第六十五話「作戦会議」
「……なるほど。同じ人間である巫女に会いたい。しかし正面から行けば廻帰教に囲い込まれる。それを避けるため、こっそり聖堂へ潜入し、巫女に会って話がしたい……と」
「はい……」
「ねぇねぇ? 隊長さんとショウくんは何の話してるの?」
「アンタにはカンケーないでしょ?」
「え〜、セレナちゃんこわぁ〜い」
「なんなのよアンタ!」
「でもでもぉ〜、とりあえず立ち話もなんだし。近くに行きつけのカフェがあるから、そこで話せばいいんじゃない?」
「人機が……カフェ?」
「うんっ。飲食はしないけど、内装の雰囲気が良くて、メンバー全員のお気に入りの場所なんだ〜」
「すまないが、周りに聞こえても困る。その場所に案内してもらえないだろうか?」
ダンがミアの話を聞き、間に入ってきた。
「ほいほい〜! 隊長さん、おまかせあれ〜っ!!」
手と足が一緒に出ている行進でミアが先導する。
ほどなくして、路地裏の知る人ぞ知る隠れ家的な入口へ降り、店に入った。
「みんなぁ!! サプライズゲストを連れてきたよぉ〜」
豪快に扉を開くと、カランカランと来客を知らせるベルが鳴る。
「ミア」
「来た」
外見よりも広い店内には、聖歌隊の面々がカウンターやソファで思い思いにくつろいでいた。
「はぁ〜。せっかくくつろいでたのに、煩いのが来たわね……?」
赤髪の巻きツインテールの人機が、嫌そうに言葉を吐く。
「ヒドくない!?」
「レーゼちゃん、ちょっと言い過ぎだよ? ミアちゃんは、ちょっとデシベルが大きいだけなんだから〜」
おっとりした雰囲気のロング茶髪の人機がフォローする。
「うう〜、フリア〜。レーゼがヒドイ〜って……あれ? また私ディスられてる?」
「はあ? この前フリアが騒音計で測ったら、九十七デシベルだったじゃないの!」
「九十七は、ちょっと高いだけでしょ〜」
「非常サイレンレベルなのよ!!」
「レーゼも怒鳴ると煩いんだから、やめて下さる? そんなに怒ってると、眉間がシュワクチャになって大変よ?」
金髪縦ロールのお嬢様系人機が、楽しそうに煽る。
「フンッ! 皺なんてできてもコンバートすればいいのよ! ……って、何言わせんのナフタ!!」
「レーゼちゃん、落ち着いて〜」
「離しなさいフリア!」
「いつも通り」
「煩い」
阿吽の呼吸で短く感想を述べる二人の人機。
どちらも空色のショートカットで、瞳の色は片方が右赤・左青、もう片方がその逆だった。外見からして双子のようだ。
「うんうん! レーゼはいつも煩いし、ガサツだし、可愛げないよね〜? ララとリリ?」
ソファで双子を膝に乗せて撫で回す、スポーツ系の黒髪ポニーテール人機がデレデレした声を出す。
「……そう。ケーニャ、まずはあんたからスクラップにした方が良さそうね……?」
いつの間にかケーニャの背後に立つレーゼ。その全身から、並々ならぬ殺気が漂っていた。
「レーゼ……? プンスコハヨクナイヨ……スマイルニ……チェンジデ……ピースシュル?」
「緊急」
「離脱」
「ああっ、ララッ! リリッ!!」
危険を察知し、双子が即座に離れる。
「解体の準備ができたようね?」
「レーゼちゃん……一回、話し合お?」
「そんな譲歩、ある訳ないでしょぉぉがぁぁあ!!!」
ギャーギャーと騒ぐ一同をよそに、フリアが疑問を口にする。
「ミアちゃ〜ん。それで、サプライズゲストって誰な……のっ!?」
「よくぞ聞いてくれました! じゃじゃーん! なんとショウくんが遊びに来てくれたよ!!」
「ど……どうも……」
ミアが入口から横にずれると、ショウの姿が聖歌隊全員の視界に入った。
