第七十五話「身代わり」
「に、人間の女の子じゃなくて……人機………?」
身体の大部分は白いドレスで隠され、顔も一見少女のように見えるが
セレナに始まり聖歌隊やシェルンにエリナと様々な人機を見てきたショウにとって
彼女(?)は一目見ただけで人機だと分かってしまった。
「なっ…ななっ……なんでっ!?」
偽巫女は大袈裟に仰け反り口を開けて固まっている。
「……あのっ、ホンモノの巫女様はどこに?」
ショウは固まる偽巫女に問いかけるが、
偽巫女は両膝をついて祈りのポーズを取り始めた。
「はぁ…まさか幻覚が見えるほど参ってしまっているとは……
ルナ様とリエール隊長も戻らないのに生身の少年がここに居るはずがありませんよね………
あぁ、神よ……」
偽巫女は少女とは言い難い、
割と年のいった女性の声でブツブツと独り言を続けている。
「……あの…? おーい……?」
自分の世界に籠る偽巫女にショウは肩をポンポンと叩く
「あひゃいっ!!?」
実に間抜けな声を上げた偽巫女がピンッと直立する。
「さっきも言いましまたけど、
ホンモノの巫女様はどこですか?
それともあなたが皆を騙して人間の少女のフリをしているんですか??」
「………っっ!?!?」
腕を組んで警戒するショウを偽巫女は恐る恐る見つめて驚愕する。
「………?」
首を傾げるショウに偽巫女は勢いよく振り向いて縋り付いた。
「ホンモノの人間の少年っ!!
降臨なされた!?!?!?
おお! 神よぉぉおお!!!」
「……なんなんだろう…この人………」
呆然とするショウの目の前で偽巫女は何度も土下座の姿勢で頭を下げていた。
ーー
「こっちはクリアだね」
「……向かう」
一方シェルンとエリナは応接室から早々に抜け出し、
ショウとの合流を目指して聖堂内を移動していた。
「思ったより警備の人居ないね?」
「……こっちはそうだけど、
進むにつれて多くなっていってる
………多分、巫女がいるから。」
「なるほど、なら気を引き締めないとね!」
シェルンが気合いを入れ直すと宣言すると同時に
エリナがなにかに気づいて指示を出した。
「…シェルンこっち!」
エリナは小さな足音に気付き、シェルンを引っ張ってすぐ横の扉に入る、
そこは壁一面に本棚が並べられた部屋だった。
その部屋はあまら使われていないのか、本棚はホコリを被っていた。
「…シェルンは外の音を聞いて、
中に来るかもしれないっ
私は隠れる場所を探す……」
「分かった!!」
シェルンは扉にビタッと張り付いて
エリナは部屋を見回す
「エリナやばいよ!
こっちにまっすぐ向かってる!!」
「……匂う…」
「なにが!?
もしかして私臭い!!?」
「……そういう匂いじゃない…
…この部屋、ウチの変態と同じ匂いを感じる……」
そう言うとエリナは本棚の一つに近付き、
一冊だけ不自然に綺麗な本を押す
すると、本棚が独りでに動いて奥へ続く道が現れた。
「……これは?」
「もうすぐ入ってくるよ!
早く進もうっ!!」
エリナはシェルンに手を引かれて奥の空間へと足を踏み入れた。
ーー
「フンフンフ〜ンッ」
聖堂内で他の警備にお構いもなくスキップする人物が一人、
女騎士のような風貌の男性人機ツヴァイだ
彼は偽巫女の許可を貰い、ウキウキでとある部屋に向かっていた。
「とぉぉちゃっく!
最初こそ声のみのコレクション追加で手を打っていましたが、
まさかアレ程の美貌でまた相見えることができるとは!!
神よ感謝しますよぉお!!」
ツヴァイは扉の前で両手を広げ、
天に感謝を述べると短く踊り出す。
ダンスを手短に終えて彼は扉を開け部屋に入る、
手馴れた手順で本棚に収められた一冊の本を押して隠し部屋の入口を登場させる。
「私の完璧なコレクションに
新たな歴史が刻まれるッッ!!!」
隠し部屋に到着したツヴァイ、
部屋には聖歌隊のポスターや彼女たちを盗撮した写真
コンバート前のシェルンとエリナの写真もあった。
(うげぇ......)
(...シェルン、シッ!)
シェルンとエリナは部屋の入口すぐ横の柱の後ろに隠れていた。
「ん? 今何か美しい御声がしたような.....?」
ツヴァイが小さな音に反応し、辺りを見回す。
(.......っ!)
シェルンとエリナに緊張が走る、
その場で部屋を見回す変態がこちらに来ないことを祈るばかりであった。
「ーーまあ、気のせいですかね?」
ツヴァイは空耳だと思い、最優先事項に取り掛かる。
「ヌフフッ!
