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第六十九話「父」


「待ってくださいっ!

デヘンという人をご存じありませんかっ!!」


――その名に。


エーミールが突然、振り返り、ショウのすぐ目の前まで戻ってくる。


「なぜデヘンの名を!?

あなた、デヘンと知り合いだというの??

でも、あの子は十年前、レミリアを失って消息を絶ったはず……!

デヘンは今どこにいるの!? 教えて頂戴っ!!」


「質問してるのはこっちです!

精巧な機体を作るあなたは、デヘンさんの師匠か何かですかっ!」


「ワタシはあの子の師匠ではないわ……。

むしろ、あの子がワタシの師匠のようなもの……。


デヘンは、ワタシの作った機体たちの原型――

量産型コミュニケーション用アンドロイド

“レム”を開発した人物なのだから」


「なるほどね……。

アンタがデヘンに頼み込んで、この機体を量産したっていう……」


いつの間にか聖歌隊の糸をすべて解き、

セレナが近くまで来ていた。


「そう。

ワタシは、あの子の父親よ……。


あなたのその姿は……

デヘンが作った作品かしら?」


「ええ。

デヘンの作った機体よ?」


「やっぱり……。

あの子らしい、良い作品だわ……」


エーミールのセレナを見つめる目には、

懐かしさと喜びが滲んでいるように見えた。


「ねぇ……?

デヘンは今、どうしているの??

元気に、生きているのかしら……?」


「デヘンは――死んだわ……」


縋りつくように問いかけるエーミールに、

セレナは躊躇なく現実を突きつける。


一瞬、エーミールの体が強張る。

だが、声音は崩れず、動きもすぐに元に戻った。


「……そう……。

あの子は……満足に、逝けたのかしら……?」


「……えぇ……それはもう……」


「……良かったわ……。

今思えば、それだけが心残りだった……。

私は、あの子を……誇りに思うわ」


「デヘンさんは、ぼくの命の恩人なんです……!」


ショウは、震える声で続ける。


「ここに来る途中、機械軍との戦いで……

それで……」


デヘンの最期を思い出し、

ショウは俯き、涙を落とした。


「……数少ない生身の人間を守って逝った……。

自慢の息子ね……。


貴方のお名前は?」


「……ショウ、です……」


「ショウ……。

いい名前ね。


良ければまた今度、

あの子の話を聞かせてちょうだいな?

そちらのお嬢さんも一緒に……ね?」


「……っ! はい!!」


「アタシは、大して話ないわよ?」


「フフッ、それでもいいわ!」


エーミールは、どこか嬉しそうだった。

知らなかった息子の時間を知れることを、

今は支えにして、突然の別れと向き合っている――

そんなふうに見えた。


「ところで、貴方たち?

なんで廊下に、こんな大人数で……?」


「それは、そのぉ……」


説明しようとするショウの背後で、

ナフタがシェルンとエリナに耳打ちする。


その伝言は、

二人を“仲間”にするには十分すぎる威力を持っていた。


「今ぼくは、聖歌隊の皆さんから逃げ――っ!?」


言い切る前に、

フリアとケーニャが腕に絡みつく。


「しまった!」


さらにララとリリが、両足に抱きついた。


「せ……セレナ! 助けてっ!!」


だが背後から、セレナが抱きつく。


「え!? セレナ!? どうして!!」


「ごめんね、ショウ?

こっちの方が、得られるものが大きいのよ」


前方にも影が落ちる。


「それじゃ、行っちゃおっか、ショウ!」


「……私が、洗ったげる……」


そこには、恍惚とした表情の

シェルンとエリナがいた。


「おちっ……落ち着いてください! 皆さん!!」


「みんな~! 運ぶよぉ~~!!」


説得する暇もなく、

ショタコン大連合に担がれ、ショウは連行されていく。


「ホホホッ。

仲がいいこと~」


呑気なエーミールは、

ルンルンで部屋へ戻っていった。


「いや、助けてくださいよっ!!

エーミールさ~ん!!!」


廊下には、

ショウの悲痛な叫びだけが響いていた。

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