『ぎゃぁぁぁあああ!!!』
ナフタが即座に入口へ猛ダッシュ。ミアの肩を掴んで店内へ放り込み、フリアも性格に似合わぬスピードで扉を閉め、ショウたちを締め出した。
「ミア、アナタ正気でして!?」
「何が?」
「ショウくん来るなら、事前に連絡してよ〜!!」
「……あれ? 言ってなかったっけ?」
『言ってないっ!!!』
レーゼはケーニャへのコブラツイストを力なく解除し、そのまま床にへたり込み、顔を両手で覆った。
「おーい、レーゼ? 大丈夫?」
ケーニャが頬をつつく。
「…………ハズカシイ……」
「入っていいのかな……コレ」
扉越しなのに、中の様子が何となく伝わってくる。
少し間を置いてノックすると、「どうぞ」と声がかかり、ショウたちは再び店内へ入った。
店内にはミアの指示でソファが円形に並べられ、中央にテーブル。聖歌隊は入口から奥側に一列で座り、なぜか中央だけ一人分空いている。
「作戦のために準備してくれたんですね! ありがとうございます!!」
「当然」
「当たり前」
俯きながら答える双子だが、先ほどとは違い息は合っていなかった。
ショウは苦笑いになりながらも気まずい空気を脱すべく、早速ソファに座って作戦会議を進めようとするが、聖歌隊の斜め前辺りに座ろうとしたところでミアに止められる。
「ショウくん、待って!」
「?なんですか?」
「まずはみんなの紹介をさせてほしいの!」
「ああ、そういえば皆さんのお名前を聞いてませんでしたね!」
「じゃあワタシから、改めましてミアだよ!聖歌隊でセンターをやってるの!じゃあ次は~.......」
ミアは自分の紹介を手短に終わらせ、次のメンバーに紹介タイムを譲ろうと横を見るが、全員が先ほどの醜態でまともにショウの顔を見れずに俯いていることに気付いた。
「あっ! あ~!!じゃあ右から紹介するね!
レーゼ、ケーニャ、フリアにナフタ、ララとリリだよっ!!」
メンバーは俯いているか両手を顔の前で覆っていたが先ほどの様子を見ているのでショウは誰が誰だかすぐに覚えることができた。
「み、みなさん!よ....よろしくお願いします........」
うまく笑えないが必死に作り笑顔をするショウが、気を取り直して聖歌隊の斜め前辺りに座ろうとしたところで、またまたミアに止められる。
「いや、だから待ってよショウくん!!」
「?? 自己紹介は終わったんじゃ.......?」
「ん!」
ミアは聖歌隊の座っている中心である自分の横の空いたスペースをポンポンと叩いていた。
「ん??」
「ショウくんはここだよ!!」
「え!?」
「何勝手にショウの席を決めてるのよっ!ショウはアタシの横っ!!」
イチャイチャの予感を察してセレナがすかさず抗議のために飛び出す。
「はいはい、セレナはこっちよ〜」
ショウ奪取作戦 -正面編- が呆気なく終わり、セレナはカウンターに運ばれる。
聖歌隊は、恥ずかしさよりもこのチャンスを逃すまいと自分たちの中心にショウを無理やり座らせた。
「そろそろ本題に入ろう、巫女様への謁見は失礼のないように事前に手順の説明を受けている」
ダンやシンたちもソファに座り、会議が始まる。
「手順?」
「ああ、謁見の間での所作やマナーだ」
「そんなものが…」
「説明の内容を見る限り、中の警備は厳重、だが穴がない訳では無い、今回はその穴を使って潜入してもらおうと思う」
「………よろしいのですか?」
「……何がだ?」
「僕たちの潜入が失敗すれば隊長の信頼は地に落ちるのでは?」