まさか朝からあの美声に合わせて美貌も収めることができるとは......
まさに幸運! 今時代は私のもとへ来ていますよぉ!!」
ツヴァイは喜びを全身で表現すると自身の腹部のパネルを開けて
名に入っていたチップを取り出し机に置かれている機械に入れた。
「しっかり撮れているといいのですが........」
両掌をスリスリと擦り合わせるツヴァイの目の前に
スクリーンが浮かび上がり、動画を再生した。
『「ハッ! ダン様、こちらです。
.....お連れのお嬢様方は応接室での待機をお願い致します。」
「えっ!?
一緒に行けないの?」
「申し訳ございません。」
「.....はぁ...仕方がない、お前たちは待機だ
くれぐれも勝手な真似だけはしないように!」
「.....任せて、ちゃんと分かってる.......」』
「私や隊長の声が邪魔ですが
これはいい映像だ!ゾクゾクきますよぉお!」
(おぇ.....
あの人つくづく気持ち悪いよ......って、何やってるの?エリナ??)
わざとらしい動きで嗚咽しながらシェルンが心の底から吐き捨て、
気になる行動をとるエリナに質問する。
(....部屋に置いてあったボイスレコーダーで
証拠音声録音中......)
エリナは両手にボイスレコーダーを持ち、
どや顔をしていた。
(……これで社会的に終わる)
(ナイスだよ、エリナ!!)
エリナはニヤリッとほくそ笑み、
シェルンはグーサインをして二人は隠し部屋を後にした。
「おぉ! おおぉ!! おおおほぉぉぉぉ!!!」
変態は止まらずくねくねと動き続けていた。
ーー
「ーー落ち着きましたか?」
ショウは土下座で頭を下げたまま固まる偽巫女に語りかける。
「.......えぇ....もう大丈夫です。」
偽巫女は立ち上がって改めてショウに頭を下げた。
「名乗るのが遅れました。
私はペルジア、見ての通り人間の巫女ではなく人機です。
事情があって今私は巫女様のフリをしています。」
「代わりということは、ホンモノの巫女様はどこに?」
「実は、三か月ほど前にとあるメッセージが聖堂に届いたんです。
それを見た巫女様が自分が直接行くと言い出しまして.....それで...
騎士団の隊長と数名の部下を連れ、辺境を目指して旅立ってしまったのですよ.......。」
ペルジアは両手の指を組み合わせて祈るようなポーズをとりながら話した。
「そうだったんですか.......ん?
…三ヶ月前……?」
ショウはアルボリアの門番ボイルの言っていたことを思い出した。
『三ヶ月前に人機の旅団が来たんだ。セクリプレスからな。
なぜか辺境に向かうのに遠回りするってよ、わざわざ海渡って氷山越えるルートでな』
「思い出した!
........たしかセクリプレスからアルボリア経由で海に渡るって......」
「.......はい、ルナ様たちは最短で辺境へ向かうため
普段は誰も使わないような危険な海からのルートを使って行くと言っておられました。」
「その届いたメッセージはどんなものだったんですか? 辺境には何が??」
「それに関しては直接見ていただいた方が良いでしょう。
どうぞこの中へ、これならば誰にも怪しまれずお連れできます。」
「へ?」
ペルジアはドレスをたくし上げてショウに中へ入るように促す。
(……聖歌隊のみなさんといい...みんな時々距離感おかしくない?)
「え? それはちょっとぉ.......」
ショウは引きつった笑いで丁重に断ろうとするがそうはいかない
「正面からではなく周りの目を盗んでここまで来たのでしょう?
この外は最も警備が厳しいところ、見つかりたくないのであれば
方法はこれしかありませんよ??」
「うっ!!」
ショウは天井から見た警備の多さを思い出し、
渋々ペルジアのスカートの中に入り込んだ。
ーー
「まさかこんなことがあるなんて.....」
少し前、
ダンは混乱する頭を整理させようと聖堂の一階に戻ってきていた。
「....とにかく彼に会わなければ......」
ジジッ
一向に落ち着けない彼のもとに無線が届く
「こちらβ、応答を」
「くそっ
こんな時になんだというんだ!」
「聖街周辺を警戒する隊員から報告が来ています。」
「!?
なんてタイミングだ、分かった....今の優先事項はソレだ
全部隊戦闘配置につけ、私もすぐに向かう。
......ショウ、私は生きてお前ともう一度話をしてみせる。」
皆さん、ども! 樛樹です。
明けましておめでとうでございます。無事明けましたね
さて、年末年始の毎日投稿が無事終わりまして
またまた週一投稿になります。
次の更新は来週の月曜日ですのでお間違いなきように!
仕事が落ち着けばまた毎日投稿に戻したいと考えていますので
それまで気長にお待ちいただけると幸いです。
それではっ!!!




