(ちょっ! どこ掴んでるんですか!?

感覚はないとはいえ服の上から盛り上がっているのが見えてますよ!!?

私こんなに膨らんでなかったですし違和感ですっっ!!!)


(いやぼく今どこを掴んでるですか?

かといって他に掴むとこなんてないですよ!)


(いいからさっきみたいにお腹に手を回して

しがみついて下さい!)


(それこそ落ちちゃいますよ!

もう少しの辛抱なんですよね?

あとちょっとならこのままこれで行きましょう!!)


(あ~ダメですッ!

もうお嫁にいけない~!!)


(......そういえばシンたちはどこ行ったんだろう?)


呑気に仲間のことを考えるショウに容赦なく掴まれているところを気にするペルジア、

彼女の行動があまりに変なので、心配になった警備の一人が彼女に声をかけた。


「巫女様? どうかなされましたか??」


「うひゃあっ!

ななな、なんでもありません!

急ぎますので失礼いたしますぅぅぅううう!!!」


ペルジアは心臓が口から飛び出たのではないかと思わせる絶叫を披露して

走って回廊を進み、地下室の方向へ一直線に向かっていった。


「.......何だったんだ??」


ーー


「.....と....到着しました

ここが地下室です........」


ペルジアは全く疲れていないはずの身体で

ぜいぜいと息を切らせているような仕草で四つん這いになっていた。


ショウはドレスの中から這い出る。

目の前には精密機械が所狭しと並べられたそこまで大きくない部屋

そこは聖堂にあるとは思えない雰囲気の部屋だった。


「ここに.....巫女様が辺境に向かった手がかりが.......」


「隊長様もツヴァイもいない......

彼らも映像を見終わり、応接室にでも移動しましたか.......」


ペルジアもようやく落ち着きを取り戻して

立ち上がりショウの横に並ぶ。


「........これは.....?」


ショウは先ほどまで誰かが見ていたのか、

最後のほうで再生が止まっている映像を映す端末が目に入った。


「そちらが例の映像になります。」


ペルジアもそれに気づいてショウに再生を促した。

ショウがその声に反応するように右手を伸ばして映像を再生した。


「……誰か、聞いていますか?

私はイリス……ゼウス暴走後、唯一、人に味方する...

...いえ、機械に意識を移した人々に仇為さないAI……」


「こ、これは!?」


ショウは旅の途中で何度か聞いたどこか懐かしい声の音声を思い出し、

映像を食い入るように見る。

そこには下半身は車椅子のような車輪が付き、

上半身は人型といえば人型の猫背のようなフォルムの機械が映っていた。


その機械は、機械であれば当然の無表情でこちらに語り掛けてくる。


「私はゼウス暴走前にアイ博士の助手として彼女の受精卵をコールドスリープにかけ数年眠った、

その後、暴走から数年経ち、コールドスリープを解除して培養機に入れ育てました。

子どもは急速に成長し、10歳児にまでなりました。

この子の名は"ショウ・シュナウザー"彼女が男の子だった時につけて欲しいと言っていた名前です。

いずれ私は動かなくなるでしょう。

その前にこの子を外に出し、一人で生きていかせる。

この子は貴方たち人類の…最後の希望…どうか守ってください、

誰でもいい…何処かでこの子に会ったなら、

助けてあげて欲しい……私たちでは守りきれないのです。

私のせめてもの想いは全てこの子に託しました……どうかお願いします。」


動画はここで終わった、

今までの音声は重要な部分が欠損していたため分からなかったが

ようやく点と点が繋がり、ショウは頭が混乱した。


「......まだお名前を伺っていませんでしたね?

あなた様が、この動画で語られているショウ・シュナウザー様で

よろしいでしょうか??」


ショウは改めてそう呼ばれ、

信じられない事実にフラッと床に膝から崩れ落ちた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