「……その点は心配ない…どちらかというと私よりショウくんの方を案じるべきだろう......廻帰教に見つかれば新たな神童として祭り上げられるのは明白だ、その彼が危険を顧みず潜入したいと思っている、保身ばかり考えて協力を拒否するのは私の主義ではないのだよ」
「さすが不死身のダン隊長様だな」
「フッ、その呼び方はやめてくれ……昔の話だ」
そう語るダンの表情は変わらない筈なのに、悲しみが色濃く出ている気がした。
「作戦の話に戻ろう、まずは我々がーー」
一行はダンの指示で作戦を練る、計画が固まる頃には時刻が夕方になっていた。
「ーーという作戦で行こうと考えるが、皆異論は無いか?」
「ありません!」
「俺もねぇぜ、これなら問題なさそうだ」
「そうか……ショウくんはどうだ?何か疑問はあるかい?」
ダンが席に座ってから一言も喋らないショウに声を掛ける。
「……できません…」
「ん?なにかね??」
「集中できません!!」
ショウは顔を真っ赤に染めながら叫ぶ。
いつの間にかミアの膝の上に乗せられ、フリアとナフタが腕に組み付き、双子がソファの背もたれ側からショウの肩に頭を乗せている。
「ミア?次は私の膝に乗せさせてよね??」
ケーニャは羨ましそうにしながらナフタの横に座っている。
「え〜?どーしよっかな〜??……ってレーゼちゃんは?」
レーゼは店内のすみっこで両手で顔を覆ってうずくまっていた。
「.......ハズカシィ....」
「まだやってるわ……」
「……ショウくん、私もそろそろ戻らなくてはいけない。シェルンとエリナを回収する必要もあるからな、作戦の詳細はまた連絡する。」
「……分かりました…」
「あっそうだ、隊長!コレを!!」
シンがショウのバックパックから端末を取り出しダンに渡す。
「…これは?」
「ショウが作った通信用端末です、これを使えば僕たちと連絡が取り合えます。」
「これは便利だな、今後のことを考えれば君たちとの連絡手段があるのは助かる、今回に限らず何かあれば連絡させてもらうとしよう。
では私は行く。次に会うのは作戦決行の日だろう、では」
通信端末を受け取るとダンは帰って行った。
「作戦会議も終わったし、じゃあぼくたちも帰るとしよっ」
「ねぇねぇショウくん!!」
「なっ……なんでしょうか??」
信じられないくらい近くに迫る、ミアの顔から逃げるようにショウは頭を後ろに引いた。
「今日は私たちの宿舎に泊まっていってよ!」
「へ?」
「あら!それは良いわね!!」
「だいさんせ〜」
「一緒」
「寝る」
「……ワタシモソウシタイ」
「善は急げよ!早速行きましょう!!」
ミアが動揺するショウの右腕に滑り込みガッチリ腕組みしてホールドする。
「じゃあショウくん借りてくね〜」
フリアも空いている左腕を確保し腕組みをしてホールドする。
「えぇぇぇぇぇ!!!?」
ショウは二人の腕組みで地に足がつかずプラプラと浮いたまま、風の速さで聖歌隊たちと共に店から出て行った。
「ちょっとショウを返しなさぁぁいい!!!」
「……行っちゃったね」
「まあ、場所はわかってんだし、いいだろ」
皆さん、ども! 樛樹です。
時の流れとは早いもので、この作品を書き続けて二か月ほど経ちました。
みなさんが今日まで読んで頂いたお陰で、筆が踊り狂うように進み、毎日投稿を続けることができました!
さて、今後とも毎日投稿を続けていきたいという気持ちは多分にあるのですが、仕事も忙しくなってまいりましたので、とりあえず毎週月曜日更新という週一投稿に変更したいと思います。
現在の投稿ペースより大きく間が空いてしまいますが、更新日を気長にお待ちいただけると幸いです。
今後とも、シンギュラリティ・アフターをよろしくお願い致します。




