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第七十三話「謁見」


朝、ショウは目が覚める。


左にはララとリリが器用に二人で抱き着き、

右はシェルンを足でグイッと遠ざけるエリナが

抱き着いている。

ベッド周りはミアを始めとした他のメンバーが

屍のように転がっていた。


「う....動けない.......」


目を擦るショウの意識がはっきりしてきた時に

廊下を慌ただしく走る音が聞こえてくる。


バァァァアアアンッ!!!


「アイムバァァァクッッッ!!」


寝室の扉が蹴り開けられる、

そこに立っていたのはセレナだった。


「やっぱり添い寝してやがったわね!

ショウそこ退いてっ

そいつら○せない!!」


シャーっと威嚇し、ナイフを構えるセレナの横から

宿舎のスタッフがぞろぞろと入ってくる

彼女らは服装を見るにメイドのようだった。


聖歌隊は抱き起こされ、

部屋に置いてある化粧台に座らされる。

まだウトウトとしているミアたちを慣れた手つきで

セットしていくメイド達、

その手際はまさにプロだった。


「ちょっ!

アンタたち退きなさい

壊せないでっーー」


ギャーギャー吠えるセレナが

昨日みたく出入り口から廊下へ横にフェードアウト

ーーと思えば、

コメットがセレナの両脇を持ち上げて現れる。


「も~セレナったらすぐ先に行っちゃうんだから…

勝手はダメよ?

あら? おはよう、ロン?」


「おはようございます……コメットさん…」


コメットは糸でセレナの顔をぐるぐる巻きにしながら注意する

もごもごと藻掻くセレナを見て

少し引きながらショウは返事をした。


「朝から元気だな」


コメットたちの横からダンが通りづらそうに

扉をくぐって入ってくる。


「おはようございます、ダン隊長」


「おはようショウ君

…すまないがシェルンとエリナを知らないかい?」


「……?

二人ならあそこで寝てますけど…??」


ショウは部屋の隅で抱き合う紫長髪と金短髪の

人機を指さして答えるが、ダンは首を傾げる。


「ん?

どこにも居ないが??」


「あぁ.....

そういえばダン隊長はまだ会ってなかったから

知らないんですよね……」


「…? すまないがなんの事だか……」


「聖歌隊をプロデュースした

ここのエーミールさんっていう社長さんが、

昨日二人をスカウトしてアイドル人機仕様の機体に

コンバートしたんですよ。」


「......う~ん.....ショウもっと~~」


「.......ショウ......激しい

....でも....それがいい.......」


「いや何想像してるんですか!!?」


半分寝ぼけているような、二人にショウがつっこむ


「……本当にこの二人が…?」


「はい、本当ですよ?」


「.....あれ?......ダンがいる.....これは夢??」


「......シェルン、それは気のせい。」


「だよねぇ〜」


二人はフラフラとベッドに登って

布団へ潜りに向かう、そこへ怒号が飛んだ。


「喝ッ!!」


「なに!?」


「どっひゃあ!!?」


ビリビリと部屋を揺らす大音量に

シェルンやエリナはもちろん、聖歌隊も一気に

目が覚めたようだった。


被っていた掛布団をバサッと捨て、

シェルンとエリナはベッドの上で

起立の体勢を取っていた。


「......シェルン?

随分と立派な姿になったようだな?」


ダンはベッドの横で

腕を後ろに組みながら行ったり来たりしている。


「あ...あり....ありありありがとうございます!」


敬礼するシェルンの顔は強張り、

人間なら冷汗が滲んでいるのだろうと

思わせるような顔つきをしていた。


「......エリナも随分可愛らしくなったものだな?」


「.......褒めても何もでないよ....?」


エリナの表情は変わらない

ーーがいつもは猫背なのに

今ばかりは背筋がピンと伸びている。


「安心しろ、

私はただ"降格コンバート"という選択肢が増えたと

思っただけだ」


今まで直立していた二人が滑り込むように

彼の目の前で土下座を慣行した。


「ダン隊長、そっれだけはご勘弁を!!!」


「.....平に...平に..願い申し上げ........!!!」


「それはお前たちの今後の行い次第だ、

これだけ言えば解るだろ??」


「ははぁぁ!!」


お叱りが終わり、

ダンが話を進めるために口を開く。


「時間を取らせてしまいすまなかった、

早速作戦を実行したいのだが……」


「…すみません、

まだシンとコールが来てないんです。」


「心配ないよ、

時間ならまだあるから少し待つとしよう」


気にする素振りもなくダンは

そのまま終わったはずの説教を再開し始めていた。


ーー


こちらの不手際で遅れが出るのでは?と

心配するショウの後ろにある廊下から二体の人機が

転がり込んできた。


「何とか着いたぜっ」


「セレナもコメットさんも早すぎだよ……」


「おはようシン!コール!」


「…どういう状況だ……これ……?」


部屋は

身支度を整える者、整えられる者

説教する者に謝る者

捕まえる者に逃れようとする者

とごちゃごちゃしている。


「じっ…実はね……?」


ショウは昨日の出来事から

今の状況までをシンとコールに説明した。


「はぁ……まさかこんな所でデヘンの親に会うとはな。」


「すごい偶然だね……」


「ホントびっくりだったよ」


シンとコールが静かに驚いているところで

ダンが話に入ってきた。


「全員揃ったようだな

昨日のうちに謁見の準備は大方済ませてある。

早速向かうとしようか」


「はい! よろしくお願いします!

ルミナ・クワイアのみなさんもありがとうございました!!」


ショウが向き直り、聖歌隊に挨拶する。


「頑張ってねぇ〜」


「ショウくんファイトだよ!!」


「無理はしないようにね?」


「また」

「きて」


身支度を整え終えた聖歌隊たちは

口々に挨拶をする。


「聖堂の近くにある広場に部下達を待機させている。まずはそこへ向かおう」


ダンの指示にショウたちは頷き、部屋を出た。


ーー


広場に着くとそこには数名の部下と

山積みされた木や鉄の箱、装甲車両が並んでいた。


「作戦通り、

君たちにはこの鉄の箱に入って潜入してもらう。」


ダンが積まれた箱の方へ歩き、

鉄の箱に手を添えながら話す。


「…ただの箱のように見えますが……?」


「見た目は普通の箱だが、この箱にはスキャンを掻い潜れるように細工が施されている。

廻帰教がスキャン装置を持っている可能性は限りなく低いが、万が一にそうであった場合も考えておくべきだろう」


「……物理的に開けて確認される事の方があるのでは?」


「フッ

もっともな意見だ…

だがその問題に関しては安心してもらっていい……

君たちはただ音を立てずじっとしてくれれば

後はこちらで何とかしよう」


「……実際に見せてはくれないのね?」


訝しそうに腕組みをするセレナが口を開く


「人目もない訳では無い、

一番重要なものはそう易々と出す訳には

いかないものだよ」


それでもダンは自信の理由を伏せ通した。


「そろそろ約束の時間だ

各自箱の中に入ってくれ、シェルンとエリナは

予定通り私の付き添いだ。

頼んだぞ?」


「あいあいさ!」


「……任せて」


ダンの両側にはシェルンとエリナ、

三人は他の隊員に指示を出し、

装甲車に箱を乗せていく、全ての物資を乗せ終えて

車両は走り出す。

元々目的地には近い場所だったのであっという間に一行は聖堂へ到着した。


「そこで止まれ」


聖堂の正門へ装甲車が辿り着くと、

門前にいた警備の人機が声を掛けてくる。


「お前たちは?」


「人機軍戦闘部隊ダン・シュナウザーだ

廻帰教の巫女様の要請により、謁見に来た。」


「それはご苦労だった。

今、廻帰教の護衛部隊の副長をお呼びする。

暫し待たれよ」


「……物資の搬入だけでも済ませたいが

問題無いだろうか?」


「………分かった。

物資を積んでいるのは後続の車両か??」


「ああ、先頭車両以外は物資を積んでいる」


「承知した。

正門を開いて後続の車両を入れろ、

物資を降ろし次第、その車両たちは

敷地外へ出るように」


「なっ!?」


「ダン隊長!よろしいのですか!?」


後続の車両から無線で意見が飛ぶ


「まあ、落ち着け……

ここは戦場でも敵地でもない、

お前たちは先程の広場へ戻り待機するように

安心しろ、ここに脅威など何もない」


「……分かりました。」


隊員たちは渋々了承し、物資の確認が始まった。


「……中身はなんだ?」


「特に大したものはないが、巫女様は生身の人間、

食事を取られるだろうと思い、

食材や果物などを持ってきた。」


「それはありがたい……

よし、箱を開けて確認するぞ」


ダンたちの中に緊張が走る

まず最初に木箱が何箱か開けられた。


「りんごや………梨……か」


木箱には果物が入っていて、

特に何の違和感も感じられない。


そしてお次は鉄の箱の番である。


「……こちらは大きな箱だな」


「…ええ、魚や肉などを冷凍して運んできました。

悪くならないよう確認は手短にお願いします。」


隊員が説明して

鉄の箱の操作パネルを押して蓋を開ける

スライドドアがスゥーっと開いて

中から冷気が漏れ出てきた。


「ふむ…いい肉と魚だ

問題無い、運んでいいぞ!」


「……物資に不備はないようですね?」


ホッとしたのも束の間、

聖堂の方から歩いてきた人機が警備に声をかける


「こっ…これはお疲れ様でございます!

ツヴァイ様っ!!」


ツヴァイと呼ばれた人機は

ダンたちの方へ向き直り、挨拶した。


「長旅ご苦労様です。

私の名前はツヴァイ、

巫女様の護衛部隊スカージ・コープスの副長をしています。」


”見た目”は女騎士のような人機がイケメンボイスで語りかける。


「............人機軍戦闘部隊のダン・シュナウザーだ

よろしく頼む」


ダンもその違和感に珍しく混乱しているようだった。


「……貴方があのダン隊長ですか……

それで…そちらのおふたりは??」


ツヴァイはダンの横に立つ

シェルンとエリナが気になったようだった。


「姿は変わったが昨日、

謁見の約束に顔を出したシェルンとエリナだ

なんでもあのエーミール社長に

機体を作って貰ったらしい」


「なんと!

昨日よりもさらに麗しくなられているとはっ!!」


「あ、あははー

よろしく〜?」


「……よろ…」


顔がひきつりながら返事を返す二人は

ツヴァイに聞こえないように小声で話し合った。


(私、この人苦手なんだよね...)


(……同じく…なんか嫌.......声からして、本当は男....)


「朝からこんなに美しい方々を見れるとはっ

今日はいい事がありそうです!」


嫌われているとも知らずに上機嫌なツヴァイが

くねくねしながら感情を表し、

ハッと気付いて我に返った。


「……失礼しました、

では巫女様の元へご案内します。」


姿勢を正したツヴァイが聖堂の方へ向き、

歩き出す。


ダンは物資の方をチラリと見てすぐに

ツヴァイの後について建物の中に入って行った。


ーー


「ここで名乗りを上げてください」


聖堂の入口より大きな扉の前でツヴァイは止まり、

ダンに指示を出す。


「人機軍戦闘部隊ダン・シュナウザー

廻帰教の巫女様へ謁見に参りました。」


ダンは言われた通り、扉に向かって名を名乗った。

するとーー


「………お入りなさい……」と扉の奥から

声が聞こえ、副長が扉を開いて中へと案内する。


扉の中へと入るとそこは、

部屋中に天井から薄い幕が垂れ下がり、

部屋全体が繭の中のようだった。


「………遠路はるばるよくぞいらっしゃいました。

大変申し訳ないのですが訳あって私は今、

姿をお見せすることができません。」


天井や壁を見回すダンが声がする方を見た。


部屋の最奥、三段の階段の上、

幕越しにシルエットが見える。


「私の名前はルナ・アルシェ

廻帰教の巫女をしているものでございます。」


巫女を名乗る影が、椅子に座って語りかけていた。


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